日本のレジェンドを父に持つ遠藤楓仁。その宿命とどう向き合ってきたのか。写真:安藤隆人

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 父親は元日本代表でガンバ大阪のレジェンド。G大阪ユースMFは生まれながらの『宿命』とどう向き合っているのか。遠藤楓仁のインタビューコラムをお届けする。

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「常にいいプレーしないと、結果を出さないと言われるのは宿命だと思っています」

 8月7日から石川県で開催されている和倉ユースサッカーフェスティバル。直前の日本クラブユース選手権で優勝したG大阪ユースのMF遠藤楓仁は、和倉ユースの初日を終えてこう口にした。

 彼の言う『宿命』というのは、父親の存在にある。父親は元日本代表でG大阪のレジェンドであり、現在はジュビロ磐田でプレーする遠藤保仁。日本クラブユース選手権決勝のFC東京U-18戦で、父のガンバ時代と同じ背番号7を背負い、チームの優勝を決めるPKを決めたことで一躍その名が知れ渡り、「キックするフォームが似ている」、「立ち姿が似ている」とSNSでも大きな話題となった。

「去年までこんなに騒がれることはなかったので、改めて自分に対する期待は上がってきていると思いますし、それに応えたいのですが、それがなかなかうまくいっていないのが現状だと思っています」

 和倉ユースでは、日本クラブユース選手権で負傷した選手や、年代別日本代表に選ばれた選手は帯同をしていない。遠藤はヴィッセル神戸U-18、帝京大可児高の試合でもボランチとしてスタメン出場を果たしたが、ボランチにはU-17日本代表の宮川大輝など強烈なライバルたちがひしめいており、立ち位置はまだレギュラーではない。
 
「ここでしっかりとプレーをしないといけないと覚悟を持って臨んでいます」

 こう語る遠藤に改めて心の内を聞いた。物心ついた時にはすでに『遠藤保仁の息子』という看板はついて回った。サッカーを始めて年齢を重ねていくにつれて、それがどんどん大きくなっていった。

「小さい頃から『父親と比べられるだろうな、色々言われるだろうな』とは思っていました。小学生の時はガンバのジュニアに入ったことで、その声に苦しんでいたのは事実です。でもジュニアユースに上がってからはもう慣れてきました。父親の看板はもう気にしないようにしています」

 世間の目を気にしない術は口で言うのは簡単だが、かなり難しく時間がかかることなのは間違いない。辛い思いをしながら、その度に自分自身と向き合って、折り合いをつけていく。この作業を重ねていったことで今の『慣れ』がある。それについて聞くと、遠藤はしっかりと自分の考えをこう口にした。

「父親に追いつけないと割り切っている一方で、そこに少しでも近づけるようにチャレンジはし続けようと思っています。今は手の届かない場所に父はいると思っていますが、僕にとって最高のお手本であり、目標であることは間違いありません。だからこそ、ここからどうやって近づいていくかというと、逆に父のウイークであるフィジカル面、守備で上回っていくことだと思うし、技術をひたすら磨いていくこと。ライバル意識や目標意識を持つことで、父の関係性を持ちたいと思っています」

 追いつけないかもしれない事実よりも、せっかく自分の理想像が父、としている環境だからこそ、近づくことを諦めたくない。その気持ちが自分の成長への大事な要素だと理解していたから、遠藤はブレずにサッカーに打ち込んできた。
【動画】遠藤楓仁の父親そっくりなフォームのPK
 クラブユース選手権決勝をきっかけに『遠藤保仁の息子』という目が再燃をしたが、自分自身と向き合う姿勢を崩さなかった。

「今の僕は本当に不完全燃焼なんです。今年は高校最後の1年なのに膝を怪我して、プリンスリーグ関西はほとんど出られませんでした。だからこそ、クラセンにかけていました。コンディションを万全にして、本調子で臨もうと気持ちを入れていたんです」

 クラブユース選手権、グループリーグ初戦のFC東京U-18戦はスタメンフル出場を果たした。2戦目のジュビロ磐田U-18戦でもスタメンフル出場をするが、その後にコンディションを崩し、プレーできない状況になり、次の試合からはベンチ外になってしまった。ボランチのポジションにはライバルでもある宮川が入り、チームの快進撃の原動力となる姿を外から見つめることしかできなかった。

 だが、準決勝のファジアーノ岡山U-18戦でベンチ入りを果たすと、「本当は決勝も出られなかったはずだったのですが、仲間が本当に支えてくれて、町中大輔監督も起用してくれた」と振り返ったように、決勝では3−3で迎えた延長前半に宮川に代わって投入。延長戦をフルにプレーし、そして前述したPKキッカーとして優勝を決めた。

「チームに迷惑をかけてしまった分、これから取り返したいと思います。宮川はジュニアユースの頃からずっと一緒にやってきて普段はめちゃくちゃ仲がいい。でも、彼は代表に選ばれていますが、僕は選ばれていないので、そこのライバル意識は常に持っています。ここからだと思っています」
 
 和倉の地で真摯にサッカーに向き合う遠藤楓仁。実際に試合を見ても、彼はピッチの中央で背筋がピンとした姿勢から常に周りを見渡して、チームを落ち着かせるボールキープとパス、そして攻撃のスイッチを入れる意表を突くパスを披露。そのプレーはやはり父に似ていた。

「一つのパスで試合を変えられる選手になりたいです。僕は身体がデカいわけではないし、ゴツくないし、速くはない。でも、それを持っている選手たちに勝たないとこれからはいけない。頭、ゲームを読む力で相手を上回りたいと思っているので、攻撃面では常に僕は相手のセンターバックを見ています。

 ボールをもらう前に相手のセンターバックを見たら、相手の狙いがわかるので、どこが空いているか、どこにいるか。センターバックと駆け引きをして、センターバックはフォワードについていくものですが、そうじゃなくて、意識をボランチの自分に向けさせて、パスやトラップでずらしたい。

 相手ボランチやフォワードがプレスバックをしてきた場合は、ボランチの一方のポジションを把握して、そこにパスをつけながら前に出る。あまり僕はドリブルができないので、ファーストタッチで剥がすか、パスでシンプルに散らすことを考えています。僕は敢えてバックパスをしようと思っていて、そうすることによって結構裏が空くので、バックパスは有効的に使うようにしています。

 見えたうえで、バックパスを選択肢に入れる。バックパスをしたら『こいつボールを出してこないじゃないか』と思うじゃないですか。そこで一発で出すことを意識しています」

 彼が語るプレーイメージはまさに遠藤保仁が得意とし、見ているイメージだった。それを伝えると、本人は笑みを浮かべながら、「そうなんです。理想はやっぱり父のような選手になりますよね(笑)。どれだけ否定をしたとしても、やっぱりそこに行き着くんです」と照れながらも口にした。

 運命に抗うのではなく、受け入れて自分の成長につなげていく。目標を定め、そこに近く努力を具体的に考えながら日々を過ごす遠藤楓仁の和倉での決意をここに記す。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)