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1950年代初頭の理想的なファミリーカー

1950年代初頭の英国へぴったりハマっていた、オースチンA30「ニュー・オースチン・セブン」。当時の若い世代にとって、理想的なファミリーカーになった。

【画像】名機Aシリーズを初搭載 オースチンA30/A35 同時期の英国車 モーリス・ミニ・マイナーも 全128枚

第二次大戦は集結したものの、経済はひっ迫していた。20.0km/L近い燃費を現実的に得られる、しっかり作り込まれた手頃な価格の小型乗用車は、まさに市民が求めていたものだった。


オースチンA30/A35(1951〜1968年/英国仕様)

その頃のオースチンは、工業デザインの父と呼ばれるレイモンド・ローウィ氏が営む事務所へ、ボディのデザインで協力を仰いでいた。そこで、在籍していたデザイナーのホールデン・コート氏が、新型サルーンのスタイリングを提案した。

原案にはオースチン側で手が加えられ、先代のオースチン・セブンへ近いサイズへ縮小。丸く小さな愛らしいボディが生まれた。英国人デザイナーのデビッド・ベイチュ氏も、1953年式以降のダッシュボードを含む、マイナーチェンジへ関わっている。

A30はモノコック構造で、新開発のオーバーヘッドバルブ4気筒エンジン、名機として知られるAシリーズ・ユニットを量産車として初搭載。2速以上にシンクロメッシュを内蔵した、4速MTが組まれた。

このAシリーズと呼ばれるエンジンは、それ以来、半世紀に渡って様々なモデルの動力源となった。BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)の、牽引役になったといってもいい。

電気系統には、先進的な12Vの電圧を採用。リア・サスペンションにアンチロールバーを装備し、驚くほど優れた操縦性も叶えていた。

1959年にモーリス・ミニへ役目を交代

1951年に発売された、初期型となるA30の排気量は803cc。設計に優れたエンジンでも、さすがに身軽な走りは実現できていなかった。

緩やかな登り坂では、3速に入れて約50km/hで走るのが精一杯。とはいえ、当時の手頃なファミリーカーとしては不満のない性能ではあった。


オースチンA30/A35(1951〜1968年/英国仕様)

1952年11月のモーター誌は、次のように紹介している。「加速力や走行速度は、これまでの国民の大部分が必要とするものより優れています」

1956年には、後期型のA35へマイナーチェンジ。排気量は948ccへ増やされ、馬力も向上し、歴代のAシリーズ・ユニットのなかでも高い評価を得ている。

その後、モーリス・ミニ・マイナーが1959年に登場。A35の役目は、新しい前輪駆動のハッチバックへバトンタッチした。

それでも、ステーションワゴンのカントリーマンは、1962年まで生産が続いている。5cwtと呼ばれる商用バンは、1968年まで存続された。排気量を848ccから1098ccへ拡大しながら。

オースチンA30シリーズで最も珍しいのが、5cwtピックアップ。1956年から1957年という短い期間に作られた小型トラックで、生産数は475台に留まる。また、2ドアサルーンも追加されている。

オランダ・チューリップ・ラリーで総合優勝

小型乗用車として生まれたA30は、モータースポーツでも一定の活躍を残した。特に、1956年にオランダ(ネザーランド)で開催されたチューリップ・ラリーでは、総合優勝を掴んでいる。

英国のサーキットでは、後期型のA35をレーシングドライバーのジョン・スプリンゼル氏がドライブ。各地で勇姿を披露した。ほかにも、1957年にはフランスのサーキット、オートドロム・ドゥ・リナ・モンレリで、長距離クラスの速度記録も更新している。


オースチンA30/A35(1951〜1968年/英国仕様)

登場から70年以上が経過し、近年はクラシックカー・イベントを中心に再び注目が高まっている。現存する例の多くがレーシングカーとしてモディファイを受け、グッドウッド・リバイバルなどでしのぎを削り、われわれを喜ばせている。

前期のA30でも、後期のA35でも、今でも運転は楽しい。本来の能力をしっかり引き出すには、ドライバーの技術もある程度求められる。年代物のクルマだけに装備は最小限だが、乗員空間は見た目以上に広いことも魅力だろう。

オーナーの意見を聞いてみる

友人が所有するオースチンA30に憧れて、1982年にA35を購入したというキース・ベネット氏。「妻の移動手段として購入しました。オーナーズクラブのイベントへ参加すると、このA35の状態がとても良いことへ気付いたんですよ」

「4ドアのデラックス仕様で、リアクォーターに窓があり、バンパーにはクロームメッキのオーバーライダーが付いています。2オーナー車で、大切に維持されてきたようです」


オースチンA30/A35(1951〜1968年/英国仕様)

「わたしたちは積極的に乗っています。牽引バーを取り付けて、トレーラーを引っ張ることもありますね。ボディはサビが進行したので、2009年にレストアを頼みました。サイドシルとフロアを交換し、リアのフェンダーなどは溶接でツギハギされています」

「エンジンとトランスミッションは、自分でリビルドしました。ガレージにはスペアパーツがいっぱい取ってあります。オリジナルと異なる部分は、ステンレス製のマフラーが付いていることくらい」

「ブレーキは、力を込めて踏み続ければ制動力が高まります。運転がとても楽しいですね。ショーイベントでは、幾つかの受賞経験もあるんです」

英国で掘り出し物を発見

オースチンA35 2ドアサルーン(英国仕様)

登録:1958年式 走行:−km  価格:2万4950ポンド(約436万円)

コスト度外視で、HRDC(ヒストリック・レーシング・ドライバーズ・クラブ)アカデミーによって作られた、モータースポーツ用のA35。ダンロップ・オールスターズ・シリーズなどのヒストリックカー・レースへ、そのまま出場できる内容にある。


オースチンA35 2ドアサルーン(1958年式/英国仕様)

グッドウッドやシルバーストーンなどでのサーキット・イベントは、既に何度も経験済み。BTCCドライバーのアンドリュー・ジョーダン氏や、TVタレントのアント・アンステッド氏などが、ステアリングホイールを握ったクルマだ。

オースチンA35 4ドアサルーン(英国仕様)

登録:1957年式 走行:1499km(レストア後) 価格:2万5000ユーロ(約362万円)

1985年に英国からオランダ(ネザーランド)へ移った、948ccエンジンのA35。2003年に、熱心なオーナーによってレストアが施されている。完成後は余り乗られておらず、仕事の内容も丁寧だと思われる。

ボディは鮮やかなフロリダ・グリーン。希少なオリジナルのサンルーフが備わっている。エンジンルームはボディと同様に美しく、グリーンのレザー・インテリアも見た目は好印象。好みは、分かれるかもしれないが。

中古車購入時の注意点などは後編にて。