フェラーリV8をミドシップ スバッロ・スーパーエイト 240馬力の酔わせる融合 後編
フェラーリらしい気持ちを高ぶらせる脈動
スバッロ・スーパーエイトのドアを開くと、丁寧に施された内装に見とれてしまう。ベルベット・カーペットの上に載る、タン・レザー仕立ての大きなセンターコンソールが、マラネロ由来のコンポーネントを包み込んでいる事実を静かに語る。
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エアコンの送風口やスイッチ類と同様に、メーターパネルもフェラーリから移植されている。丸いシフトノブが付いたクラシカルなシフトレバーは、クロームメッキされたオープンゲートから伸びる。

スバッロ・スーパーエイト(1984年/欧州仕様)
予想外だったのが、フロントノーズに用意された荷室。ボンネットを開くと、2名分の長期休暇の荷物を問題なく飲み込めるほど、大きな空間が広がっていた。
3.0L V8 32バルブエンジンは、すぐに目覚めた。フェラーリらしい気持ちを高ぶらせる脈動が、スーパーエイトの小さなキャビンを満たす。車内に搭載されていると表現しても過言ではなく、サウンドはスーパーカー以上に鮮明に届く。
クラッチペダルはやや重めで、ある程度の筋力が求められるが、大変なほどではない。ミートポイントを把握しやすく、調整しやすいパワーデリバリーで発進は難しくない。
現オーナーのハーバート・ファン・クイク氏のガレージから、カーブの続く公道へ進む。スーパーエイトのサスペンションが硬いことを実感する。ステアリングホイールは、斬新な見た目から想像する以上に情報量が豊か。シャシーの挙動も理解しやすい。
不安定になる素振りはほぼない走り
ハッチバックのボディにスーパーカーのエンジンという組み合わせだから、当初の筆者はかなり構えていた。ところが見事に融合しており、心配は信頼に転じていく。アクセルペダルを深く踏み込んでも、急に緩めても、不安定になる素振りはほぼない。
既に誕生から40年近くが経過するものの、技術的な水準の高さを感じられる。1台限りのワンオフ・モデルとは思えない。

スバッロ・スーパーエイト(1984年/欧州仕様)
一方で、想像通り独創的な体験ではある。インテリアは丁寧に仕立てられ、ディティールにも見入ってしまう。メーターは当時のフェラーリらしく、黒い盤面に白文字。ステレオはクラリオン社製で、カセットテープも再生できる。
バックミラーをのぞくと、レザーストラップで固定されるスペアタイヤが載った、通気口付きのパーセルシェルフが視界に入る。一段高くなっていて、その下にV8エンジンが潜んでいる。
残念ながらデザイナーのフランコ・スバッロ氏は、彫刻作品のように見応えのある、フェラーリ・ユニットをガラスカバーで鑑賞できるようには作らなかった。その後のスーパーカーのように。
きついカーブを曲がり、短い直線で加速。ブレーキングし、再び旋回。スーパーエイトは動じることなく、ハイスピードで左右に流れていく。流暢な身のこなしで、余裕すら感じられる。
斬新なイメージ以上に加速は鋭い
パワフルなV8エンジンは、速度域を問わず意欲的に速度を上昇させる。240psが7000rpmで発揮されるから、回転数へ比例するようにパワー感も増していく。斬新なスタイリングからイメージする以上に、走りは鋭い。
スーパーエイト全体が温まると、シフトレバーの動きが滑らかになり、乗り始めより変速しやすくなる。ブレーキは、40歳という車齢をいい訳にする必要がない。現代の基準でいっても制動力は強力だ。

スバッロ・スーパーエイト(1984年/欧州仕様)
高い速度域でも、ミドシップ・シャシーが沢山の情報をドライバーへ伝え、迫る挙動の乱れや限界を察知できる。注意を払っていれば慌てる必要はない。スローイン、ファストアウトを守る限り、落ち着きを失うことはないようだ。
加速しながらコーナー出口を抜ける場面では、フロントーノーズが軽くなるが、バランスの変化は穏やか。フロントタイヤが路面を放すこともない。ユニークなスーパーエイトへ敬意を抱いてしまう。
ケーニッヒのようなドイツのチューニングメーカーが、ルノー5ターボや、プジョー205 マキシを仕立てたら、こんなハッチバックに仕上がったかもしれない。グループB時代のラリーマシンの雰囲気もミックスされている。
ウズウズと熱を帯びていた1980年代の精神を映し出す、興味深い融合だ。スバッロの手による見事なカクテルは、まだドライバーをしっかり酔わせることができる。
番外編:スーパートゥエルブ
スバッロ・スーパーエイトが誕生する以前、1982年に制作されたのが、更に過激だったスーパートゥエルブ。スタイリングはスーパーエイトに似ているが、グラデーション処理の塗装からも、一層エクストリームな内容であることが想像できる。
トゥエルブ(12)という名称が示すとおり、フロントシートの後方に搭載されたのは、カワサキのバイク用エンジン。1.3L直列6気筒エンジンを2基並べ、2.6L 12気筒エンジンとし、小さなボディへ横向きに押し込められた。

スバッロ・スーパートゥエルブ(1982年/欧州仕様)
エンジンのクランクシャフトは独立しており、それぞれ個別のトランスミッションを介して後輪を駆動している。車重は800kg程度で、最高出力は260馬力。当時としてはかなりの動力性能といえ、走りも鮮鋭だったという。
執筆:Jaco Bijlsma(ジャコ・ビルスマ)
撮影:Jerome Wassenaar(ジェローム・ワッセナール)
スバッロ・スーパーエイト(1984年/欧州仕様)のスペック
英国価格:−ポンド(新車時)/15万ポンド(約2415万円/現在)
販売台数:1台
全長:3150mm
全幅:1750mm
全高:1300mm
最高速度:220km/h(予想)
0-97km/h加速:5.0秒(予想)
燃費:6.4km/L(予想)
CO2排出量:−g/km
車両重量:1230kg
パワートレイン:V型8気筒2927cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:240ps/7000rpm
最大トルク:26.4kg-m/5000rpm
ギアボックス:5速マニュアル
