大河原克行のNewsInsight 第439回 シャープ変革期の入社式、河村新社長が伝えた「シャープのDNA」と「半歩先。」

シャープは、2026年4月1日午前10時30分から、大阪市・堺筋本町の同社本社で、「2026年度入社式」を行った。新入社員は313人。そのうち、シャープ本体は170人となり、内訳は技術系が105人、ビジネス系が65人。また、関連会社が143人となった。入社式には、この日に社長執行役員 CEOに就任した河村哲治氏のほか、8人の経営幹部が参加した。

ひとつめは、シャープのDNAである。「他社がまねするような商品をつくれ」という、シャープ創業者の早川徳次氏の言葉を用い、「シャープは、競争のなかで、画期的な商品や技術を生み出し、これが結果的に、社会の発展につながってきた」とし、河村社長 CEOによる新体制になってもこの姿勢を堅持する考えを示した。
2つめは、「経営理念と経営信条」である。経営理念はシャープの存在意義を示すものであり、経営信条はシャープの全社員が守るべき価値観であると定義。「経営信条のなかでは、『誠意と創意』を謳っており、この二つの言葉を心に留めながら活躍してもらいたい」と要望した。
3つめは、コーポレートスローガンである「ひとの願いの、半歩先。」についてだ。これは、2025年9月に制定した新たなスローガンであり、「独創的なものやサービスを通じて新しい文化をつくる会社を目指すというミッションに基づくものである。この言葉の意味を噛みしめて、自分の言葉で説明できるようにしてほしい」と提案した。
4つめは、シャープの方向性に関してだ。既存事業については高付加価値商品の開発に取り組む姿勢を示す一方で、新規事業については、EVやAIデータセンター、ロボティクス、宇宙分野などを育て、新たな柱にしていく考えを示した。


そして、最後は、新入社員に向けたメッセージとして、「お客様目線を大切に」、「自社の商品に対する感度を高める」、「現場、現物、現実の3現主義を実践」、「何事に対しても好奇心を持つ」、「失敗を恐れない」の5点をあげ、「結果を恐れずチャレンジすることが大切だ。私も幾多の失敗をしたが、新人の頃の失敗は知れている。皆さんが成長する姿を非常に楽しみにしている」と期待を寄せた。
また、入社式では、親会社の鴻海の会長であり、シャープの会長も兼務する劉揚偉氏がビデオメッセージを送った。
劉会長は、「皆さんはこれから新たな事業分野に挑戦し、イノベーションを起こしていく存在である。シャープは、常に、社会に新しい価値と需要を創出してきた。私は、この誇り高い歴史を心から尊敬している。シャープは、いままさに力強く成長しており、鴻海はシャープの成功を全力で支えたいと考えている。昨年度の鴻海の売上高は40兆円を超えた。世界の10台に4台の電子機器を手掛けている。また、世界最大のAIサーバープロバイダーでもある。鴻海とシャープの両社が共有し、協力し合うことで新たな時代へとともに成長しよう」と呼びかけた。

一方、河村社長CEOは、この日、初めてとなる「CEOメッセージ」を、社内イントラネットを通じて配信。これを「新社長としての初仕事」と位置づけ、「社員の皆さんに、私自身のこれまでの歩みと、経営にあたり大切にしている考え方を伝える」と内容を示した。
CEOメッセージは、シャープが鴻海グループの傘下になった2016年8月以降、歴代CEOが社員に向けて、ほぼ定期的に発信を続けているもので、戴正呉氏は在任中に52回のCEOメッセージを配信。呉柏勲氏は19回、沖津雅浩氏は15回のCEOメッセージを配信してきた。河村社長 CEOも同様に、CEOメッセージの配信を踏襲することにした。
「シャープを次のステージへ!」と題した河村社長 CEOによる最初のCEOメッセージは、まずは自らの経歴紹介から始まった。
河村社長CEOは、1984年にシャープに入社し、海外事業本部事務機営業部に配属され、1991年に米国販売会社へ赴任。それ以降、2021年までの30年間のうち、25年間を海外で過ごしたことに触れ、「この間、グローバルの多様な価値観のなかで、営業の基礎や顧客開拓を学び、欧州統轄会社や米国販売会社の責任者として、事業と組織の運営に携わるなど、シャープのグローバル事業拡大の最前線で幅広い経験を積んできた」と、海外を中心としたこれまでの経験を振り返った。
また、2021年に日本に帰任してからは約3年半に渡り、ビジネスソリューション領域の事業責任者を務め、「事業の川上から川下までを俯瞰しながら、競争力強化と事業変革に取り組んできた」と述べた。また、直近では、専務CBDOとして、新規市場や新規事業の開拓を担い、次の成長につながるテーマの具体化を進めてきたという。
河村社長 CEOは、「こうした経験を通じて、私が事業責任者として何より大切にしてきたのが、決断力、実行力、人間力の3つの力である」として、次のように説明した。
「事業の現場では、十分な情報が揃わないなかで判断を迫られる場面が少なくない。そのような時に重要なのは、迷い続けるのではなく、自らの責任で進むべき方向を見極め、決断することである。そして、決断したことは速やかに実行に移し、課題をひとつひとつ乗り越えながら、最後までやり切って結果につなげていかなくてはならない。この積み重ねこそが、事業を強くすると考えている」
その上で、河村社長CEOは、「事業は、決して一人の力で成し遂げられるものではない。だからこそ、多様な立場や考え方を尊重し、仲間や協力者との信頼関係を築く人間力が不可欠である。私は、決断力、実行力、人間力の3つの力こそが、事業責任者に求められる重要な資質だと考えている」とした。
続けて、河村社長 CEOは、「この2年間、皆さん一人ひとりの懸命な努力のおかげで、シャープは、再成長に向けて、確かな基盤が整いつつある。しかし、事業環境は日に日に厳しさを増しており、非常に難しい局面に立っている。こうした状況にあるからこそ、ともに築いてきたこの基盤を、将来に向けた推進力へと変え、シャープを次のステージである本格的な『再成長』ステージへと導き、シャープの企業価値を最大化することが、社長に就任した私の責務である。これまで培ってきた『3つの力』を軸に、私自身が先頭に立って、全社一丸となって邁進していく」と決意を述べた。
4月1日からスタートした新たな事業推進体制についても触れた。
河村社長 CEOは、「シャープの企業価値の最大化に向け、新規事業の早期具体化とシャープブランドのグローバル拡大を、鴻海のリソースも貪欲に活用しながら、より一層強化する。これにより、再成長を実現していくとともに、あらゆる機会を捉え、私自身が先頭に立って、シャープの方向性や取り組みを発信し続けていく」と前置きし、「将来の成長ドライバーとなる新規事業の具体化を担う『事業開発担当』を新たに設置し、私自身が統轄責任者として舵を取る。傘下には、EVやAIサーバーなどの事業化組織に加えて、戦略投資機能やアライアンス機能を配置し、中長期の視点で、戦略的方向性の策定や成長投資、顧客開拓、他社協業などを強力に推進する」と説明した。
また、CTOを務めていた種谷元隆氏が、年齢規定によって退任し、これまでスマートビジネスソリューション事業本部を率いてきた徳山満氏をCTOに登用したことを報告。「今後の持続的成長に向けては、経営戦略に沿った研究開発を、いかにスピーディーに事業へとつなげるかが重要である。徳山CTOには、事業責任者としての経験を生かし、経営戦略、技術戦略、事業実装をつなぐ役割を担ってもらう。加えて、『事業開発担当』の副統轄責任者として、技術面から新規事業の立ち上げを力強く支援してもらう」とした。
さらに、対外発信の強化に向けて、IRや広報などのコミュニケーション機能を、河村社長 CEO自らが指揮する体制を整え、シャープに対する理解と期待の醸成にも積極的に取り組む考えを示した。
加えて、人材育成や人材獲得の強化、AIやITを活用した経営課題の見える化、業務効率化などにも取り組む考えも明らかにし、「これらの取り組みを通じて、会社の成長を力強くリードする“強い本社”を確立していきたい」との姿勢を強調した。
CEOメッセージの最後に、河村社長 CEOは、「シャープらしさ」の源泉は、大切に受け継いできた創業の精神や、「他社がまねするような商品をつくれ」という創業者の言葉、「経営理念・経営信条」にあることを示し、「シャープは、時代や事業環境が変化するなかでも、人や社会に寄り添い、創意工夫を重ねながら独自の価値を生み出してきた。これからも、このDNAを大切に継承し、全員の力で、コーポレートスローガンに掲げた『ひとの願いの、半歩先。』を生み出していこう」と述べた。
そして、「『シャープを次のステージへ!』を合言葉に、力を合わせ、未来を切り拓いていこう。また、より一層世の中から期待され、魅力あふれる会社へと成長させていこう」と呼びかけた。
