「無料版AIで十分便利」と考える人は気づかない…"頭がいい人"との間にできる背筋が凍るほどの格差
※本稿は、本田健『AI時代の[お金を稼ぐ力]』(きずな出版)の一部を再編集したものです。

■「知性の二極化」が進む時代にどう生きるか
私は今、AIの進化を見つめながら、基本的には明るい気持ちでいます。ただ、正直に言うと、同時にある種の不安も感じています。それは「AI格差」とでも呼べるものです。お金をかけて最新の有料AIを使いこなす人もいれば、無料の範囲で「まあ、これで十分」と思っている人もいます。
今は、好き嫌いくらいにみんな思っている、この差が、これからどれほど大きな影響を与えるのか。その未来を考えるたびに、背筋が少し寒くなるのです。
私たちはこれまで、知性の格差を「教育の差」や「家庭環境の差」といった言葉で語ってきました。けれども今後は「AIをどれだけ備えているか」「AIをどのように使えるか」という要素が、人生の選択肢を大きく左右します。まるでパソコンやインターネットが普及しはじめた頃と似ています。当時も「インターネットを使える人」と「そうでない人」の間に、知識と収入の格差が一気に広がりました。今回のAI革命は、それ以上のスピードで格差を拡大するのは間違いありません。
■「頭のいい人」はAIをどう使うか?
私がさらに危惧しているのは、「AIが知性の差を埋める」どころか、かえって広げつつあるという現実です。本来、AIは誰にとっても平等なチャンスを与える道具のはずです。けれど、実際には頭のいい人ほど、AIを積極的に活用しています。彼らはAIに質問を投げ、分析をさせ、さらにその結果を自分の頭で分析して、新しいアイデアへと発展させています。そのスピードと量は、従来の学習の何倍、何十倍にもなっています。
一方で、AIにあまり関心のない人は「無料で十分」「AIなんて怖い」と言って、ほとんど使おうとしません。結果として、知性、思考力、リサーチ力、そしてアウトプット力のすべてにおいて、格差が広がっていくのです。このことを、彼らは知りません。
つまり、AIは知性の「ブースター(加速装置)」のようなものです。燃料を積んで発射台に立つロケットのように、もともと力のある人を、さらに遠くへ飛ばしてしまう。反対に、燃料を入れずに地面に立ち尽くす人は、どれだけ待っても空へは飛べません。この比喩こそが、今私が見ている未来の姿なのです。
■家庭の「AI教育格差」が大きくなる
たとえば、月に3万円のAIを5つ契約している家庭があるとしましょう。子どもがレポートを書こうと思えば、どのAIにも自分のスマホからアクセスすることができます。調べものも、論文レベルの分析も、さらに学習計画まで、すべてAIがサポートしてくれます。
一方で、無料AIをたまに使う程度の家庭の子どもは、わからないことを検索サイトで探し、時間をかけて試行錯誤しながら学んでいくことになります。結果として、学習効率やアウトプットの質に、圧倒的な差が生まれてしまいます。
家の中に、世界トップクラスのAIと自由につながる環境があり、子どもと一緒に使い方を学んでいる家庭では、AIを「友だち」のように感じるでしょう。
晩御飯のときに、何か気になったことがあったら、一緒にAIに聞いて、世界の最先端の情報と新しい知見が自然と得られます。自然と家族全体の知性が底上げされるのです。
ところが、AIと縁のない家庭では、子どもは旧来の勉強法に頼るしかありません。それが悪いわけではありませんが、同じテストを受けるとしたら、やはり差が出るでしょう。
社会に出てからも、「AIを前提にした思考」ができる人間と、「AIを使わない思考」の人間との間には、埋めることのできない大きな隔(へだ)たりができているはずです。
この格差は、単なる「知識の差」ではありません。「未来を切り拓く総合力の差」になるのです。かつて、本や教育に触れる機会が少なかった人が人生の選択肢を狭(せば)められたように、AI格差は、子どもたちの未来を分ける大きな壁となっていくのではないでしょうか。
すべての子どもには、可能性が与えられるべきだと思いますが、残念ながら、そうはならないでしょう。
■知性の二極化と社会の分断
こうして生まれるのは、知性の二極化です。AIを徹底的に使いこなす層は、ますます先へ進み、新しいビジネスをつくり、創造的な活動を広げていくでしょう。一方で、AIに触れない層は、従来の仕事にしがみつきながら、不安を抱えて生きていく。そして、その単純作業のような仕事も、AIに奪われてしまいます。

両者の間の差は、年を追うごとに広がり、やがて「同じ社会に生きているのに、まったく別の世界に住んでいる」という状況になるかもしれません。
私は、こうした分断が人々の心に不安や嫉妬を生み、社会全体を不安定にしていくのではないかと懸念しています。
お金持ちとそうでない人の差が社会を揺るがすように、AI格差もまた、人間関係や価値観に大きな溝をつくることになるでしょう。
では、どう生きればいいのか?
私たちがこの時代を生きていくために、まず大切なのは、「AIは敵ではなく、味方だ」と受け入れることです。怖がったり拒絶したりするのではなく、「どうすれば自分の人生を豊かにするために使えるか?」と前向きに考えること。たとえ無料版からでも、積極的に触れてみることが、未来の格差を埋める第一歩になるでしょう。
次に大事なのは、「AIを使う目的」を明確にすることです。単なる便利さの追求ではなく、「自分の夢を実現するため」「子どもの可能性を広げるため」といった大きなビジョンを持つこと。その目的があるからこそ、AIを学び続け、活用する力が磨かれるのです。
そして最後に、一人ひとりが「学び続ける姿勢」を持つことです。AIは日々進化していきます。今日の常識が、明日には通用しなくなるかもしれない。だからこそ、柔軟に学び直し、自分の知性をアップデートしていくことが、何より大切になってきます。
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本田 健(ほんだ・けん)
作家
神戸生まれ。2002年、作家としてデビュー。代表作『ユダヤ人大富豪の教え』『20代にしておきたい17のこと』など、累計発行部数、世界でもうすぐで900万部に迫る。2019年、初の英語での書き下ろしの著作『happy money』を米国、英国、豪州で同時刊行。これまでに34言語50カ国以上の国で発売されている。2024年5月には、2冊目の英語の著作『TRUE WEALTH』を刊行。現在は、世界を何周もしながら、英語で講演、執筆活動を行っている。
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(作家 本田 健)
