肩を組んで撮影に応じてくれた藤井(左)と角田(右)。コルトレイクの守備を支える二枚看板だ。写真:中田徹

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 昨季のコルトレイクは20節終了時点で勝点10しか奪えず、最下位に沈んで「自動降格間違いなし」と言われていた。しかし藤井陽也(名古屋グランパス)と角田涼太朗(横浜F・マリノス→カーディフ)が昨年1月、期限付き移籍で加わると最後の10試合で14勝点を稼いで、最終節で自動降格の最下位から脱出した。続くプレーダウンでも辛うじて生き残り、ロンメルとの入れ替え戦に進出。その戦いは延長戦に突入する激戦となり、2試合合計5−2で1部残留を果たした。
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 とはいえ昨季、藤井と角田が共にピッチに立ったのは18試合中わずか4試合だけだ。それだけふたりとも負傷に苦しんだ昨季終盤戦だった。それでも、ふたりのパフォーマンスとチームへの貢献は高く評価された。藤井は昨季終了後、コルトレイクへの完全移籍を勝ち取り、角田は昨冬、「今年もうちを助けてくれ」と残留請負人として保有元のカーディフからコルトレイクへ再レンタルされた。そして今、彼らはまた『奇跡の残留』を目ざしてプレーダウンを戦っている。

 4月12日、コルトレイクはホームにベールスホットを招いてプレーダウン3戦目を戦った。立ち上がり2分、ロングボールの処理を角田が誤り、コルトレイクは危うく1点を失いかけた。1−1で迎えた43分、相手ストライカーへのパスを読み良く角田がインターセプトしてカウンターの起点になり、FWティエリ・アンブローズのゴールでコルトレイクが2−1と勝ち越すも、その2分後に同点とされ、前半を2−2で終えた。

 後半はコルトレイクがペースを握り続けたが、MFアブデルカハル・カドリの決勝ゴールが決まったのはようやく82分のこと。仲間のゴールセレブレーションに加わることなく、角田は「このまま試合を締めるぞ」と言わんばかりにセンターマーク上で仁王立ちしていた。

「今日は反省点のほうが多い試合でした。(2分の)ファーストプレーがすべてです。前半はチームとしてうまくいかなかった場面が多く、後半はうまく修正して入れました。後半は相手の勢いが落ちて、自分たちのボールを持つことが増えたなかで、守備陣はそれ以上失点しないことができた。あと、なんとか点を取ってくれて良かったです」(角田)
 
 この日、角田のプレーで光ったのはふたつ。ひとつ目は43分、相手ストライカーへのパスを角田がインターセプトし、FWナチョ・フェリが2−1とするゴールにつなげた。会心のパスカットに角田はフェリがゴールを決めると、自陣に残ったまま身体を海老反りにしながらガッツポーズした。

 会心のボールカットだったのでは?

「そうですね。相手の狙いも分かっていたので、そこを潰せば良い攻撃につなげられる」(角田)

 角田の好プレーふたつ目は後半半ば。アンカーのマルコ・イライマハリトラが前線に飛び出したことで、コルトレイクの3バックの前に大きなスペースが生まれ、そこをベールスホットに突かれるシーンがあったが、角田が前に出て潰すことで事なきを得た。
 こうして3−2で勝ち切ったコルトレイクはプレーダウンに入ってから2勝1分けと好調だ。プレーダウン3位(自動降格)のコルトレイク(勝点33)が、1位(1部残留)のSTVV(シント=トロイデン/勝点37)、2位(2部チームとのプレーオフ進出)のセルクル・ブルージュ(勝点36)を逆転することは十分可能だ。

 2年連続のミラクルが実現するのでは?

「そうですね。実現したらチームとしても自分としても、ほぼ奇跡に近い。今シーズンは特に。なんとか残留したいですね」(角田)

 この日、交代要員だったものの出場機会のなかった藤井はこう語る。

「負けたら終わり、と言われた前回のシント=トロイデン戦をしっかり3−0で勝てたのはチームとしてすごく大きかった。今日も負けてもおかしくないゲームでしたが、それを勝てたのはチームとしてすごくポジティブです。今は上が見えている状態。自信を持ってやっていけると思います」(藤井)

 私はゴール裏のホームサポーター席上段からベールスホット戦のウォーミングアップを眺めていた。チームメイトがロッカールームに引き上げても、角田と藤井は無言のメッセージを交換するかのようにパス&トラップを丁寧に繰り返していた。このふたりが負傷に苦しんでもカムバックする姿と、コルトレイクが毎年、下位に沈んでノックアウト寸前になりながらも立ち上がる姿がダブって見えて仕方がなかった。
 
 昨季の藤井は終盤戦で一時、戦線離脱し、ロンメルとの大一番では負傷退場した。今年に入ると古傷の脛を手術し、2か月間試合に出ることができなかった。プレーダウン初戦に味方CBが退場したことから急きょ、藤井は途中出場。続くシント=トロイデン戦も先発せざるを得なかったが、手術した箇所にリバウンドを起こしてしまい、前半いっぱいでベンチに退いた。そしてベールスホット戦を迎えた。

「僕自身、日本では一回も怪我をしてなかったんです。今季も前期はほぼ怪我なくやれたんですが、1月に手術をしました。角田選手はもっと大きな怪我をして、彼自身すごく苦しんでました。それを僕は一番近いところで見てました。彼の気持ちも分かるし、僕もやっぱり怪我をしたので、ふたりともいろいろな思いがある。彼も『今、サッカーをやれることの喜びがある』と言ってます。いろいろな人が支えてくれているなということをここに来てあらためて思いました。

 いろいろな気持ちがありますけれど、ふたりで支え合って、高め合いながら最後は残留に導けるように頑張りたい。昨シーズンも『(残留は)無理』とは言われてましたけれど、そのなかで残留した。今年も盛り返してそういう雰囲気になってきた。最後まで分かりませんが、自分たちを信じて頑張りたい」

「ふたりともそんなに順風満帆なサッカー人生ではないのかな。今、ここにいられることも当たり前なことではない。正念場と言うかどうか、分かりませんが」(角田)

 角田がハムストリングを負傷したのは今から13か月前のこと。22節のルーベン戦(0−0)から8試合連続フル出場でチームの守備立て直しに貢献したCBは、最終節のアンデルレヒト戦(1−0)でも先発を飾り、強豪相手に堅守を披露して0−0のまま68分を迎えていた。この日のパフォーマンスに手応えを掴んでいた角田は、相手のスルーパスをカットできると睨んでダッシュした。その瞬間、ハムストリングが悲鳴を上げた。

「個人的にもすごくパフォーマンスは良かった試合だったので、あのシーンも『あ、ボールを取れる』と思ってスプリントしたら...。あれから公式戦に立つのに10か月かかった。でもこうやって今サッカーができているので楽しいですね」(角田)
 コルトレイクは華やかさとは無縁のクラブで、むしろ、泥臭さが売りのクラブ。これもまたヨーロッパサッカーのリアルだ。

「ふたりとも日本ではビッグクラブでやっていた。環境で言ったら日本のほうが断然いい。そのなかでも充実してますね。(充実しているのは)海外のリーグで試合に出られていること。日本人とやるのと全然違いますし、それこそ結果がすべての世界。より結果が求められる点でやりがいがあります。生活自体も楽しんでできているので、日本が恋しいと思うこともそんなにないです。オフまであとちょっと頑張りたい」(角田)

 2月20日から指揮を振るベルンド・シュトルク監督は、コルトレイクを2季前も残留に導いた名将だ。当時、シュトルクのもとでCBを務めた渡辺剛(現ヘント)が当時を振り返る。

「俺らのときは前半戦が終わってダントツのビリでした。あの監督が来てから3バックシステムにして、俺が真ん中をやってどうにか残留させて、監督は超英雄になった。魂、あるんですよ。ホント、気持ちだけですもの。別に戦術はないです。俺らのときは『お前ら、2部に落ちたらチームはお金がなくなり、お前らの周りにいるスタッフ、みんなクビになるからな。コイツらの職のために、お前ら頑張れ』って。カッコいいですよ。目先の勝利だけじゃなくて、クラブがどういう状況に陥るかとか。それを聞いたら選手も奮闘しますよね」(4月13日、アントワープ対ヘント後の談話)

 規律に厳しいと評判のシュトルク監督だが、選手に寄り添ったアプローチも巧みという声もメディアを通じて聞こえてくる。藤井の場合はこうだ。

「プレーのことはもちろんですが、2か月半くらい離脱していたので、そのへんのケアもしっかりしてくれる。『すごく信頼している』と声かけしてくれているので、あとはそれに応えられるように僕も頑張らないといけません」(藤井)
 
 昨季、藤井と角田が同時にピッチに立ったとき、3バックの中央にはジョアン・シウバ(現スポルティング・ヘシフィ)がいた。今は藤井が真ん中でプレーすることが多いが、彼が不在の時は角田が真ん中を務める。 

――日本人CBのどちらかが、現チームのディフェンスリーダーを務めていますね

「それは分かりませんが、監督がすごく信頼してくれている感じはあります。僕たちがリーダーとしてやっていかないといけない。ふたりで守れる自信はもちろんある。自信を持ちながらやるべきことをやるだけです」(藤井)

「その言葉に尽きると思います」(角田)

 コルトレイク、3季続けて奇跡の残留なるか。プレーダウンは1週間のブレイクを挟み、4月25日のベールスホット対コルトレイク、26日のセルクル・ブルージュ対STVVから後半戦に突入する。

取材・文●中田 徹