ドコモショップの「完全予約制」は本当に満足度の向上になるのか? それぞれの思惑と懸念点

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NTTドコモは「ドコモショップ」において、2019年中に「完全予約制」を取り入れると報じられています。

ドコモショップに限らず、携帯電話のショップは、
・いつ行っても1時間以上待たされる
・「混雑した場所」
といったイメージを強く持っている人も多いでしょう。

こうした混雑に嫌気がさして別の携帯電話会社にのりかえた。
そんな話をする人もいるくらいです。

当然NTTドコモとしても「お客様満足度」を向上させる必要があります。
ショップ受付を「完全予約制」にすれば、利用者は待つことなく、相談やサポートが受けられます。

NTTドコモが「完全予約制」に踏み切るのはひとつの選択肢としてはありなのかもしれません。

ですが、本当に「完全予約制」は満足度向上に繋がるのでしょうか?


○急な「困った」が解決しなくなる?




携帯電話のショップに行く理由は様々ですが、多くの人は
・料金の支払い
・プランの変更
・修理の相談
・機種の買い替え
などが主でしょう。




スマートフォンが普及して
・データ容量
・通話プラン
これらの仕組みは大きく変化しました。

現在NTTドコモが推している「家族とデータ容量をシェアする」プランの場合は、契約したデータ容量を家族全員で使います。
このため、このプランが自分にとって最適なプランなのか?
といった判断は難しく、ショップでのプラン変更の相談も難しくなるといった面もでてきます。

また現在は、電気通信事業法の改正により機種の購入時に、
・二年契約
・分割払い
・購入補助割引
こうした複雑な仕組みについて、以前よりも説明をキチンと行うことが指導、徹底されています。このため、一回の手続きにかかる時間は、以前に比べて倍以上かかってしまうケースも増えています。

もちろん、こうした対応の徹底は、利用者側のメリットも多く、しっかり確認と理解できるケースも増え、以前よりお得に購入できること多くなります。

しかしショップの利用時間でみれば、一人の手続きにかかる時間が長くなってしまいます。
待つ人にとっては、待ち時間が延びて満足度が下がることになってしまいます。

「完全予約制」になれば、ショップ側も、来店する利用者側も
・予約した時間に出向く
・○○の手続きを準備しておける
など、待ち時間に関しては、確かに減るでしょう。

ですが、完全予約制になることで、ショップの利便性・手軽さが損なわれる可能性もあるのです。

例えば「故障による修理の相談」です。




スマートフォンになってからは、故障してしまうと「何もかもが使えない」といったケースが増えています。
もし筆者がスマートフォンを壊したと想定すると、
・普段の連絡をLINEに集約しているので音信不通になる
・銀行のパスワードカードアプリが使えない
・交通系ICカードをはじめ電子マネーが使えない
このように、普段の生活に支障をきたす可能性が大きくなります。

故障・修理は、
料金プランの相談や使い方相談などとは違い、突然、発生します。
「予定を決めてショップに行けばいい」
というわけにはいきません。

・ある日突然、壊れた。
・慌ててショップに駆け込む
というケースが多いことでしょう。

「完全予約制」となった場合、
こうした緊急のトラブルにショップがどこまで対応してくれるのか?
この対応次第で、満足度は大きく変わってしまいます。

現段階では
「完全予約制でも、特定の時間帯や要件は当日でも受付をする」
といったアナウンスされていますが、果たして
・どの時間帯なら当日でも受け付けてくれるのか
・どんな相談、手続きなら当日でも受け付けてくれるのか
など、内容や詳細は不明です。

もし当日対応の時間帯が、故障やトラブルに遭遇した時間と合わなかった場合は、満足度の大幅な低下は避けられないでしょう。


○完全予約制は、ショップも苦しめる?
利用者からすれば待ち時間は苦痛です。
しかし、それはショップスタッフにとっても苦痛なのです。
ショップスタッフにも、
・多くの人に待って頂いているという負い目
・できるだけ対応を早くしようと焦る
など、ストレスやプレッシャーになります。
できるだけ待たせずに手続きを数多くこなせた方が、お互いに気持ちのいい仕事になるのは間違いありません。

そう考えると、待ち時間のない完全予約制はお客様もスタッフも今よりも満足度の高い仕組みになると考えられますが、実際のところそうでない可能性も大きいのです。

というのも、ショップには
・販売した携帯電話の台数
以外に
・オプションサービスを獲得した数
・受付を行った件数
など、複数のノルマが存在しているからです。

例えば、完全予約制で「この日に20組までのお客様の手続きを行う」となれば、
販売台数や獲得できるオプションサービスの数も減り、結果お店の利益は減ってしまい、最悪の場合、そのお店を閉じることにもなりかねません。

もちろん、こうしたショップを営業するための仕組みも「完全予約制」の導入に前後して改編されるとは思います。
しかし、ショップの成績を上げるためには、「完全予約制」だけでなく、来客者の受付を行う営業活動を、今まで以上に行う必要が発生する可能性も否定できません。


少々ネガティブな見方をすれば、完全予約制は、
「利用者」「ショップ」のどちらも幸せにならない変化になる可能性もあるかもしれません。

携帯電話会社にとって、ショップにかかるアフターケアのコストや負担が大きいことは間違いありません。本当に必要があってショップに来店する利用者以外のサポートコストは削減したいというのもあるでしょう。

もっとも最近では、ネットや電話で手続きが行えることも多くなっており、緊急なトラブル以外はショップに行かなくてもネットで対処する時代になるのかもしれません。

とはいえ、現在は、まだ過渡期。
こうした流れは今後、他社にも波及する可能性は大いに考えられます。
スマートフォンや携帯電話のサポートについては注視していく必要があるといえるでしょう。


迎 悟