駆け込み乗車はどう対応すべきか(写真は記事と関係がありません)

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駆け込み乗車しようとした乗客男性から寄せられた「なぜ乗せなかったのか」とのクレームについて、関東地方の路線バス運転士がその理由をツイッター上で説明して、大きな反響を呼んでいる。

「わかっていながら乗せないとはどういう事だ。説明しろ」。クレームなどの受付簿には、生々しい乗客の声が手書きでつづられていた。

会社側は「人情としては乗せてあげなよ」と言ったが...

この受付簿の写真は、関東地方のバス会社に勤務する「社会不適合者の路線バス運転士」さんが2018年10月18日、ツイッター上に投稿した。

今回のクレーム主は、前日夜のバスに乗ろうとしたところ、直前でバスの中ほどにあるドアを閉められ、すぐに前の方のドアをトントンと叩いた。しかし、運転士に無視されて、バスはそのまま発車していったという。クレーム主のほか、もう1人の乗客も乗れなかったとしている。

これに対し、運転士は、次のように受付簿上で弁明した。

「発車時間になったので、外マイクで案内し、中ドアの扉挟み注意しながらドアを閉めたので、前ドアは見ていない。そもそも、動き始めたバスを故意に停止させようとする行為は『威力業務妨害』であり、今後『動いたバスをたたけば乗れる』と思われると困るので乗せなかった」

運転士のツイートによると、会社の運行管理者に「弁明を書いて」と言われて記入したが、この運行管理者からは、「この手の客は乗せなければ何度でも言ってくるし、人情としては乗せてあげなよ」と言われたという。

これに対し、運転士は、「『人情として乗せてあげてる』ことを理解してるのら乗せますよ...理解してないでしょ? あれやれ!これやれ!で事故防止を運転士に押し付けるのは無理がある!」と不満をぶつけている。

ツイートした運転士は、クレーム主に対しても、「『ちょっとぐらい...』で自分が迷惑をかけてることを自覚すべきですね」と戒めた。

クレーム恐れる会社...成り手不足の原因にも

受付簿の写真投稿は、10月23日正午現在で、「いいね」が1万件以上も寄せられている。

運転士への共感の声は多く、「駆け込み乗車が許されたら、言えば何とかなるとつけあがる」「事故に繋がるので乗せなくていい」「こういう人達がいっぱいいるからバスは遅れる」「バスを安全に運行することが運転士の仕事で 苦情を収めお客に理解していただくのは会社の仕事」といった反応があった。

一方で、「いつも乗るバスのほとんどの運転手さんは、走っていくと10秒くらいは待ってくれます」「1時間に1本以下なら、1分くらいは待ってあげてもいい」との意見も出ていた。

投稿者の「社会不適合者の路線バス運転士」さんは、J-CASTニュースの取材に対し、23日までに当日の状況について説明した。

それによると、ドアが閉まるときには、中ドア付近に誰もいなかったといい、クレーム主は、動き始めたバスの前ドアを叩いてきたそうだ。

駆け込み乗車を待つか待たないかについては、「明確な基準がある訳ではないので『運転士の裁量による』としか言いようがありません」という。運転士自身は、本数が少ない路線であったり、ダイヤ的に余裕があったりしたときなどは、融通を利かせるとした。

ただ、運転士は、バス停で待っている乗客のことを考え、「できるだけ定時運転を心がけています」とする。駆け込み乗車をしようとした乗客が運転士に気付かれず、死亡事故に発展したケースも聞いているとして、こう訴えた。

「そう言った事故が数多く存在していることを事業者は知りつつクレームを恐れ、事故防止を運転士の自助努力に任せているのが多いのが現状だと思います。バス運転士の成り手不足・離職率の高さが問題になっていますが、長時間労働・低賃金の他にクレームも大きな要因であると思います」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)