「ミサイル発射は金正日総書記の遺言。間違いなく強行される」元専属料理人が語る北朝鮮の思惑
北朝鮮が4月12日から16日の間に予告している「ミサイル発射」には、どのような思惑が隠されているのか。故金正日総書記の元専属料理人を2001年まで13年間務めた藤本健二氏は、2月の米朝交渉に反発する軍部の暴走とする説を一蹴、これは金正日総書記の決裁を受けたものだと断言する。
「ミサイル発射には大がかりな準備が必要で、事前準備に半年から1年以上かかります。発射は金正日総書記が亡くなる前に決まっていたと考えるべきなのです」
もともと、北朝鮮は故金日成主席の誕生100周年、金正日総書記の誕生70周年に当たる今年2012年を、「強盛大国への大門を開く年」にするとして、4月15日(故金日成主席の誕生日)に北朝鮮の国際的権威を高める大イベントを計画していた。「その大イベントこそが、極軌道で地球を周回する軍事スパイ衛星『光明星3号』の打ち上げだったのでしょう」(藤本氏)というわけだ。
「北極から南極にかけて周回するわけですから、北朝鮮は北半球から南半球まで、すべての国を監視することが可能となる。これまで、北朝鮮はアメリカの衛星によって細かく偵察されてきました。そのため、金正日総書記は視認されにくい夜間を選んで移動していたほど。それが、これからは逆にアメリカ側の動きを偵察できるわけですから、これほど内外に政権の力をアピールできる材料はない。『北朝鮮は軍事的強国だ。アメリカにも負けることはない』と、大見えを切ることができるのです」(藤本氏)
米国などは「光明星3号」を“長距離ミサイル”として危険視、食糧支援中断などの制裁措置を発表している。しかし、これほどのリスクを犯しても、今回のミサイル発射は強行されると藤本氏は見る。
「ご存じのように、三男の正恩氏が後継者に決定しました。今回のミサイル発射はあらためてロイヤルファミリー内で権力継承がされたことを祝賀する一大号砲の性格も併せ持っているのです。しかも、金正日総書記が死去しただけに、若い後継者である正恩大将を支え、その権威を高めることが以前にも増して重要になっている。そのためにも、ますますミサイル発射を成功させることが要求されているわけで、国際社会がいくら自制を迫っても北朝鮮がそれに応じることはまずないでしょう」
金正日総書記の“遺言”によって発射されるミサイルだけに、自制を求める諸外国の声は北朝鮮の耳に入らないようだ。
(取材/姜誠、撮影/山形健司)
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