頭と体、正直なのはどっち? 答えは体が知っているかも【内田恭子さんとはじめる「マインドフルネス」】

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内田恭子さんの「ここからはじめるマインドフルネス」

NHK『すてきにハンドメイド』テキストでは、フリーアナウンサーとして活躍を続ける内田恭子さんによる心ゆるむ「マインドフルネス」エッセイを好評連載中。

コロナ禍でマインドフルネスに出会い、その魅力を伝えたいと、マインドフルネストレーナーとしての活動をスタート。暮らしにマインドフルネスを取り入れて、いつも頑張る頭や心、そして体を少し休めたい。そんな方たちに、連載を通じて役立つ気軽なスキルをお届けします。

連載第11回をWEB特別版として公開します。

#11 体の声を聞く

 珍しく体調を崩していました。2週間ほど頭にもやがかかり、食欲もなく、全身がけん怠感の塊のような日々。まるで体が「もう、働かないからね!」とプチ・ストライキを起こしているよう。

 病院で検査をしても病気ではなく、熱もないので、残念ながら仕事はできる(笑)。ボーッとしたまま現場へ行き、本番はアドレナリン全開で乗り切る。その反動で、家ではさらに使いものにならない。明日こそは楽になるはずとの思いもむなしく、なかなか回復しない……。

 ここ数か月間は、体調がいいと調子に乗って、いろいろ無理していたからなあ、と猛反省。体が弱ると気持ちも落ち込みますよね。

 体はとても正直です。日々のバロメーターとして、私たちにさまざまなサインを送ってくれます。頭や体のだるさや重さだったり、胃の不快感だったり、肩の張り具合だったり……。体調を通じて、「黄色信号ですよ、注意してくださいね」と教えてくれているのに、それを受け取る私たちはどうでしょう。

 こちらの都合に合わせて一生懸命動いてくれる体に対して、その声を聞いてあげられているかというと、そうでもない。頑張ってくれる体に、つい甘えがちです。よほどの不調ではない限り、いつも通りのタスクをこなそうとします。

 さらに、仕事のエンジンがかかってくると、すっかり体調のことなんか忘れて、「あら、元気になったわ」なんて勘違いして、そのままの勢いで突っ走ってしまう。そして、最終的にダウンすることに。

「だから言ったでしょ!」なんて体の声が聞こえてきそうです。体は私たちにとっての大切なパートナーです。生まれてからずっと一緒にいてくれる、とても正直で信頼のおけるパートナーです。なぜなら、体は私たちに不調だけではなく、真実をも教えてくれる存在だからです。

 マインドフルネスでは、その体の感覚に目を向けるトレーニングも行います。私たちは「痛い」とか「つらい」など不快な感覚に対してはとても敏感ですが、それ以外のときはあまり体の感覚に意識を向けていません。

 体はいつも一緒にあって当たり前だし、思うように動いてくれるのも当たり前と思っていますよね。だからこそ、意識を向けるためにはトレーニングが必要なのです。
 

 私たちが何かを体験するとき、感情や思考と同じように、体にも感覚が生じています。この3つが体験に対する反応です。たとえば、美しい夕焼けを見たとき。うっとりとする感情、ずっと見ていたいと思う思考、そして体には、おなかがふんわり温かくなるような感覚だったり、呼吸が思わず深くなったりする感覚が生じるかもしれません。

 反対に子どもの理不尽な言動に振り回されているときは、怒りの感情、なんで言うことを聞かないんだろうという思考、そして体の感覚はというと、胸がムカムカしたり、頭がカッカとしているかもしれません。

 けれども、実はこの3つの中で、思考や感情というのは不安定なものです。なぜなら、そのときの気分や状況で変化したり、影響されたりしやすいからです。ふだんの生活の中でも、気分がいいときは気にならないささいなことも、ピリピリしているときは見逃せないことってありますよね。

 それに対して、体の感覚は正直で安定しています。人から何か嫌なことを言われたとき、大人なのでとりあえずその場では冷静を保っていたとしても、体のどこかでは素直な反応が起きているはずです。胸のあたりがキューッと締めつけられるような感覚だったり、顔が熱くなるような感覚だったり。

 ストレスで胃が弱ってしまうのも、体の正直さの表れです。体は私たちが気づかずにいたり、無視したりしていることにも敏感に反応しているのです。
 

 ふだんから私たちは多くのことを思考で、頭の中で解決しようとしがちです。ときには考え過ぎて、頭でっかちになることも。そこで、たまには頭の中から抜け出して、静かに自分の体に意識を向けてみましょう。

 例えば、うれしいとき、全身でその喜びを味わう。不快なときは、優しい気持ちでその瞬間の体の感覚を探ってみる。それだけでも、自分の体の反応のパターンに気づいたり、意外な反応を見つけたりするきっかけになるかもしれません。

 静かに座って呼吸をしているだけで、いろいろな感覚に出会うはずです。体の感覚とは見えないものを映し出してくれる自分自身の鏡。もし何か答えを見つけられずにいることがあったら、体の感覚からヒントを探してみてもいいかもしれませんね。長年自分と一緒に過ごしてきたパートナーだからこそ、教えてくれることがあるかもしれません。
 

◆トップ写真・プロフィール写真提供/内田恭子
◆バナーイラスト/山本祐布子

プロフィール

内田恭子(うちだ・きょうこ)
フリーアナウンサー、マインドフルネストレーナー。慶應義塾大学を卒業後、フジテレビアナウンス室に入社。退職後、フリーアナウンサーとして活躍するかたわら、マインドフルネスに出会う。IMA(Institute for Mindfulness-Based Approaches)認定MBSR・OMF(Oxford Mindfulness Foundation)認定MBCT-L(Mindfulness-Based Cognitive Therapy for Life)講師。日本マインドフルネス学会正会員。

内田さんが主宰する「kikimindfulness」
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