なぜ35年ぶり続編?『102回目のプロポーズ』月9でなく深夜23時放送の理由とは…フジテレビの狙いと戦略

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疑問やツッコミどころの多い続編

4月1日23時から2日朝にかけてXの急上昇ランキングトップ5に「102回目のプロポーズ」「唐田えりか」「せいや」がランクインした。

これは4月1日23時からドラマ『102回目のプロポーズ』(フジテレビ系)の第1話が放送されたことへの反響。同作は1991年に放送された『101回目のプロポーズ』の続編であり、同年に放送された『東京ラブストーリー』と並ぶ「フジ月9人気を決定づけた2トップ」と言われている。

35年もの時を経て物語の続きが描かれることに驚かされるが、なぜ令和の今、続編が制作されたのか。なぜ月9ドラマではなく深夜帯の水曜23時台で放送されるのか。なぜリメイクではなく続編という形が選ばれたのか。なぜ主要キャストにスキャンダルのあった唐田えりかと伊藤健太郎を選び、さらに芸人の霜降り明星・せいやを起用したのか。

名作の続編ゆえに反響は大きく疑問やツッコミどころが多いだけに、その背景や狙いなどを掘り下げていきたい。

令和版『東ラブ』も配信されていた

なぜ令和の今、35年の時を経て続編が制作されたのか。

「放送作家だった鈴木おさむが続編を熱望し、実現に向けて栗原美和子プロデューサーが動いた」という経緯が明かされている。制作のきっかけはそこに違いないが、フジテレビに限らずテレビ業界全体の「局の財産である過去の番組を生かしていこう」というムードもポイントの1つだろう。

視聴率低下に伴う放送収入減に苦しむ中、過去の番組は視聴者の関心を集めつつ制作費を抑えられるため、ここ数年はドラマや音楽番組を中心に多くの映像が活用されている。実際、フジテレビにとって貴重な財産である『101回目のプロポーズ』の映像も特番などで繰り返し使われていた。

昭和・平成の名曲が令和のアーティストにカバーされるように、「昭和・平成のドラマを令和に復活させて若い世代にも見てもらおう」という世代を越えた名作継承の意味合いも感じられる。

では、なぜ月9ではなく水曜23時という深夜帯が選ばれたのか。

『102回目のプロポーズ』の放送は4月1日スタートだが、それに先駆けて3月19日にFODでの有料配信がはじまっていた。現在、配信は第6話まで公開されているが、「有料配信でも稼ぐ」という戦略が前提のプロデュースであることは間違いない。

ちなみに同じく1991年に放送され、並べ称えられる『東京ラブストーリー』もコロナ禍の2020年に伊藤健太郎、石橋静河、清原翔、石井杏奈を起用した令和版リメイクを先行配信していた(翌年、深夜帯の24〜25時台で放送)。

月曜21時(月9)ではなく水曜23時での放送が選ばれたのは、「配信で稼ぎたいけど地上波でも放送したい」「ただゴールデン・プライム帯は、スポンサーの意向が強い上に、失敗すると名作に傷をつけてしまう」「1991年版を見た視聴者層を踏まえると24時〜25時台ではなく、できるだけ早い時間帯にしたい」などの観点から現実的な落としどころが23時だった様子が見て取れる。

物語の続きか、令和版の描き直しか

では、なぜ令和版『東京ラブストーリー』のようにリメイクではなく、続編という形が選ばれたのか。

1991年放送の『東京ラブストーリー』は、永尾完治(織田裕二)が赤名リカ(鈴木保奈美)ではなく関口さとみ(有森也実)と結婚して終了した。一方の『101回目のプロポーズ』は矢吹薫(浅野温子)と星野達郎(武田鉄矢)の結婚をにおわせたところで終了。『東京ラブストーリー』はこれ以上ドラマで続きを描くことへの批判が強くなりそう(原作漫画は25年後が描かれた)な終わり方だったが、『101回目のプロポーズ』は「あのあとどうなった?」「続きが見たい」というムードがあった。だからこそ「薫と達郎は本当に結婚していて2人の娘が主人公のラブストーリー」という『102回目のプロポーズ』が成立しやすい背景がうかがえる。

さらに娘・星野光(唐田えりか)は母と同じチェリストであり、彼女に恋する空野太陽(せいや)はかつての達郎を思わせる「99回失恋した」という非モテ男の設定。第1話から1991年版の薫と達郎を思わせる出会いと会話が見られた。

『101回目のプロポーズ』で恋のきっかけになったのは、「あなたと僕では釣り合いが取れないことはわかっていた」という達郎にいら立った薫が「大の男が何情けないことブツブツブツブツ言ってるの?」「あなたと私が釣り合わない?誰が決めたの?」「世の中にね、無理な女なんていやしないのよ」とまくしたてるシーン。

一方、『102回目のプロポーズ』では、「僕なんかのためにすみません」と繰り返し謝る太陽にいら立った光が「何も悪いことしていないじゃないですか。どうしてすぐに謝るんですか?」「そんな風に考えてたら“僕なんか星人”になってしまいますよ。素敵な人なのにもったいないですよ」と返すシーンだった。

1991年版と2026年版の違いとは

このように1991年版のキャラクターやシーンを生かして「そうそう」「懐かしい」と思わせて幅広い視聴者層を集められるのが続編の強み。制作サイドには「1991年版を見た中高年層を楽しませつつ、いかに見たことがない若年層の関心を引きつけるか」が求められている。

その他でも、物語の舞台が建設会社とクラシック業界であること、「ここぞ」という恋のシーンで主題歌『SAY YES』がかかることなどの共通点が見られた。少なくとも第1話を見ただけで、太陽が達郎のように光への一途な愛を貫いていくことははっきり伝わったのではないか。

もちろんすべて同じではなく、「出会いが見合いからマッチングアプリに変わった」「恋敵が他界した婚約者ではなく御曹司のピアニスト」などの35年の時を経た変化も楽しみの1つとなる。

また、「リメイクより続編のほうが1991年版に脚光が当たり、過去作もFOD、TVerの配信で見てもらえる」という営業面でのメリットもあるだろう。もっと言えば「他の名作も続編を作ってほしい」という需要喚起や「やっぱりフジテレビのドラマは面白い」というブランディングの効果も期待できる。

しかし、続編はさじ加減を間違えると、「前作を傷つけてしまう」「黒歴史としてなかったものにされてしまう」というリスクもある。リスクという点で言えば、良くも悪くも「別物」として扱えるリメイクのほうがはるかに低いだけに、「『102回目のプロポーズ』は勝負に出た作品」と言っていいだろう。

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