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 1年余りに及んだフジテレビの親会社フジ・メディア・ホールディングス(FMH)と旧村上ファンドの攻防は、フジの“全面降伏”という幕切れで終わった。これで騒動は収束したかに見えるが、実はその裏で、不穏な動きが持ち上がっているという。

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【写真を見る】「760億円ボロ儲け」 村上世彰氏の長女・野村絢氏

760億円もボロ儲け

「当初の強気の姿勢が一転、まさか旧村上ファンド側の主張に会社が屈するとは思ってもみませんでした。今年1月にはCMスポンサーが前年同月比で93%にまで回復するなど明るい兆しが見えてきたのに、冷や水を浴びせられた気分です」(フジテレビ局員)

 FMHは今月5日、自社の発行済み株式の約3割に当たる6121万株を2349億円で取得したと発表。さらに稼ぎ頭である不動産事業について「完全な売却」も含めた検討を開始すると表明した。

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「今回のフジによる自社株買いの中には、村上世彰氏(66)の長女で大株主の野村絢氏をはじめとした、旧村上ファンド系グループが保有する計17%超の株も含まれています。その買い取り額は、単純計算で約1560億円。旧村上ファンド側がフジ株取得に費やした額は計約800億円とされ、短期間で倍近くの760億円もボロ儲けしたことになります」(外資系ファンド関係者)

遠のく事業再建

 元タレントの中居正広氏(53)の女性トラブルに端を発した問題を受け、昨年1月27日にフジテレビの港浩一社長(73)と嘉納修治会長(75)が辞任。旧村上ファンドがFMH株を買い進めたのはその直後からだが、

「昨年4月にFMHの筆頭株主になると、さらに33.3%まで買い増す可能性を示唆した。それに対し、フジ側は買収防衛策を導入するなど対決姿勢を鮮明にしました。両者の対立が最高潮に達したのが昨年12月。旧村上ファンド側が虎の子である不動産事業の分離・売却を求めると、清水賢治社長(65)は“大事なセグメントだ”と反発しました」(経済誌記者)

 優良不動産を多く保有するサンケイビルや鴨川シーワールド(千葉県)など、グループ11社で構成される不動産部門はFMHの収益を支える柱だ。2025年4〜12月期連結決算で、本業であるメディア事業の営業利益が253億円の赤字に対し、不動産事業は227億円の黒字だった。

 前出のフジ局員によれば、

「旧村上ファンド側の要求をのんだばかりか、巨額の株売却益まで献上した。自社株買いの原資2349億円は金融機関からの借り入れも含まれるため、社内からは“大丈夫なのか?”と不安の声が上がっています。新たに負債を抱え込めば、番組制作費がますます削られるのは避けられない。これでは清水社長が本丸と位置付けるメディア・コンテンツ事業の再建など遠のくばかりです」

「パパに聞いて」

 一方で、笑いの止まらないのが旧村上ファンドだ。

 M&Aアナリストが言う。

「昨年12月に再上場を果たしたSBI新生銀行を巡る株買い占め騒動でも、旧村上ファンドは230億円の利益を手にしています。11年に有罪が確定したインサイダー取引事件を機に、“物言う株主”として名をはせた村上氏は表舞台から退きましたが、現在もグループ内の投資における意思決定やブレーン役を務めているといわれます」

 実際、フジと村上氏の対立が先鋭化していた時期、ある投資家が「なぜフジにこだわるのか?」と絢氏に尋ねたところ、「分からない。パパに聞いて」と返されたという。

「実は市場関係者の間では、10年ほど前から“村上は変わった”と評されてきました。それまでの彼には“会社とはこうあるべきだ”といった確固たる哲学や投資信念がありました。しかし近年は単なるマネーゲームに興じているだけのように見えます」(同)

TBSのリサーチに着手

 そんな中、村上グループがあまりに鮮やかに荒稼ぎしたことで、「次のフジ」を探す動きが始まっていると明かすのは、前出のファンド関係者だ。

「外資系ファンドなどがTBSホールディングスのリサーチに着手したと聞いています。都内・赤坂エリアの再開発を進めているTBSは、利益に占める不動産事業の割合がフジに次いで高い民放キー局として知られます。本社ビルのある赤坂サカス以外にも、8万坪(東京ドーム約5.6個分)を誇る緑山スタジオなどを所有し、不動産事業は売り上げ168億円に対し、営業利益75億円(25年3月期決算)。外資にとって、利益率のすこぶる高い同社の不動産事業は“カネのなる木”に映っています」

 フジ陥落は新たなハゲタカを呼び寄せるか。

「週刊新潮」2026年2月19日号 掲載