今や貴重な選手の供給源。高まる独立リーグの存在価値
現在、日本にはNPB(日本プロ野球機構)の他に、2005年に設立された四国アイランドリーグplus(現在4球団)と、2006年に設立されたルートインBCリーグ(現在8球団)がプロリーグとして存在している。
今シーズン、この独立リーグがにぎやかなことになっている。ロッテで活躍した「名助っ人」フリオ・フランコがBCリーグの石川ミリオンダラーズに、近鉄や巨人などNPB通算464本塁打を放ったタフィ・ローズも同リーグの富山GRNサンダーバーズに指導者兼選手として現役復帰を果たした。また、昨年ヤクルトを退団した岩村明憲は監督兼選手としてBCリーグの新球団・福島ホープスに入団し、アメリカから帰国した藤川球児は四国アイランドリーグの高知ファイティングドッグス入りを表明した。
一方、BCリーグに所属していたフランシスコ・カラバイヨはオリックスと契約を果たし、ミッチ・デニングは緊急補強としてヤクルトに途中入団。ともに期待以上の活躍を見せている。
独立リーグの現状について、デニングが語る。デニングは2013年から新潟アルビレックスBCでプレイしていた。
「独立リーグのほとんどの選手が、自分もそうだったように、いつかNPBでプレイしたと思って、練習に励んでいます。逆に、NPBを自由契約となり、野球を続ける環境を失った選手が独立リーグでプレイするようになった。それらの要因が重なり、今こうして選手が行き来できているんだと思います」
デニングが話すように、独立リーグの最大の目的はNPBへ選手を供給することだ。独立リーグから初めてNPBのプロ野球選手が誕生したのは2005年のことで、西山道隆がソフトバンク、中谷翼が広島にそれぞれ育成ドラフトで指名され入団した。2006年には深沢和帆がドラフト5位で巨人に指名を受け、独立リーグ初のNPB支配下登録選手となった。2013年のドラフトでは又吉克樹が過去最高となるドラフト2位で中日に入団。昨年のドラフトでも育成を含め、5人の選手がNPBから指名を受けた。これまで独立リーグからドラフトにかかり入団した選手は育成も含め60人。ちなみに、今シーズンは18人が支配下登録され、4人が育成選手としてプレイしている。
6月5日、神宮球場。ヤクルト対ロッテの交流戦の試合前、球場入りした角中勝也(ロッテ)は練習をしていた三輪正義(ヤクルト)のもとへ駆け寄っていった。
「チームは違いましたが、1年間同じ独立リーグでプレイしましたからね。身近に感じないといえば嘘になります」(三輪)
角中は四国アイランドリーグの高知ファイティングドッグスでプレイし、2006年のドラフトでロッテから7位で指名され入団。三輪は同じく四国アイランドリーグの香川オリーブガイナーズから2007年のドラフトでヤクルトから7位指名を受けた。
プロ入り後、角中は2012年に首位打者とベストナインを獲得。2013年に行なわれた第3回WBCの日本代表にも選出されるなど、独立リーグ出身選手の中で最大の成功者となった。一方、三輪もレギュラー獲得には至っていないが、ユーティリティプレイヤーとして長くチームに貢献している。このふたりに独立リーグの存在について聞いてみた。
三輪は「独立リーグがなかったら、間違いなく僕はここにいないです」と言い、こう続けた。
「僕はNPBの選手になりたくて、独立リーグに入ったわけじゃありません。NPBなんて夢のまた夢でしたから。ただ、野球がやりたかっただけなんです。それまでは軟式野球をやっていましたし、満足に野球に打ち込める環境ではなかった。独立リーグで野球ができるだけでもありがたかったです」
角中は「高校卒業後、自分の選択肢に大学進学はなかったですし、(四国アイランドリーグの)トライアウトがあることを知って、じゃあ受けてみよう」と、独立リーグ入りへの経緯を語った。目指す先はNPBだったと言うが、当時、独立リーグからNPB入りするのは容易ではなかったはずだ。当時の主食はハンバーガーと牛丼だった話は有名で、プロを目指す環境としては厳しかったのではないか。
「2005年に育成選手としてふたりNPBに入っているので、可能性はゼロではないと。やっている時は別に厳しいとか辛いとか思わなかったですよ。野球だけやってお金をもらえるんですから。もちろん贅沢はできないし、貯金も増やせなかったですけど、野球に打ち込める環境だったと思います」
何より、独立リーグは元NPBの選手が監督やコーチをしており、彼らから技術を学べるのは大きかったという。
「バントシフトの動きだったり、プロに入ってから『こういう動きやっていたなあ』とか思い出すことがありますし、いい経験でしたね」(三輪)
「アマチュアとは違う考え方なので、教えてもらうことのひとつひとつが新鮮でしたね。僕が在籍していた時は、元プロは監督やコーチだけでしたけど、最近は選手としてもプレイしているので、NPBを目指す選手にとってマイナスなことはないと思います」(角中)
今シーズン、独立リーグでプレイしている元NPBの選手は、外国人を含めると28人。その中には、大家友和(富山GRNサンダーバーズ/元横浜、レッドソックスなど)、河原純一(愛媛マンダリンパイレーツ/元巨人、西武など)、真田裕貴(福島ホープス/元巨人、ヤクルトなど)、多田野数人(石川ミリオンスターズ/元インディアンス、日本ハムなど)、ソト(群馬ダイヤモンドペガサス/元中日、DeNA)といった選手の名前もある。これからNPBを目指す若い選手にとって、彼らとの対戦は大きな経験になるのではないか。
「藤川球児さんのボールを打ったからといってNPBに入れるわけじゃないですけど、NPBで活躍した選手はいろんな経験値を持っています。それをうまく吸収できれば、より高いレベルの野球ができると思いますし、可能性も広がってくると思うんです。あと、NPBにいた投手からヒットを打てば、それだけでアピールにはなりますよね」(三輪)
また現在、独立リーグでは40人もの外国人選手がプレイしている。デニングが日本に来た理由について語ってくれた。ちなみに、デニングは2005年に16歳の若さでレッドソックスに入団したが、一度もメジャーに昇格することなく2011年に自由契約となり、アメリカ独立リーグなどを経て、2013年に来日した。
「レッドソックスをリリース(解雇)されて、アメリカにある独立リーグの球団に所属したけど、2週間ほどで辞めました。アメリカの場合、独立リーグでいくら結果を残しても契約の関係があって、メジャーでプレイするのは簡単ではありません。逆に日本では独立リーグをステップにNPBから声が掛かれば、簡単に移籍することができる。日本の方が、自分のやりたいことを早くできると思ったんです」
そしてデニングは、外国人選手と独立リーグとNPBの関係について、こんな持論を述べた。
「毎年、外国人選手はメジャーや2A、3Aからすぐに日本に来るので、成功しない選手の方が多いと考えています。僕の場合は独立リーグではあるけれど、日本の野球を2年間経験して学ぶことができました。それは今後に役立つと思っています。今後、カラバイヨや僕が活躍することで独立リーグのレベルの高さを証明して、NPBのチームが『独立リーグから外国人選手を獲得すればいいんじゃないか』という流れになると嬉しいですよね」
NPBのある球団のスカウトは次のように語る。
「設立当初は、二軍でできるかなという選手が数人いるだけでしたが、今はドラフト上位で指名される選手もいるし、即一軍で通用する選手もいます。昔はアマチュア選手を見るついでに行っていたのですが、今では頻繁に通うようになりました。転機となったのは角中の存在だと思います。彼が一軍でプレイするだけでなく、首位打者を獲得した。そういう選手が出てくるということは、独立リーグ全体のレベルが上がっているという証拠なんです。それに近年は、NPBで一流の成績を残した選手が行くようになり、より高いレベルの野球が浸透してきたと思います。独立リーグができて10年経ちましたが、いちばん変わったのは我々の見る目です。必ずいい選手がいると、確信を持っています」
そして角中は、独立リーグのこれからについてこう語る。
「あとに続いてきてほしいというか、正直、自分もまだまだなので、そこまで考える余裕はないんですが......今年は中日の亀沢恭平(香川オリーブガイナーズ出身)も頑張っているので、お互い高めあっていければと思っています。それに最近はNPBとの交流もありますし、少しずつ環境も良くなっていると思います。その中で独立リーグからどんどんNPBに来て活躍してほしいですね。そうなれば独立リーグの人気も上がってくると思いますし、日本全国で野球が盛り上がることになるじゃないですか」
独立リーグの経営はどこも厳しいと聞くが、「NPBのない町で野球を見せてくれる」「野球を続けたい人の受け皿になっている」など、存在意義は大きい。それだけでなく今や独立リーグは立派なNPBへの選手の供給源となっている。様々な意味でこれからの独立リーグには注目したい。
島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

