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 ◇セ・リーグ 阪神5―10ヤクルト(2026年4月28日 神宮)

 試合終了が午後9時10分、阪神監督・藤川球児が記者団の前に姿を見せたのは25分だった。コーチ陣はまだクラブハウス内にとどまっていた。緊急のコーチ会議を行っていたのだろう。

 藤川は珍しく才木浩人に苦言を呈した。2回裏、先頭打者を佐藤輝明の悪送球で生かした。骨折の近本光司に代わり中堅に入った福島圭音と森下翔太が右中間飛球をお見合いして中前打にした。さらに投手にも四球を与えた。ミスが相次いで大量6点を失った。

 「まあ、でも、才木がビシッといかなきゃいけないね」。味方がミスした時ほど、踏ん張るのがエースではないか。前回登板の21日DeNA戦も5回6失点で試合を壊している。ゴールデンウイークの9連戦初戦。2回降板では役目を果たしたとはいえない。

 藤川は「きっちり引き締めて明日から臨んでいきたい」と言った。コーチ会議でも手綱を締めるべく、話したはずだ。

 戦う姿勢を見せろ、という意味だろう。藤川は「ゲームは、練習で培ってきたものが通用するか勝負するところ」と言った。名をあげてたたえたのは福島、植田海、熊谷敬宥の3人。いずれも出番をつかもうと必死な控え選手たちだ。打席で食い下がり、安打や四球で塁に出て見せた。

 0―6から中盤5回表には4―6と一時2点差に迫った。4回表は森下二塁打、佐藤輝四球の後、大山悠輔が高めボール球を大根切りで中堅右に3ランを運んだ。

 ビハインド時の打撃成績を調べてみると、大山はOPSで12球団トップの1・202だった。2位森下(1・135)、3位佐藤輝(1・113)と上位を独占している=成績は27日現在=。チーム劣勢時の好成績は、熱く燃える不屈の姿勢を示しているかのようだ。

 この夜は中野拓夢、森下も自打球で負傷し、途中でベンチに下がった。近本に続く負傷で心配が募る。

 「逆境の時こそ本性が出る」と言ったのは野村克也だった。アメリカの女性詩人、エミリ・ディキンソンは情熱の人だった。「私は苦悩の表情が好き」と書いた。「それが本当だと知っているから 人々はわざと(中略)苦しんでるふりをしたりはしない」

 帰りのバスに乗り込む際、誰もが皆、険しい表情だった。これが本当である。勝負に生きる者の顔だった。 =敬称略=

 (編集委員)