S&P500のPER低下、EPS好調で割安感強まる

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 米国株の代表指数であるS&P500で、株価が伸び悩む一方、企業業績は好調に推移している。1株利益(EPS)は過去最高圏で推移し、株価収益率(PER)は低下、割安感が強まっている。外部環境の不透明感とは対照的に、企業の稼ぐ力はむしろ強まっている。

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 足元では、株価の上値を抑える材料が相次いでいる。金利の高止まりやインフレ再燃懸念に加え、中東情勢の緊迫化など地政学リスクが重しとなっている。さらに、トランプ大統領の政策動向への警戒感も、市場の不安定要因として意識されている。

■企業業績はむしろ加速

 一方で、企業業績は明確に改善している。特に大型テック企業群である「マグニフィセント7」は、AI需要やクラウド、広告事業を背景に収益を拡大している。グローバルに収益基盤を持つこれら企業は、地域ごとの景気変動の影響を受けにくく、安定した成長を維持している。

 こうした企業は、コスト削減や事業効率化も進めており、利益率の向上が顕著だ。売上高の拡大と利益率の改善が同時に進むことで、EPSは市場予想を上回るペースで伸びている。結果として、指数全体の収益水準も押し上げられている。

■株価と業績の乖離が拡大

 通常、企業業績の拡大は株価の上昇につながる。しかし現在は、株価が外部要因によって抑えられている。金利上昇による割引率の上昇や、リスク回避姿勢の強まりが背景にある。

 例えば、仮にホルムズ海峡の封鎖などエネルギー供給に影響を与える事態が発生した場合でも、短期的には市場の混乱を招くが、企業の収益構造そのものが即座に崩れるわけではない。特にグローバル企業は、地域分散や価格転嫁によって影響を吸収する力を持つ。

■PER低下は「評価の遅れ」

 PERは株価をEPSで割った指標で、現在はEPSが上昇する一方で株価が抑えられているため、PERは低下している。この動きは、業績悪化によるものではなく、外部環境による一時的な評価の低下といえる。

 PERの低下には大きく2つのパターンがあり、業績悪化に伴う低下と、業績好調にもかかわらず株価が下落するケースだ。現在は後者に該当し、むしろ投資機会を示唆する局面とみられる。

■マグニフィセント7の収益力は普遍

 現在の市場環境を考える上で重要なのは、企業の収益源の質だ。マグニフィセント7に代表される企業群は、世界中から収益を上げる構造を持っており、AI、クラウド、広告、半導体といった分野は、長期的な成長トレンドに支えられている。

 そのため、政治リスクや地政学リスクが短期的に市場を揺らす局面でも、これら企業の収益力は大きく損なわれにくく、寧ろ競争優位性の高い企業ほど、環境変化の中でも利益を伸ばす傾向がある。

 実際、その証拠にハイテク株比率の高いナスダック指数は、一時的な調整局面を経ながらも急速に回復している。市場全体が不安定な中でも、成長期待と収益力を兼ね備えた企業には資金が戻りやすく、結果として指数の押し上げ要因となっている。

■今後の焦点は金融政策と市場の再評価

 今後の株価動向は、金融政策と市場の評価修正に左右される。インフレが鈍化すれば利下げ期待が高まり、株価の上昇要因となる。一方で、インフレが再加速すれば、一時的に上値が抑えられる可能性がある。

 ただし、仮に金融引き締めが長期化しても、景気減速を通じて最終的には利下げ観測が再び高まる可能性がある。その過程で、業績の強さが改めて評価される展開が想定される。

■割安状態は長期的に持続しにくい

 企業業績が拡大する中でのPER低下は、長期的には持続しにくい。EPSの成長が維持される限り、株価はその水準に収れんしていくためだ。

 現在のS&P500は、外部環境による一時的な評価の歪みが生じている局面といえる。企業の収益力が維持される中で、この歪みがどのように修正されていくかが、今後の最大の焦点となる。