手取り24万円・35歳会社員が飛び込んだ〈シェアハウス〉。家賃6.6万円・家具家電付きで“お得に自立”のはずが、1ヵ月半で実家に出戻りのワケ

写真拡大

都心部の家賃高騰や物価高が続く昨今。固定費を抑える手段として「シェアハウス」を選択肢に入れる人もいるのではないでしょうか。家具家電付きの部屋に広い共用スペース、そして、入居者との出会いや発見もあるでしょう。しかし、思わぬストレスを抱えることになってしまった……という例も。見ていきましょう。

35歳会社員、実家を出て「初期費用・家賃が安い」共同生活へ

都内で働く会社員の大和陽一さん(35歳・仮名)は、手取り24万円。ずっと実家で暮らしていましたが、母親から「いい加減、自立しなさい」と小言を言わる日々。「うるせーな。わかってるよ」……そう返す自分は、子どもじみている。早く家を出なければならないと思っていたそう。

しかし、いざ部屋を探してみると、都内の家賃の高さが壁になります。駅徒歩10分以内、6畳ワンルームでも、家賃は8万円を超えてきます。手取りを考えれば、光熱費や食費を引いた時点で貯金など不可能です。

「家賃8万は厳しい。でも、会社から遠すぎる場所も困る」

そんな陽一さんが見つけたのが、会社から30分圏内、家賃6万6,000円(共益費込み)のシェアハウスでした。築20年ほどのマンションを改装した全10室の物件。各部屋は6畳の鍵付き個室で、水回りとリビングが共有の男女ミックス物件です。

シェアハウスは家具家電が備えつけ。初期費用が安いことも、貯蓄が多くない陽一さんには魅力的でした。見学時は共有スペースも整っており、担当者からは「入居者は20〜30代」と聞き、友人ができるかもしれないという期待もあったといいます。

こうして、すぐに入居を決めた陽一さん。しかし、住み始めてわずか1週間ほどで、彼は想像とのギャップに悩まされることになります。

冷蔵庫から消える食べ物、リビングを占拠する女性

まず、陽一さんの神経を削ったのが、共有キッチンの冷蔵庫でした。 ある夜、仕事終わりに楽しみにしていた缶ビールと、翌朝用のヨーグルトが消えていました。マジックで大きく『大和』と書いておいたにもかかわらずです。

数日後、また同様にヨーグルトが消えたことで、大和さんは管理会社に連絡。しかし、「名前を書いてもダメですか? 入居者に注意はしますが、誰がやったかまではわからないので……。心配なら、鍵付きの保冷ボックスを使う手もありますよ」

まさか、人を疑いながら生活をするのかと、陽一さんは何とも言えない虚しさに襲われました。

さらに、リビングを「オフィス化」している住人の存在。ノートPCを広げ、昼夜を問わず大声でオンライン会議や商談をするフリーランスの女性がいたのです。

「〇〇の件、どうなってる? メール待ってるから!」

そんな声が深夜までリビングから響きます。他の住人がやんわりと注意しても、「私、これで生計立ててるんで」とどこ吹く風。彼女が陣取っている時間帯、陽一さんを含め、他の住人は自室へ引きこもるしかありませんでした。

ゴミ出し・水回りルール無視の住人

そして、やはり掃除の問題です。ゴミ出しや浴室・リビングの掃除は、住人の当番制になっていました。ところが、当番表に名前があっても、平然と無視する人間が3〜4人いることが判明。誰かが限界を迎えて片づけるのを、彼らはただ待っているのです。

「見学時の綺麗さは、管理会社が事前に掃除しただけだったんだな……」

お風呂に入りたくても順番待ち。ようやく浴室に入ると、床がびしょ濡れのまま放置。髪の毛が排水溝に絡まっていても、そのままの人も。

「自分が細かい人間だとは、一度も思ったことなかったんですが……。これは無理だと思いました」

入居からわずか1ヵ月半。陽一さんは退去届を出しました。初期費用が安いからと飛びついたシェアハウスでしたが、入居時に約15万円を支払い、退去する際には違約金やクリーニング代などでさらに約12万円を支払い。27万円以上の貯金を失った計算です。

陽一さんは大きなスーツケースを引きずり、実家の門をくぐりました。

「あら、どうしたの?」

怪訝そうな顔をする母親に、陽一さんは素直にこういいました。

「母さん、ごめん。シェアハウス、無理だった。とりあえず今月分の生活費は入れるから、次の部屋が決まるまで、ここにいさせてほしい……」

お得だからと選んだシェアハウス生活が、わずか45日で幕を閉じた陽一さん。

「多少高くても、次はアパートを探します。共同生活できるのは家族だけだって気づいたから」

「節約で選んだのに…」本末転倒にならないために

一般社団法人日本シェアハウス連盟「シェアハウス市場調査(2025年)」によると、2025年11月末時点の全国のシェアハウス運営棟数は5943棟。前年2024年の6123棟から微減していますが、おおよそ横ばいです。

市場規模自体は落ち着いているものの、近年の物価高、電気代などの光熱費高騰、そして都心部の賃貸家賃の高騰のあおりを受け、「生活費を極限まで抑えたい」という若年層や社会人の需要は、今後も根強く続くと想定されます。

多様な生活スタイルの人の共同生活。そこに楽しみを見出したり、メリットを見出す人も多くいる一方で、今回の事例のようなマナーやルール違反、生活スタイルの違いといったストレスを抱えて“離脱”する人もいます。

シェアハウスは敷金・礼金なし・家具家電付きの物件が多く、安さに魅かれる人もいるでしょう。ただ、多くの物件には「短期解約違約金(1年未満の退去は家賃1〜2ヵ月分を支払う)」という特約がついています。陽一さんのように「数ヵ月で退去」となった場合、以下の出費が必要になる可能性があります。

・入居時の初期費用(事務手数料や前家賃)
・短期解約の違約金
・次の家(または実家)への引越し代

せっかく節約のために選んだにもかかわらず、わずか数ヵ月で数十万円単位のお金を失うことになれば本末転倒です。

シェアハウスを選ぶこと自体は、悪い選択ではありません。しかし、住人同士の自主性やルールに任せている物件は要注意。管理会社が週に数回清掃に入り、トラブルにも介入してくれるかもチェックすべきポイントです。

管理体制がしっかりしている物件は、その分コストがかかります。しかし、安さというメリットだけに目を奪われず、管理の質をしっかり見極めることが、賢い選択といえるでしょう。