「スマホが鳴るだけで心臓が…」孤独な大学生をカモにした10歳上の“先輩”。5年間にわたる逃亡生活の果て
「加害者との連絡を絶つのはもちろん、家族との接触も控えました。中途半端に連絡を入れても所在地が言えなければ、かえって心配をかけるだけですから」
加害者から脅迫連絡があった場合に証拠を保存するため、携帯は同じ番号を使い続けた。しかし、知らない番号からの着信には決して出ず、SNSには一切の登録を控えたという。
その後、前野さんは田中さんに紹介された弁護士を介して、自己破産を選択。ギャンブルによる借金だったが事情を汲んでもらい、無事に免責が通った。額は高くはないものの、安定して給与も入ってくる毎日。「バイクに乗りたい、結婚したいといった、ささやかな『欲』をようやく持てるようになってきました」とつぶやく前野さん。田中さんはそんな前野さんの恋の相談に、今も乗り続けている。
オンラインがきっかけでお金の貸し借りが発生してしまうケースとして、前野さんのような事例は珍しくない。個人間トラブルの専門家で、多い時には1日数十件もの金銭貸借相談を受けるというSDIトータルサポートの岩田一彦氏は、「ネット上で狙われやすい人」の共通点についてこう語る。
「『人が良い人』『寂しい人』『判断力が低下している人』は特に危ないですね。私の経験上、SNSのアイコンに『スピリチュアル系のもの』を使っていたり、自己紹介文が少し『病んでいる感じ』のする人も、その優しさや心の隙を突かれて、狙われやすい傾向にあります」
探偵業の届出を行い、必要に応じて張り込み調査や尾行調査も行う岩田さん。多くの相談実績を元に導き出された金銭貸借の注意点について、こう話す。
「特にネット上では、貸し手も借り手も含めて、カモになりそうな相手を物色している輩が跋扈しているので、『みだりにお金の貸し借りを行わない』が大前提です。どうしてもお金を借りなければならない場合は、返せなくなった時に『現住所』や『勤務先』を調べられる可能性がある事は念頭に置いて下さい。債権の回収に伴う調査では、電話番号、旧住所、車やバイクのナンバー、銀行口座、勤務先などから調査の糸口を探す事が多いためです」
有名無名を問わず、多くの人がSNSをごく当たり前に使いこなしている今の時代。たとえ平凡な生活を送っていてもトラブルに巻き込まれ、夜逃げに発展する可能性は、誰の暮らしにも潜んでいるのだ。
岩田一彦(いわたかずひこ)
SDIトータルサポート代表。個人間トラブル、男女トラブル、金銭トラブルなどの対人トラブル全般について、対処法の教示・住所調査・証拠調査などさまざまな形で対応。夜逃げ(緊急引越し)のサポートも行っている。
<取材・文/桜井カズキ>

