『おとなの週末Web』は、手料理の魅力も紹介しています。中でもお酒好きなら、お供になる肴にもこだわりたいところ。自宅で作った様々な料理で「おとなの週末」を楽しんでいる年金生活の元男性編集者が、二十四節気に合わせ、自慢の酒肴を紹介します。連載6回の「啓蟄」編「なんと、揚げ時間わずか10秒…おかずにもなる「やりいか」と「新ごぼう」のから揚げ「おつまみレシピ」の超簡単調理法」に続く「春分」編をお楽しみください。

桜咲く春分の頃は「煮卵」の季節

春分の日は、ややこしい休日だと思いませんか? 今年は3月20日が「春分の日」にあたりますが、2021年は3月20日でした。

これは、太陽が地球の赤道の真上を南から北へ通過するタイミング(春分点)の1日を「春分」としているためだそう。そのため、年によって日が変わるのです。ちなみに、昼と夜の長さがほぼ同じになる日でもあるそうです。勉強になります。

古くからの生活暦・二十四節気での「春分」も同様に、春分からのほぼ2週間となります。今年は3月20日からですが、まさに春たけなわの季節。桜の開花にも重なり、誰も心がうきうきする季節です。

69歳のオイラの心も浮き立ちます。暖かな春の日、ウイスキーの小瓶をポケットに忍ばせ、桜並木を歩きながらチビリチビリとやるのです。「生きていてよかった〜」と心から思える瞬間です。

そんなほろ酔い散歩によく持っていくのが「煮卵」です。煮卵といっても、卵を煮るわけではありません。半熟にゆでた卵を、煮汁に浸け込んだだけの味付け卵なのです。

はい、オイラは歩きながら酒を飲むだけでなく、卵も食べる下品なジジイでございます。その点は十分承知していますが、春爛漫の折、外で食べる煮卵はなんともうまいのです。

浸け込む時点で、卵のからはすでにむいてあるので、ジップロックに入れておけば歩きながらでも食べやすいのです。らくに2個はいけます。もちろん、家飲みのお供にもうってつけ。そのまま食べてもいいし、ポテサラに添えてもよし。とびきりおいしい一皿となります。

【仕込み編】

1年じゅう、お店に並ぶ卵ですが、春3月は卵の出荷量が1年でもっとも多くなる時期といわれています。自然界のニワトリは、本来冬にエサをたくさん食べて、春に栄養をたっぷり蓄えた卵を産卵してきたそうです。まさに春こそが卵の旬。そして煮卵の季節なのです!

ほどよい半熟煮卵への第一歩は、その手順にあります。多少のワザが必要です。いっぽうで調理においては、水の量やゆでる時間を計りながら進めることで、「むきやすく」「断面の美しい半熟煮卵」となります。オイラの作り方(卵4個の場合)をご紹介いたします。

(写真右)生卵に画ビョウで小さく穴をあける。日付ラベルが貼ってある面(卵の平たい部分)に画ビョウで穴をあける

1)卵は冷蔵庫で保存していたもの、4個を用意する。※室温には戻しません。冷蔵庫から出したばかりの冷たい卵です。

2)卵の底部(とんがっていないほう)に画ビョウで小さな穴をあけていく。※底部とは、日付ラベルが貼ってあるほうの場合が多い気がします。画ビョウは使う前に熱湯消毒をしておきましょう。グリグリ回しながら刺し、穴をあけていきます。

【調理編】

1)小鍋に水600mlを入れ、沸騰させる。

2)沸騰したら火を止め、冷蔵庫から出して穴をあけた卵をひとつずつ鍋に入れていく

3)再び火をつけ、中火で7分ゆでる。※時間はきっちり計りましょう。超半熟がお好みの場合は、6分30秒ゆでて火を止めましょう。

4)7分ゆでたら火を止める。すぐに鍋の湯を捨て、卵を流水で一気にさます。しばらく、水に浸けておく。

5)煮卵用の浸け汁を作る。小鍋に水600ml、しょうゆ50ml、みりん100ml、市販のだしパック1袋(8g)を入れ、ひと煮立ちさせてから別の容器に入れ替えてさましておく。※卵をゆでる前に作り、さましておくのがおススメです。

6)ゆで卵のからをむく。流水にあてながらむくと、さらにむきやすい。

7)からをむいたゆで卵は、煮卵用の浸け汁に浸ける。ジップロックなどに浸け汁を注ぎ、そこにゆで卵を1個ずつ入れていく。※今回は卵4個としていますが、8個ぐらいまでなら、同じ分量の浸け汁で大丈夫です。

8)浸け汁に入れたゆで卵を、冷暗所か冷蔵庫にまる1日置いて味をなじませる。これで出来上がり。

※浸け汁に浸けておく時間が長くなるほど、卵に味がしみ濃い味付けとなります。経験上、5日以内に食べきりましょう。出来上がった煮卵を切る際は、糸を使うと断面がきれいに仕上がります。

有名ラーメン店の煮卵から受けた衝撃

ゆで卵は、子どもの頃の遠足でもよく食べていた記憶があります。「から付き」のまま持たされていましたね。だいたい固ゆでで、しかもうまくからがむけず、薄皮をはがすときに白身の表面がデコボコになってしまう――そんな、ゆで卵で育った世代です。

ところが、大人になってラーメン店で出会った煮卵は衝撃でした。ツルンとした美しいあめ色のゆで卵は、中の黄身もトロ〜リとした超半熟。

かつて九段下(東京都千代田区)にあった有名ラーメン店での光景ですが、2リットルは入る氷水用のピッチャーの中いっぱいに、煮汁とともに浸けられたていた煮卵は実に壮観でした。

しかも、煮卵の表面はキズひとつない“美貌”。百発百中でからがきれいにむけているのです。

「どうやれば、あれだけたくさんのゆで卵を、すべてきれいにむけるのだろうか?」

オイラが抱き続けてきた素朴な疑問は、やがて、テレビ番組で解き明かされました。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、ゆでる前のたまごの底部(とんがっていないほう)に、画ビョウで小さな穴をあけておくのです。

穴があくことで卵をゆでるときに、からの内側にある膜と、ゆで卵の白身との間に水が入るため、むきやすくなるという仕組みでした。

しかも、古くなるほどむきやすくなるのだそう。新しい卵の白身には「炭酸ガス」が含まれていてるそうですが、時間の経過とともにガスが抜け、からと白身の間に「すき間」が生じることでよりむきやすくなるのでした。

参考文献/一般社団法人日本卵業協会ホームページ「タマゴQ&A」

…つづく「「こんなうまいものがあるのか」…20歳の青年が、オホーツクの旅で《ホタテ貝の刺し身》に感動し始めた「意外な商売」」では、宮城県三陸のひとりの養殖家が、うまいカキを探しに世界中を旅した話を明かします。

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文・写真/沢田 浩

さわだ・ひろし。書籍編集者。1955年、福岡県に生まれる。学習院大学卒業後、1979年に主婦と生活社入社。「週刊女性」時代の十数年間は、皇室担当として従事し、皇太子妃候補としての小和田雅子さんの存在をスクープ。1999年より、セブン&アイ出版に転じ、生活情報誌「saita」編集長を経て、書籍編集者に。2018年2月、常務執行役員パブリッシング事業部長を最後に退社。