その中で今回、指揮官のお眼鏡にかなったと見られる選手が数人いる。その一番手が、U−22日本代表キャプテンの遠藤航(湘南ベルマーレ)だろう。

 初戦、2戦目は「経験がない」と話していた右サイドバックで起用され、朝鮮民主主義人民共和国代表との初戦ではオーバーラップからの右クロスで武藤雄樹(浦和レッズ)の先制点をアシスト。所属の湘南では3バックの右ストッパーとして守備に安定感をもたらし、果敢な攻撃参加でチームにアクセントを加えているが、その持ち味を存分に発揮した形だ。また、最終戦はU−22日本代表と同じボランチに入り、バランスを取りながら的確な寄せとボールさばきを見せている。球際の強さや粘り強い守備、素早い攻守の切り替えは、まさにハリルホジッチ監督が求めていたもの。そして彼がJリーグで体現していたプレーでもある。複数ポジションで3試合にフル出場して指揮官の期待に応えた点で、今大会最大の発見と言っていい。現在、日本代表の右サイドバックでは内田篤人(シャルケ/ドイツ)が負傷離脱しており、酒井高徳(ハンブルガーSV/ドイツ)と酒井宏樹(ハノーファー/ドイツ)と比較しても安定感に長ける部分があっただけに、一気にレギュラー争いに加わってきてもおかしくはない。

 その他にもトップ下を中心に攻撃面で万能性を披露して2ゴールで大会得点王になった武藤、複数の攻撃的ポジションで巧みなテクニックを見せた倉田秋(ガンバ大阪)、ボランチで的確な潰しと正確なキックを見せた藤田直之(サガン鳥栖)は自分の持ち味を出せていた。彼らのポジションは日本代表でも最激戦区であり、スペシャルな部分を身につける必要はあるが、選手層の底上げと競争という部分を考えれば今後の招集も十分にあり得るだろう。

 また、中国代表との3戦目に突然、左サイドバックで起用されながら、フィジカルとメンタルの強さ、攻撃センスを披露した米倉恒貴(ガンバ大阪)は極めてポジティブな発見だった。右サイドバックが本職だが、左右での起用にメドが立ったように思われる。自身も「攻撃で違いを見せたかった」と話し、武藤のゴールをアシストしたことで攻撃性が強調されがちだが、ディフェンスでの球際の厳しさと粘り強さを見せていた。本人も「一対一の強さは自分のウリでもあるので」と守備面の手応えを話しており、当初から活躍が期待された遠藤に対して、今大会一番のサプライズだったと言えるかもしれない。

 そしてボランチとして3試合にフル出場し、ダイナモのごとく別格の動きを見せた山口蛍(セレッソ大阪)は改めてレギュラー争いに名乗りを上げた。J2所属ということもあり大会開幕がリーグ戦から一週間空いたことが後押ししたかもしれないが、初戦でチームメートがスタミナ切れを起こしてペースダウンする中で終盤まで運動量を落とすことなくプレー。初戦後には「僕個人としては最後でも前から行ける体力はありましたけど、周りとの兼ね合いもあるし、一人だけで行ってもというところもあるから」と周りに合わせたことを示唆するほどで、3試合すべてで攻守に高いパフォーマンスを披露。守備面だけでなく攻撃のリズムを変えるダイレクトパスや縦パスを狙い、韓国戦では強烈なミドルシュートを突き刺すなど指揮官の要求にしっかりと応えていた。これまでの招集メンバーからも収穫があったのは、指揮官としてもうれしいところだろう。

 大会後に「何人かは努力が必要」としたハリルホジッチ監督だが、本音では選手個々とJリーグ全体のレベルアップを求めていると見ている。大会前に「メンタルを見たい」と語った指揮官は、今大会を通じて選手たちに「世界と戦えるフィジカルを」と要求していた。そこに彼の本心が見え隠れする。この思いを国内組の選手たちに強調できたことが、2つ目のポジティブな要素だ。