レオナルド・ダ・ヴィンチによって描かれた「モナ・リザ」で謎めいた笑みを浮かべる女性は、旧家であるゲラルディーニ家の女性、リザ・デル・ジョコンドだといわれています。Mayo Clinic Proceedingsで医師が発表した内容によると、モナ・リザの謎めいた雰囲気は、甲状腺機能低下症によるものだという可能性があるとのこと。

The Mona Lisa Decrypted: Allure of an Imperfect Reality - Mayo Clinic Proceedings

https://www.mayoclinicproceedings.org/article/S0025-6196(18)30579-2/fulltext

The 'Mona Lisa' Allure: Could It Be the Result of Thyroid Disease?

https://www.livescience.com/63526-mona-lisa-thyroid-disease.html

ダ・ヴィンチは、ゲラルディーニ家のフランチェスコ・デル・ジョコンドが出産を終えた妻の絵を描いて欲しいと依頼したことを受けて、1503年ごろからモナ・リザを描き始めました。

過去にも、絵のモデルであるリザは遺伝性疾患の1つである家族性高コレステロール血症を患っていたのではないか?と考える論文が発表されたことがありました。モナ・リザに見られる皮膚疾患や右手の肥大といった症状は家族性高コレステロール血症の症状の1つです。



しかし、歴史上、リザは63歳まで生きていたと考えられており、当時の限られた治療では家族性高コレステロール血症の患者が高齢まで生きられたとは考えられにくいことから、論文の著者である心臓専門医のMandeep Mehra氏と共著者のHilary Campbell氏は別の可能性を考えました。

2人の研究者が示した可能性は、リザが甲状腺機能低下症だったということ。甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの分泌量が不十分になり、代謝に影響を与えるもので、疲労・体重増加・肌の乾燥・筋力低下・関節の痛みや腫れ・髪の量の減少・高脂血症といった症状が現れます。また、肌が黄色くなったり、甲状腺腫、甲状腺の肥大がみられることも。



モナ・リザで描かれている女性は肌が黄みがかっており、髪は生え際が後退し薄くなっていて、眉が消え、喉が肥大しています。これらの症状は甲状腺機能低下症のものと一致します。また、絵が描き始められる数カ月前にリザは出産を終えていますが、出産は甲状腺機能低下の原因となり得るとのこと。満面の笑みではなく、薄いほほ笑みを浮かべているのも、筋力低下や運動能力の低下によるものの可能性があると、研究者はみています。

もちろん、実際にリザが甲状腺機能低下症だったのかどうかを知ることはできません。肌が黄みがかっているのは、絵の劣化が理由である可能性もあります。ダ・ヴィンチは実験的な絵画技法「スフマート」を作り出したといわれており、ほほ笑みはスフマートが作り出した陰影の結果ともいわれています。「我々の理論は妥当性のある多数の説明の1つであり、それぞれの理論は個人的・集団的バイアスがあることを認めなければいけない」と研究者は述べました。