インド・ムンバイで開発中の住友不動産のオフィスビルの外観デザイン

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インフレに向かう日本 オフィス市場の動向は?

「我々は土地代、建築費、金利が上がったからといって、事業の将来性が暗いとは思っていない。逆に言うと、ここからが企業の実力が試される」─こう話すのは住友不動産常務執行役員企画本部長の岡田時之氏。

 足元で不動産にまつわる様々なものが上昇している。例えば地価上昇の中、土地を多く保有する住友不動産としては「いい状況なのでは?」と聞かれることもあるというが、現実には「我々にとって土地は『原材料』。今は原材料が高騰しており、それを商品力、マーケティング力で訴求し、きちんとした対価をいただくことが重要」と岡田氏。

 また、さらなる金利上昇が見通されているが、岡田氏は「インフレ経済への移行期であることは、お客様である企業も理解してくれている」として、オフィス賃料の改定交渉は順調に進んでいるという。

 もう1つ、インフレ傾向とはいえ「グローバルに見ると東京のオフィス賃料は安い」(岡田氏)という現実がある。しかも、世界の主要都市と比較しても立地はよく、ビルのスペックも高い。しかも、ここ20年は一定のビル供給が進んでいたものが、昨今の建築費高騰や用地の問題もあり、供給が絞られる見通し。それによって「本来の東京の価値を表現できるような賃料に切り上がっていくのではないか」という見通しを持っている。

 住友不動産は2025年3月に「第十次中期経営計画」を公表したが、その後、複数回にわたって経営に対する考え方を表明してきた。岡田氏は「5年前と比べて当社のステージは変わった」と話す。

 同社はこれまで成長投資の実行のために有利子負債を増加させてきた。そのため他社と比較すると株主還元は後回しという傾向が強かった。だが、現在進行中の中計では、過去の投資で生み出した現金を成長投資に回すことができるようになったことに加え、株主還元余力も生まれた。「『投資なければ成長なし』で成長投資は継続する。これは変わらない部分」(岡田氏)

 もう1つ、変わらない部分は今後も「東京」に投資をし続けるということ。「我々は東京の価値を信じている」と岡田氏。岡田氏がニューヨーク、ロンドンなどを訪れ、事業の検討をする過程の中で、改めて東京の価値を実感しているという。

 ニューヨークやロンドンはもちろん大都市だが、米国内や欧州内で分散して存在する様々な都市のうちの1つであるのに対して、東京はあらゆる産業が集中しており、人口も増加している。交通などインフラ面を考えても、「都心が動かない」のも特徴。そのため住友不動産は、東京都心の再開発に今後10年間で2兆円を投資する。

 では「変える部分」はどこか。これまで住友不動産は土地を買い、ビルを開発した後は保有をし続けて賃料で稼ぐという経営を基本に進めてきた。だが今は約2000億円分の「非プライム資産」と呼ぶ土地建物を回転型事業に活用する方針を示す。

 再開発の種地として再々開発する、建物を建設して分譲または投資家に売却、用途変更といった形で活用する。そこで失った賃料は、他の新しいビルの賃料で補っていく。

 また、分譲マンション事業も見直す。土地代、建築費の高騰で、マンション事業が成り立つエリアが縮小しているからだ。そこで収益物件の分譲事業を新たな柱として育成する方針。

 東京への投資と並ぶ、住友不動産の成長投資の舞台はインド。ムンバイでオフィスビル開発を手掛けており、総事業費は5物件で合計1兆円規模。第1号物件は26年秋竣工予定で、テナント第1号は米大手投資銀行・JPモルガンのインド法人。すでに5割が内定している。