オーストラリア代表から引退したティム・ケーヒルに、同国サッカー連盟が引退試合を用意したそうだ。11月20日にホームで行われるレバノン戦に、ケーヒルが出場するという。

 このニュースに触れて、すぐに考えたのが長谷部誠だった。

 ロシアW杯から帰国したタイミングで、彼は西野朗監督と会見に臨んだ。その席で別れの挨拶をしている。しかし、ワールドカップに3度出場し、長くキャプテンを務めた35歳は、紛れもない功労者である。その実績にふさわしい舞台を、用意するべきではないだろうか。

 ロシアW杯前最後のテストマッチだったパラグアイ戦は、日本代表だけでなく対戦相手にも意味を持っていた。GKフスト・ビジャールの代表引退試合だったのである。

 41歳の守護神はスタメンに名を連ね、前半10分過ぎまでプレーした。フジャールがピッチを去る瞬間には、日本の選手たちも拍手で送り出した。10年の南アフリカW杯で対戦した者同士の労いがあったのだろう。

 これまで日本では、代表引退試合がほぼ行われてこなかった。クラブレベルではプレーを続けていく選手が多く、まだ現役の選手に「引退試合」を用意することに抵抗感があったからかもしれない。

 長谷部は自らの口で区切りを明かした。そして、彼は日本代表の歴史でも特別な存在である。その功績に見合った送り出し方が、きっとあるはずだと思う。

 森保一監督が率いる日本代表は、10月、11月にも国内でテストマッチを行なう。たとえば、10月16日のウルグアイ戦はどうだろう。

 この試合が開催されるさいたまスタジアムは、日本代表の聖地と言っていい。かつて浦和レッズでプレーしたことを加味しても、長谷部にとって思い出深いスタジアムに違いない。
 
 来年1月のアジアカップに向けて、森保監督の日本代表は強化を図っている。9月7日からスタートするキリンチャレンジカップの6連戦は、ひとつも無駄にできないものだ。
 
 だからこそ、このタイミングで長谷部を送り出す意味はある。
 
 これから代表に定着していこうという選手たちが、長谷部に代わって代表を引っ張っていくべき選手たちが、代表選手としての誇りと責任を強く自覚する機会になるからだ。長谷部の代表引退試合は、歴史をつないでいく瞬間になると思うのである。

 何よりも、日本代表のために100試合以上も戦ってくれた長谷部の雄姿を、国内で見たいと願うファン・サポーターは多いだろう。ピッチ上で、プレーで、最後の挨拶をする機会を得られれば、彼にも断る理由はないと思う。代表引退試合という文化が、日本にも根づいていってほしいと願う。