桜蔭・京大卒で「無職」。24歳女性が直面した“意外な弱点”「実家暮らしの時のようにはいかなかった」
◆模試で全国19位になるも…徐々にひずみが
――それもすごいですけどね。その後、本気で勉強のスイッチが入る。
片栗:はい、中3から高1にかけて、平日も1日平均5時間は勉強していたと思います。きっかけはスマホの購入でした。スマホを通じて先輩受験生たちの熱意に触れ、また同じくして科学オリンピックなどの存在を知ったことで、「自分もきちんと勉強をやってみよう」と思ったんです。
――しかし、途中で心が疲れてしまう。
片栗:そうなんです。一応、高1で英検準1級は合格していたものの、ぜんぜん知らない単語がたくさん出てきて。活字を読んでいても文字として入ってくるだけで意味が飲み込めなくなり、「これはまずいな」と思いました。悩んだ末に、留学コースを辞めることにしたんです。
――初めての挫折ですね。
片栗:はい。当初、東大志望だったのをやめて、私立に切り替えようと思いました。高3の1学期はほぼ勉強が手につきませんでした。ただ予備校には足を運ぶだけの日々で。そんななかで、京大出身の講師が「京大受ければ」と何度もしつこく誘ってきて(笑)。「受かっても行きません」とずっと言っていたのですが、最終的に「受けるだけ受けます」となって、現役で合格できたという感じです。
◆自身の“意外な弱点”に気づいてしまう
――2度目のうつ症状を発症したのは大学生のときだったとか。
片栗:そうなんです。私が京大に入学したときは、コロナ禍でした。そのため授業などすべてリモートでやっていたんです。当時は家にこもって勉強をすればよく、成績表もAまたはA+だけで、上位だったと思います。そんななかで「公認会計士になろう」と考えて勉強を開始したんです。ただ、対面での授業が増えてくると、対人関係もあるしそもそも通学に労力を使うためうまく生活が回せなくて……。悩んでいたときに友人に「ASDっぽいよね」と指摘されて、心療内科に行ってみたら「発達障害です」と。うつ病も発症していたようです。
――大学に通うのが物理的に疲れてしまう。
片栗:驚くべきことに、それまでの私は自分がここまで体力がないことに気づいていなかったんです。でも思い返すと、実家にいるときは「学校に遅れるよ」「朝食を食べなさい」となんでも母がお膳立てをしてくれていたんですよね。朝も超絶に弱いので、起きても通学路をまっすぐに歩けなくて。満員電車で誰かによりかかって寝る……みたいな生活でした。何度か保健室で寝たこともあります。ところが京都で独り暮らしをしてみると、生活のすべてを自分でやらないといけないので、疲れるんです。実家にいたときのように大学の勉強をして、公認会計士の勉強もして……となると、キャパオーバーになるんだなというのがだんだんわかってきました。
――会計士試験を諦めるという道もあったのでは……。
片栗:自分で決めた勝負なので、絶対に降りたくなかったんですよね。それもあって、今は専業受験生をしています。
――ストイックだと余計に疲れてしまいそうですが、今後の展望は。
片栗:突き詰めるところまでやったら自分の体力が限界を迎える点を考慮して、何事も及第点でいいと思えるようになりました。前よりは、生きるのがうまくなったかと。理想を追い求めて人生を潰すのではなく、やや理想に届かなくても長く自分が続けていけることのほうが大切だと考えられるようになりました。
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スポーツに比べて学業は絵面が地味で、わかりづらい。だがその高みで闘う者たちのしのぎ合いは苛烈で、ややもすると精神を摘み取りかねない。片栗さんの鬼気迫る学業への執念がいつか実り、その聡明さが多くの人々の役に立つ日がきっと来る。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

