この記事をまとめると

■ミキサー車は生コン品質維持のため常時攪拌することが求められる

■輸送には90分以内という厳格な時間制限がある

■プラントとの距離が運用の大きな制約となる

ミキサー車に隠されたルールと構造

 走っている姿はそれほど珍しくないミキサー車。しかし、このミキサー車には、世間にはあまり知られていない数多くの珍しい機能やルールがある。

 はじめにミキサー車のことを少し復習しておこう。ミキサー車とは荷台に大きなドラムを備えているトラックのことで、正式名称は「レディミクスト車」だ。つまり、ミキサー車という呼び方は通称ということになる。ほかにも生コン車という呼び方もあるが、一般的にもっとも普及している呼び方はミキサー車なので、ここではミキサー車に統一させていただく。

 ミキサー車の最大の特徴は、後部に設置された円筒状のドラムを回転させながら走行することだが、このドラムが常に回転しているのは、固まりやすい生コンクリートの品質が落ちないように攪拌しているためだ。ミキサー車はおおまかにドラム、ホッパー、スクープ、シュート、水タンクというパーツで構成されている。それぞれのパーツを簡単に解説しておこう。

 ドラムは荷台部分にある生コンクリートを詰め込む円筒型の容器で、走行中もゆっくりと回転している。このドラムの回転だが、生コンを積むときは反時計まわり、下ろすときは時計まわりに回転する。次にホッパーだが、これは生コンクリートをドラムに投入する際の投入口だ。ミキサー車の後端上部にあり、漏斗のような形状をしている。スクープと呼ばれるパーツはホッパーの真下にあり、じょうごのようにドラムから投入した生コンクリートを集める役目をもっている。

 さらに、シュートと呼ばれる部分を経由することで、スクープから流れ出た生コンクリートを決められた位置に流し込むことができる。つまり、排出方向を調整する機能だ。そして最後が水タンク。ミキサー車にとって非常に重要なパーツで、コンクリートの水分調整や生コンクリートの積み降ろし後のドラム内部やホッパー、シュートを洗浄するための水を貯蔵している。小型車なら約100リットル、大型車で約200リットルほどの容量をもつ。

 このようなパーツで構成されているミキサー車だが、運搬している生コンクリートはすぐに固まってしまうため、扱いが非常に難しく、輸送中に固まってしまってしまうことはあってはならない。そのため、生コンの輸送は時間との勝負となるわけだ。街で見かけるミキサー車が猛スピードで走っている姿を見ることはないだろうが、じつは生コン工場から現場までの予想時間は90分が目安となっている。

 この90分という時間は日本工業規格(JIS)が「生産者が練混ぜを開始してから運搬車が荷降ろし現場に到着するまでの時間とし、その時間は1.5時間以内とする」と定められているからだ。

長距離輸送や高速道路利用が難しい

 ここで、ひとつ意外な事実を解説しよう。それは高速道路でミキサー車を見かけることがほとんどないということだ。その最大の理由は、前述の厳格なタイムリミットがあるため、高速道路を使って遠くまで運ぶという行為自体が非常にリスクが高いからなのだ。

 この時間制限があるため、生コンプラントは建設現場から車で30分〜1時間圏内にあるのが一般的であり、これはまさに地産地消ともいえる。そのため、大規模なダム建設や山奥のトンネル工事など、近くにプラントがない場合は、現場のすぐ横に仮設プラントを建ててしまうほうが効率的ということだ。

 ここで少し生コンプラントのことについて解説しておこう。いわゆる生コンプラントは、建設現場に固まっていない状態のコンクリートを供給する、建設業界の心臓部のような場所といえる。 生コンプラントの主な役割は、「指定された配合どおりに、均質なコンクリートを効率よく製造すること」にある。

 さらに、プラントを構成する主要設備は、巨大なタワーのような形をしていることが多いが、そのほかにもセメント、砂、砂利を種類ごとに保管するサイロ、コンピュータ制御で、材料を1kg単位の正確さで量るマシン、量り取った材料を短時間で強力に練り混ぜるミキサーなどがある。

 生コンプラントの役目を知らないと、外から見ているだけではいったいなんの施設かわからないのも特徴のひとつかもしれない。しかし、建設業界を支える生コンプラントはいろいろな場所にあるので、もし目にする機会があれば、外からじっくりその機能を眺めてみるのもいいかもしれない。