近年日本でも注目の「バウンダリー」。自分を大切にする「境界」の概念とは【しんどい人間関係に境界線をつくる 心地いいバウンダリー】
わたしとあなたの境界線「バウンダリー」を知る
「自分と他者の境界線」を意味するバウンダリーは、家族療法として家庭で日常的に起こる衝突や対立などを緩和するために使われてきました。そして、バウンダリーの考え方は対人援助の現場にも取り入れられるようになり、現在までさまざまな発展を遂げました。
欧米では早くから教育現場に取り入れられてきましたが、日本でバウンダリーが注目されるようになったのは近年ですから、この本で初めて知る人も多いかもしれませんね。
バウンダリーの考え方が提唱する「境界」は、自分と相手の合意のもとで「ここからは立ち入らないでね」という線を引く、まったく新しい概念です。
このように聞いて、「パーソナルスペース」をイメージする人もいるかもしれませんね。「パーソナルスペース」とは、自分が安心を感じられる空間・距離のこと。自分の安全・安心を守るという点は、バウンダリーと共通しています。
ただし、バウンダリーはそこからさらに一歩進んで、「わたしとあなた」の尊厳と人権を守ろうという考え方なのです。
バウンダリーは豊かに生きるために欠かせないスキル
バウンダリーの考え方ではまず、自分を大切にすることが基本になります。
「境界線」を引くことで、自分のからだと心を危険や消耗から守り、安心・安全で心地よくいられる。自分の感情や考えを大切にして、誰かの意見に流されない、支配されない。自分の行動や価値は自分で決める。これらを実現できるバウンダリーは、心地よく豊かに生きるために欠かせないスキルといえます。
また、「境界線」は自分で自由にデザインすることもできます。
「この相手とは一歩引いてつき合いたい」と思うなら線を太くすればいいですし、「ときどきはコミュニケーションを取るけど、ふだんはお互いにノータッチでいたい」と思うなら点線にしてもいい。このように、バウンダリーはとても能動的で主体的なものなのです。相手と気持ちや目標などを共有したいときは、「境界線」のまわりに、立ち入り自由な共有スペースをつくってもよいでしょう。
最近は子どもに性教育について伝える場面で、相手との境界線という考え方を紹介することもあるくらいですから、いずれはバウンダリーの考え方を身につけているのが当たり前になる時代が来るかもしれません。
この機にバウンダリーを学び、実践していきましょう。
「境界」は自由にデザインできる
「境界線」の引き方はあなたの自由。お互いにふだんはノータッチでいたいなら、点線にしてもよいでしょう。
その時々で距離感を変えたいなら波線に。今の気持ちに応じて、いつでもデザインを変えていいのです。
【出典】『しんどい人間関係に境界線をつくる 心地いいバウンダリー』著:長谷川俊雄/イラスト:高木ことみ
【著者紹介】
長谷川 俊雄
白梅学園大学名誉教授、社会福祉士、精神保健福祉士、NPO 法人つながる会代表理事、social work lab MIRAI 代表。
1981年から横浜市役所の社会福祉職として現場で活動したのち、精神科クリニックのソーシャルワーカーに転職。その後、愛知県立大学での教員経験を経て、2009年に「NPO 法人つながる会」を設立。2010年から白梅学園大学に移り、教育・実践・政策提言に携わる。2023年に「social work lab MIRAI」を開設し、援助職支援や家族支援にも取り組む。「バウンダリー」についてのワークショップを各地で行っている。
【イラストレーター紹介】
高木ことみ
ゆるくてかわいいイラストを制作するイラストレーター。とくに、難しい内容を図やイラストを用いてわかりやすく伝えることが得意。見ている人に親しみを感じてもらえるような表現を心がけている。おもな作品に『ゆるゆる稼げるWeb ライティングのお仕事はじめかたBOOK』(技術評論社/表紙・本文イラスト)、『今度こそ「不安ぐせ」をゆるめるポリヴェーガル理論』(日本文芸社/表紙・本文イラスト)など。
