化石燃料に代わる再生可能エネルギーを見つけ出すことに対し世界中の企業が注力していますが、太陽光・風力・地熱・潮力・水力といったものからエネルギーを生み出し、産業レベルで利用可能にするには、多くの課題が存在します。そんななか新たに、「鉄の粉を燃焼させることでエネルギーを生み出す」という技術を、オランダの学生チームが開発。実際にビール醸造所で「全てのエネルギーを鉄粉による循環型エネルギーシステムでまかなう」という試みがスタートしました。

SOLID - A compact and clean fuel

https://teamsolid.org/

World first: Dutch brewery burns iron as a clean, recyclable fuel

https://newatlas.com/energy/bavarian-brewery-carbon-free-renewable-iron-fuel/

鉄が燃料としてどのように使われるのかは以下のムービーを見るとよくわかります。

Iron Powder - the green energy solution - YouTube

化石燃料の替わりに風や太陽光を使った発電が行われていますが、風や太陽光は常に利用可能なものではないので、産業によっては燃料の置き換えが難しいところもあります。



また水素や電力ではエネルギーを貯蔵するために物理的に大きな場所を必要とし、コストもかさむという問題があります。



そこで問題を解決するために開発されているのが、「鉄の粉によりエネルギーを生み出す」という技術。



鉄の粉は直径が50マイクロメートルほどで、多くの貯蔵場所を必要としません。



石油やガスと同様に、鉄の粉も燃やすことでエネルギーを生み出すことができます。



しかし、石油やガスと違って燃焼する際に二酸化炭素を排出しないとのこと。



鉄が燃焼する時に出るのは「さび」のみ。



鉄の粉を燃焼したエネルギーで蒸気を作り出すことができ……



この蒸気を産業的な目的のために使うことができます。



また、電力を供給するために蒸気タービンを動かすことも可能。



鉄を燃焼することで生まれたさびは、風力発電や太陽光発電によって再び鉄に生まれ変わらせることができます。



このように、鉄の粉は産業レベルで利用できる燃料になりえるのですが、実現のためにはさらなる開発とスケールアップが必要とのこと。



そして、鉄の粉をエネルギー源にするために開発を進めているのが、オランダのアイントホーフェン工科大学の学生チーム「SOLID」です。SOLIDの研究者は企業との提携を試みており、2020年11月にはオランダのビール醸造所であるSwinkels Family Brewersが世界で初めて鉄エネルギーシステムを産業規模で利用する企業になったと発表されました。Swinkels Family Brewersは年間1500万杯のビールを生み出すために必要なエネルギー全てを、醸造所に設置した「循環鉄燃料システム」でまかなっているとのこと。

これが輸送中の循環鉄燃料システム。



作業員がSwinkels Family Brewersのエネルギーシステムに鉄の粉を投入しているところ。



Swinkels Family BrewersのCEOであるPeer Swinkels氏は「私たちの仕事は家業であり、『年単位』ではなく『世代単位』で物事を考えるため、持続可能で循環型の経済に投資することにしました」「この革新的な技術を通して、私たちは醸造プロセスを化石燃料に依存しないものにしたいと考えています。これからもこのイノベーションへの投資を続けていきます」と述べています。

鉄の粉は、クリーンエネルギーの燃料として比較的安価であり、エネルギー密度が高く、貯蔵に場所をとらず、輸送も容易だという利点があります。また燃焼温度が高いことや、水素のように極低温の冷却が不要なこと、そして長期の保存によってエネルギーが失われないこともポイントとのこと。なお、2018年の論文によると、鉄粉による循環型エネルギーシステムの効率は、理論的には40%ほどに達するとみられています。



SOLIDを率いるChan Botter氏は、産業レベルで初めてシステムが利用されたことを喜びながらも、これにとどまらず、「技術を向上させ1MWのシステムを実現させるためのフォローアップをすでに開始しており、2024年には10MWのシステムを準備すべく計画を進めています。目標は2030年までに化石燃料の発電所を持続可能な鉄粉の発電所に置き換えることです」とコメントしました。