「そうめん」と「ひやむぎ」はどう違う?
■「そうめん」「ひやむぎ」はどう違う?
両者の違いといえば、まずは太さ。基本的にはそうめんのほうが細い。JAS規格では、乾麺の太さは、そうめんが長径1.3mm未満、ひやむぎが1.3mm以上1.7mm未満と定義される。ただし手延べの場合、1.7mm未満であれば、どちらの名前で呼んでもOK。これは、徳島の半田そうめんのように、通常より太くても、古くからそうめんと呼んできたものに配慮したためだ。
また、そうめんの断面は角がなく、ひやむぎは四角いという違いがある。これは、そうめんは生地によりをかけてのばす手延べ製麺が多いのに対し、ひやむぎは機械製麺が多いから。機械製麺はのばした生地を細く切る切り麺式でつくるため角ができる。ただ、断面が四角い機械製麺のそうめんもあれば、そうめん同様につくられる手延べひやむぎもあり、決定的な違いではない。
ほかに、どちらかといえばそうめんはつるっとした喉ごし、ひやむぎはもちもちとした食感という違いはあれど、材料は基本的に同じ。では、なぜ2つを区別するのか。
もともとそうめんは手延べ式、ひやむぎは切り麺式という成り立ちの違いがある。ちなみに切り麺は切麦(きりむぎ)と呼ばれて室町時代に普及し、ゆでて熱いまま食べるのは熱麦(あつむぎ)、冷やしたのは冷麦(ひやむぎ)、汁に入れるのは温飩(うんとん。のちのうどん)と言った。だが戦後に機械製麺が普及すると明確な違いが太さだけになってしまった。ピンクや緑の色麺が入るひやむぎが時々あるが、これは機械化にあたってそうめんと見分けるために入れたのが始まりのようだ。
■いつものそうめん、手延べ製麺? 機械製麺?
手延べそうめんは特別な高級品だと思うかもしれないが、農林水産省の調査によると、そうめん生産量のうち、手延べ製麺が占める割合は55%と、実は機械製麺よりも高い(平成21年度)。私たちは意外と日常的に手延べそうめんを食べているのだ。
手延べ製麺がおいしいとされるのは、のばした生地を細く切るだけの機械製麺と違い、紐状の生地を熟成させながらよりをかけて少しずつ引きのばしていくため。これにより麺のコシを生み出すグルテンの結びつきが強くなり、ゆでのびしにくく、なめらかでぷりっとした歯ごたえに仕上がる。今では工程の大部分が機械化されているが、やっていることは昔の手作業と変わらない。
わが家のそうめんがどちらであるか知りたければ、原材料欄の名称を確認してみよう。手延べ製麺なら「手延べそうめん」、機械製麺なら「そうめん」とだけ記されている。また、原材料に食用油が含まれているのも手延べ製麺の特徴。のばすときに表面の乾燥を防ぎ、麺同士がくっつかないようにするために必ず油を薄く塗るからだ。
たまにパッケージに「厄(やく)」と書かれたものがあるが、厄とは梅雨の時季を越しておいしくなる変化のこと。湿気を吸って出すことで麺のコシがさらに増すとされる。ただ同時にカビや虫もつきやすく、厄介だからこの名がついた。
手延べ製麺はだいたい乾燥した冬につくったものをねかせ、梅雨を越して出荷される。さらに1年置いて梅雨を2回越したものが古物(ひねもの)、3回越したものが大古物(おおひねもの)だ。そうめんは古いほうがおいしいと言われるのはこのためだが、保管状態が悪いと風味が落ちるので、古ければいいというものでもないのだ。
■「三輪そうめん」「揖保乃糸」。2大ブランドを紐解く
そうめんの産地は西日本に多い。良質の小麦がとれ、降雪のない比較的温暖な気候がそうめんづくりに適しているからだ。なかでも奈良県三輪地方の「三輪そうめん」と兵庫県播州地方の「揖保乃糸」は全国的に有名な手延べそうめんのブランドだ。
三輪そうめんは、歴史の古さでは日本一。現在は、奈良県三輪素麺工業協同組合が統一規格のもとで扱うものと、三輪地方の生産者が個別につくるものの両方が流通している。組合製品に使われる鳥居のマークは、奈良時代に三輪山の麓にある大神神社の12代宮司の次男・穀主が、そうめんの原型をつくったという伝説にちなんでいる。
そうめんのルーツは奈良時代に唐から伝来した、小麦粉ともち米を使った索餅(さくべい)だとされる。ただし索餅は縄状にねじった唐菓子の一つとする説と、紐状に乾燥させた麺との説があり、決着がついていない。確かなのは、室町時代には三輪で現在のような細いそうめんがつくられており、その技術が各地に伝播したことだ。
一方、揖保乃糸は全国の手延べそうめんのシェア第1位。江戸時代後期から産地化が進み、1906(明治39)年には、兵庫県手延素麺協同組合が「揖保乃糸」を商標登録。組合が独自にブレンドした小麦粉を使い、統一規格製品を販売している。
どちらも特徴は麺の細さ。細くなるほど手間と時間がかかるため、細さは高品質の証だ。さらに黒や赤など帯の色の違いはそれぞれ等級を表している。揖保乃糸で最もポピュラーなのは生産量の85%を占める赤帯。帯ごとに食べ比べても楽しい。
(文・澁川祐子)
