どんな食べ物を咀嚼すると「セロトニンの分泌」が増えやすい?医師が徹底解説!
セロトニンの分泌が増えるのは「柔らかいグミ」と「硬いおせんべい」どっち?メディカルドック監修医が咀嚼するとセロトニンの分泌が増える要因・どんな食べ物を咀嚼するとセロトニンの分泌が増えやすいのかなどを解説します。
監修医師:
関口 雅則(医師)
浜松医科大学医学部を卒業後、初期臨床研修を終了。その後、大学病院や市中病院で消化器内科医としてのキャリアを積み、現在に至る。内視鏡治療、炎症性腸疾患診療、消化管がんの化学療法を専門としている。消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、総合内科専門医。
「セロトニン」とは?

セロトニンは脳内で働く神経伝達物質のひとつで、精神の安定に深く関わる物質として知られています。必須アミノ酸のトリプトファンを材料に、体内で合成される神経伝達物質です。ドパミンやノルアドレナリンの働きを調整し、気分を整える役割を担っています。「幸せホルモン」とも呼ばれ、不足するとイライラや不安、抑うつ気分が現れやすくなる点が特徴と言えるでしょう。
セロトニンはどこから分泌されるの?

セロトニンの分泌部位は、脳と消化管の二か所に大きく分かれています。脳内では脳幹の縫線核という部位に集まる神経細胞から放出され、大脳皮質や視床下部など広い範囲に作用する仕組みです。一方、体内のセロトニンの約9割は腸など消化管の粘膜に存在しています。腸から血中へ放出されるセロトニンも、消化管の運動や全身の調節に役立つ存在です。ただし、腸で作られたセロトニンは血液脳関門を通過しないため、脳内のセロトニンとは別に働きます。
セロトニンの働き(役割)

セロトニンは脳内で多彩な働きを担い、心身のコンディションを支える神経伝達物質です。気分の安定だけでなく、目覚めの維持や痛みの感じ方、自律神経の調整、睡眠リズムの形成にも関わります。日常生活の土台となる物質と言えるでしょう。ここでは代表的な5つの働きを順に整理します。
精神の安定
セロトニンは喜びを伝えるドパミンや、緊張を高めるノルアドレナリンの働きを調整する物質です。これらの神経伝達物質のバランスが整うことで、気分の浮き沈みが抑えられ、落ち着いた状態を保ちやすくなります。分泌が低下すると不安や抑うつ、攻撃性の高まりにつながりやすいとされています。
覚醒と集中力の維持
朝に分泌が高まるセロトニンは、脳全体を目覚めさせて活動モードへ切り替えるスイッチの役割を果たす物質です。十分に分泌されると、頭がすっきりとして集中力が保たれやすくなります。逆に不足すると、起床時のだるさや日中のぼんやり感、注意力の低下などにつながる可能性が指摘されています。
自律神経のバランス調整
セロトニンは交感神経と副交感神経のバランスを整え、心拍や血圧、消化機能を安定させる働きを担う物質です。ストレスがかかると自律神経は乱れがちですが、セロトニンが十分に働くことでこの揺れが抑えられます。冷えや動悸、胃腸の不調といった不定愁訴の背景にも関係するとされる重要な存在と言えるでしょう。
痛みの抑制
セロトニンには、脳から脊髄へ下行する神経経路を通じて、末梢から伝わる痛み刺激の伝達を抑える働きがあります。慢性痛の治療薬として、セロトニンの再取り込みを抑える抗うつ薬が使われる場合もあるのは、この機能と関連した特徴です。十分な分泌は、日常的な不快感の感じ方を和らげる土台となります。
睡眠リズムの形成
日中に分泌されたセロトニンは、夜間に睡眠ホルモンであるメラトニンへと変換されます。メラトニンが増えることで自然な眠気が生じ、深い睡眠へ導かれる仕組みです。日中のセロトニンが不足すると夜間のメラトニンも減りやすくなります。寝つきの悪さや浅い眠りといった睡眠の質低下を招く点には注意したいところです。
咀嚼するとセロトニンの分泌が増えるのはどうして?

咀嚼は単なる消化活動ではなく、脳のセロトニン神経を活性化させる刺激にもなります。一定のリズムで顎を動かす反復動作が、ウォーキングや呼吸法と同じ仕組みで脳幹に働きかけるためです。ここでは、なぜ「噛むこと」がセロトニン分泌を増やすのか、3つの観点から整理します。
リズム運動として脳幹を刺激
セロトニン神経は、一定のリズムを繰り返す運動によって活性化される性質があります。歩行や呼吸法と並び、咀嚼も代表的なリズム運動のひとつです。一定の間隔で顎を動かすことが脳幹の縫線核を刺激し、神経活動を高めます。リズムが乱れると効果が落ちるため、テンポよく噛むことが鍵となる点は押さえておきたい部分です。
三叉神経を介した感覚入力
咀嚼運動は、顎を動かす筋肉の動きや歯根膜の感覚を、三叉神経を介して脳幹へ伝えていきます。この感覚入力が脳幹のセロトニン神経への刺激となり、神経活動の活性化につながる仕組みです。柔らかい食品では刺激量が乏しくなるため、ある程度噛みごたえのある食材のほうが、神経への信号を増やしやすい傾向にあります。
一定時間継続することで効果が高まりやすい
リズム運動によるセロトニン神経の活性化は、一定時間継続することで高まりやすいとされています。短時間では十分な効果が得られにくいため、ながら食べを避け、意識的に噛む時間を確保したいところです。ガムを20分ほど噛む方法も、手軽に実践できる選択肢となります。
セロトニンの分泌が増えるのは「柔らかいグミ」と「硬いおせんべい」どっち?

結論から言えば、セロトニン分泌をより促しやすいのは「硬いおせんべい」です。硬い食品ほど咀嚼回数や噛む力が増え、リズム運動としての刺激が大きくなります。三叉神経への入力量も多く、脳幹のセロトニン神経をしっかり刺激できる点が理由として挙げられるでしょう。柔らかいグミでも一定の効果は期待できますが、噛む回数や時間で見ると物足りなくなりがちです。
どんな食べ物を咀嚼するとセロトニンの分泌が増えやすい?

咀嚼によるリズム運動の効果を高めるには、食材選びも重要なポイントとなります。十分な噛みごたえがあり、かつセロトニンの材料となる栄養素を含む食品を取り入れると、相乗効果が期待できるでしょう。ここでは、日常生活で取り入れやすい5つの食品グループを紹介します。
大豆製品(豆腐・納豆・味噌など)
大豆製品はセロトニンの原料となる必須アミノ酸であるトリプトファンを豊富に含む食品です。納豆は粘りがあり噛む時間が長くなりやすく、リズム運動の効果も得られます。味噌汁に厚揚げや煮大豆を加えると、咀嚼の手間と栄養面の両立が可能となるでしょう。植物性たんぱく質はトリプトファンが脳に届きやすい点でもおすすめできる食材です。
乳製品(チーズ・ヨーグルト・牛乳)
チーズや牛乳、ヨーグルトといった乳製品にもトリプトファンが豊富に含まれます。とくにハードチーズは噛みごたえがあり、咀嚼運動として理想的な食材と言えるでしょう。ヨーグルトは噛む要素こそ少ないものの、ナッツやグラノーラを加えれば咀嚼回数を増やせます。朝食での活用が一日のセロトニン分泌を支える助けとなります。
ナッツ類(アーモンド・くるみ・ピーナッツ)
ナッツ類は硬さがあり、自然と咀嚼回数が増える代表的な食材です。トリプトファンに加えて、セロトニン合成に欠かせないビタミンB6やマグネシウムも含まれます。間食に少量を取り入れる習慣が、リズム運動と栄養補給を兼ねた手軽な工夫になるでしょう。塩分や脂質の摂りすぎを避けるため、無塩タイプを選ぶ方法が望ましい食材です。
赤身魚(カツオ・マグロなど)
カツオやマグロといった赤身魚はトリプトファンとビタミンB6を同時に含む食品です。刺身であれば加熱による損失が少なく、効率よく栄養を摂取できる方法と言えるでしょう。ただし切り身は柔らかいため、咀嚼の刺激は限られます。ご飯と一緒に取り、よく噛んで食べる工夫が、咀嚼面と栄養面の双方を満たす近道となります。
噛みごたえのある主食・間食(玄米・するめ・ガムなど)
玄米やするめ、ガムなどは噛む回数を自然と増やせる食材です。玄米は白米より咀嚼回数が増え、食事時間を延ばす効果が期待できる主食と言えるでしょう。するめは硬く噛みごたえが強いため、リズム運動として高い効果を持っています。ガムは20分ほどリズミカルに噛む方法が、研究でも推奨される実践法のひとつです。
「セロトニンと咀嚼」についてよくある質問

ここまでセロトニンと咀嚼について紹介しました。ここでは「セロトニンと咀嚼」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
咀嚼と自律神経には関係性があるのでしょうか?
関口 雅則 医師
咀嚼と自律神経には密接な関係があります。リズミカルに噛む動作はセロトニン神経を活性化させ、結果として自律神経のバランス調整につながる仕組みです。継続的なガム咀嚼が自律神経バランスを改善したという報告もあります。ストレス時の動悸や胃腸の不調にも、よく噛む習慣は対策のひとつとなり得るでしょう。
1口30回咀嚼するとどんな健康効果が期待出来ますか?
関口 雅則 医師
1口30回噛むと、唾液分泌の増加や消化の補助、満腹中枢の刺激による食べ過ぎ防止が期待できます。さらにリズム運動としてのセロトニン神経活性化や、脳血流の増加による集中力向上も挙げられるでしょう。早食い習慣の改善にもつながり、肥満予防や血糖値の急上昇抑制といった全身への波及効果も見込まれる方法です。
まとめよく噛む習慣でセロトニン分泌を高め、心と身体の健やかさを育てましょう
セロトニンは精神の安定や睡眠の質、自律神経のバランスを支える重要な神経伝達物質です。分泌を高める手段のひとつが「咀嚼」というリズム運動です。柔らかい食品より、噛みごたえのある食材を意識的に選ぶことが効果的と言えるでしょう。日々の食卓で「よく噛む」習慣を積み重ね、心と身体の健やかさを育てていきましょう。
「セロトニン」と関連する病気
「セロトニン」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
精神・神経系の病気
うつ病不安障害
過敏性腸症候群片頭痛睡眠障害線維筋痛症自律神経失調症セロトニン症候群
セロトニンは精神面だけでなく、消化器症状や頭痛など多彩な病態に関係する物質です。気になる症状が続くときは、自己判断せず専門医への相談をおすすめします。
「セロトニン」と関連する症状
「セロトニン」と関連している、似ている症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
抑うつ気分・気分の落ち込み
不眠・寝つきが悪い
イライラ・不安感
集中力の低下
疲れやすさ・倦怠感
頭痛胃腸の不調・便秘や下痢
冷え・動悸
食欲の変化
慢性的な痛み
セロトニン関連の症状は心と身体の双方に現れます。複数の症状が続くときは生活習慣の見直しに加え、医療機関での相談が役立ちます。
参考文献
健康日本21アクション支援システム 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット)|厚生労働省
セロトニン神経活性化の臨床的評価:脳波α2成分の発現|国際生命情報科学会誌
ガムの硬さが唾液と脳活動に与える影響|日本食品科学工学会誌
ガムを「噛むこと」によるさまざまな作用|農畜産業振興機構
Prolonged gum chewing evokes activation of the ventral part of prefrontal cortex and suppression of nociceptive responses: involvement of the serotonergic system|PubMed
