ハート型のスマホも可能!シャープ「AQUOS R Compact」が変えるスマホの未来とは

AQUOS R Compactは通信事業者向けとして発表され、現在ソフトバンクが取り扱うことが発表されている発売は12月下旬の予定だ。
今回発表となったAQUOS R Compactは、4.9インチ「フルHD+(1080×2032ドット)」の「ハイスピードIGZO液晶ディスプレイ」を搭載する。フルHD(1080×1920ドット)より長辺が伸びたディスプレイは、フィーチャーフォンが表示領域をVGA(480×640ドット)からWVGA(480×800ドット)に拡大し使い勝手を良くしたころを思いだす。
こうした新しいデバイスの投入に我々はワクワクしてきた。
そして少し前を振り返ってみると、シャープはスマートフォン初期に裸眼3D液晶を搭載し、同時に3D静止画・動画撮影用のデュアルカメラを搭載するなど”攻め”たモデルを世に送り出してきた。
AQUOS R Compactも、シャープが”攻め”の姿勢を見せたモデルであるという。
それは、これまでのフルHD+解像度のディスプレイが起こすイノベーションではない。

このIGZOディスプレイの肝となる部分は、車載用のディスプレイはじめとする様々なデバイス向けとして開発が発表された「フリーフォームディスプレイ(FFD:Free Form Display)」だ。
一般的な液晶ディスプレイの周りには下部のソースドライバICとパネル左右のゲートドライバーで構成されている。これがいわゆる余白となる。
そのため狭額縁化するには限界があった。
シャープはこの左右のゲートドライバーを表示領域に分散配置することで、左右の余白をなくすことに成功し、三辺狭額縁を実現したのだ。
さらにゲートドライバーの分散配置によって、様々な形状にカットしても表示が行えるようになったという。

スマートフォンデザインのなかでコンパクト化という要素も重要視され、液晶を得意とするシャープはこの三辺狭額縁を前面に押し出した「EDGEST」ディスプレイ搭載スマートフォンを世に送り出した。ところが2015年のモデルを最後に後継機は登場することはなかった。
この三辺狭額縁デザインは、まるでディスプレイだけを持っているかのような、画面と景色が一体化して見せることができるイノベーションがあった。
しかし、それによってインカメラを下部に配置することとなった。
いわゆる自撮りのアングルが、一般的なスマートフォンと異なるため、不満の声も多かったのだ。

そこでAQUOS R Compactでは、インカメラの問題点をフリーフォームディスプレイで解決している。
具体的には、画面上部にインカメラを配置するため円形にカットし、そこにカメラモジュールを組み込んでいるのだ。こうすることで三辺狭額縁デザインと、インカメラが共存するシャープが理想とするスマートフォンとなったわけだ。
なお、インカメラのモジュールはシャープ独自のものでAQUOS R Compactのために丸いカメラモジュールを作成したのだという。組み込み用のカメラモジュールでは、フリーフォームディスプレイをここまで小さくカットすることはできないとのことだ。
さらに、フリーフォームディスプレイの利点を活かし、上部の角を丸く落としてラウンドした狭額縁を実現しているのだ。
画面上でカットされた領域の影響が気になるところだろう。
実は、このカメラ部分と角を落とすために丸くカットされた領域は、フルHD解像度の外側なのだ。
そのため、アプリなどの表示や操作感が損なわれることはない。
ある意味、こうした問題の解決を積み重ねたことで、この解像度になったのではないかと思われる。
こうしてAQUOS R Compactは、丸くて親しみやすいコンパクトなスマートフォンとなった。
そしてフリーフォームディスプレイがキーデバイスとなった新しいモデルを生み出すことに成功したわけだ。

さて、AQUOS R Compactは、インカメラは画面内に収まることでカメラ目線も自然に行えるようになったわけだが、一方でインカメラを使用しないユーザーにとって画面を塞いでここまで主張されるとデメリットと感じる向きもあるだろう。
こうした意見は社内でもあったと思われるが、それでも製品化する理由はやはり液晶のシャープとしての技術力をアピールすることにあるのだろう。
スマートフォンのデザインは四角いディスプレイがまずあり、そこに肉付け的なデザインを当てはめていくとどうしても画一的な形状になってしまう。

しかしシャープのフリーフォームディスプレイなら、丸いスマートフォンやハート型のスマートフォンをデザインすることも可能となるだろう。
スマートフォンでは、ハイスペックなモデルや多機能なモデルを望まないユーザーにとっては、「価格」と「デザイン」が重要だ。
もし、フリーフォームディスプレイによる「画期的なデザイン」や「カラー」のモデルが存在すれば、ユーザーの大きな訴求力となり、好んで選ぶ選択肢となるだろう。
フリーフォームディスプレイは、スマートフォンを、デザインがより重視される新しい世界への扉を開き、導いていくのだと思う。
執筆 mi2_303