時給数十円の電話番から「会社員並みの月収」へ。65歳女性がAIで人生を激変させた“60の手習い”の衝撃
「特に画像生成AIの場合、企業が導入を躊躇する最大の理由は著作権リスクでした。ネット上の画像を無断学習したAIを使うことは、法的リスクが高すぎると判断されるからです。そこで私は、使用ツールをAdobe Fireflyに切り替えました。FireflyはAdobeが権利処理済みのコンテンツのみで学習させたAIで、商用利用における著作権リスクが低いとされています。企業が安心して導入を検討できるという点が、クライアントへの提案でも大きな差別化になりました。この判断が効果てきめんでした。単価は劇的に上がり、1枚3000円というお仕事も珍しくありません。ツールと活用法を見直しただけで、単価が60倍に跳ね上がったんです」
「今、AI導入を検討している企業は本当に多くて、導入支援の相談をされる機会が本当に増えています。Excelでの作業や議事録作成ってAI使うととても効率上がるじゃないですか? そのノウハウをお伝えするだけでも、経営者の方が目を丸くして驚かれる。とてもやりがいを感じます。このようなコンサルティングは1時間1万円いただいており、今ではお仕事のほとんどが『教える系』にシフトしてます」
さゆっちさんに今の月収を尋ねると、「普通のサラリーマンの給料くらいはありますよ」とはにかんだ。かつては1円でも安い卵を求めてスーパーをハシゴしていたが、今は心に余裕が生まれ、夫と少し贅沢なランチを楽しむこともある。
「AIの世界は進歩が早い。1年前に50時間かけて覚えたことが、今では最初から機能として組み込まれていたりします。完璧に理解しようとすると追いつけない。だから、学び続けること自体を習慣にするしかない。『続けることを、続ける』意識で私は取り組んでいます」
◆「シニア×AI」の可能性
AIを駆使してバリバリ稼ぐ、65歳のおばあちゃんーーさゆっちさんのような事例は特殊なのか。AI人材の育成を手がけるSHIFT AIの木内翔大氏によると、会員数は現在3万人超。そのうち60代以上が11.3%を占め、入会動機の第1位は「副業・収入向上」だという。
「60代以上の会員は学習意欲が特に高い。長年の社会人経験で培った業界知識や実務スキルにAIを掛け合わせ、AIコンサルタントや講師として活躍される方も増えてきています」
市場環境も変わっている。単純作業は自動化が進み、外部発注の案件は細る一方。ただその反面、企業のAI導入を支援できる人材は「需要に対して担い手が少ない状況が続いている」という。
「AIがいくら進化しても、何を解決すべきかという課題設定ができる人間の役割は、むしろ重要性を増しています」
さゆっちさんは言う。
「私の周りの同年代はパソコンすら持っていない人が多い。でも、私の感覚としては、AIを学ぶのは車の免許を取るより全然簡単です(笑)。1日1回、今日の夕飯何がいいかなって聞くだけでいい。逆に、『勉強してから使おう』なんて思ったら、たぶん一生使えません。難しいと感じたその瞬間が、始めどきなんです」
AIは、シニア世代の老後まで変えてしまうかもしれない。
取材・文/桜井カズキ
