epiさんの愛犬、クマくん(左)とコタローくん(右)(画像提供:epiさん)

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「拒否柴」などの可愛い様子でSNSでも頻繁に話題になる日本の天然記念物、柴犬。海外でも人気の犬種だが、近年、柴犬の「飼育放棄」が問題視されている。

【写真】犬の行動を制限するのではなく、パーテーションを使って赤ちゃんの安全をキープ

飼育放棄の主な理由としてよく見受けられるのが、「家族のアレルギー発症」「妊娠・出産」「飼い主の死去・病気」「飼い主の高齢化・認知症」「引越し・転職」「離婚・同棲解消」「経済的な変化」など。

それに加えて、柴犬の場合、「しつけが出来ない」「思っていたのと違う」といった理由も多いという。

果たして、こういった理由で犬を手放そうとする人たちには「飼育放棄」しか手段がないのだろうか?

「妊娠したので柴犬を手放したい」

「妊娠したので、気性の荒い『柴犬』を手放そうか、親戚に預けるかで悩んでいる。でも親戚は犬が苦手で……」

近所の方からそんな相談を受けたというepiさん。

柴犬2頭と暮らすepiさんは、小学生の息子を持つ母親。

「赤ちゃんの安全が大前提だが、まだ何も起きていない段階で『手放す』が選択肢にあることに驚いた。柴犬くんはまだ子犬でやんちゃな時期。犬が気の毒で仕方ない」と、ショックを受けたという。

そこで、妊娠前から柴犬たちと暮らしていた自身の経験を踏まえて、赤ちゃんと犬が暮らすために「出来うる対策」を相談主に伝えたそうだ。

「子ども」と「犬」が共生するために行った9つの対策

「息子を妊娠中、我が家には当時1歳10ヶ月の赤柴のハク、1歳8ヶ月の黒柴のクマという、2頭のオスの柴犬がいました。

出産後は赤ちゃんにアレルギー反応が出ないかを慎重に確認しながらではありましたが、柴犬に限らず、子どもと犬がうまく共生するために私が行った対策は以下の9つです。

1)妊娠中から『赤ちゃんが生まれてくること』を伝える

繰り返し伝えているうちに彼らも理解したようで、お腹の上に顔を乗せるなどの様子が見られました。

2)出産後、赤ちゃんの匂いを事前に共有

赤ちゃんの匂いがついたガーゼを夫に毎日持ち帰ってもらい、新しい家族の存在を匂いで予告しました。

3)生活空間の工夫(ベッド・サークル)

赤ちゃんの行動範囲が限られる時期は、犬はフリーのまま、赤ちゃん側を守る形にしました。高さのあるベッドや全面ネットタイプのベビーサークルを使用し、接触や毛の侵入を防ぎました。

※柴犬は換毛量が多いため、アレルギー対策としても重要なポイントです。

4)行動範囲が広がった後の空間作り

赤ちゃんがずりハイやハイハイを始めて行動範囲が広がってからも、「犬を閉じ込める」という選択はしませんでした。

ベビーサークル(※市販のキッズパーテーションのようなタイプ)を連結し、リビングを2つの空間に仕切ることで、安全を確保しつつ無理のない共存環境を整えました。また、親がしっかり見守れる時は、積極的に交流の機会も設けていました。

5)スキンシップと声かけ

親が抱いた状態で息子の匂いを嗅がせながら、「赤ちゃんは大切な家族であること」を日々伝えていました。

6)犬との時間も確保

赤ちゃん中心になり過ぎないよう、ブラッシングや触れ合いの時間を意識的に確保しました。

7)散歩の安全対策

産後は家族のサポートを受けながら対応。特に義母が散歩を担当する際は、首輪+ハーネス+ダブルリード+迷子札で安全性を高めていました。

8)外部サービスの活用

負担軽減のため、散歩代行も利用しました。

9)首すわり後の散歩スタイル

抱っこヒモやベビーカーを使い、息子を連れて1頭ずつ並走させる形で対応していました。

犬は「匂い」「音」「行動や表情」から状況を理解

「犬に言葉で伝える」ことに違和感を覚える人もいるかもしれないが、犬は1万年以上前から人間と暮らしてきた歴史を持つ動物。

人間が話す単語を平均で200語以上覚えることが可能で、1000以上の単語を理解する犬も存在する。

また、epiさんは犬の行動を制限してストレスを与えるのではなく、「赤ちゃん」側の安全をキープする対策を選択。

さらに、「匂い」や「音」、「人間の行動や表情」から膨大な情報を取得出来る犬の特性を踏まえ、妊娠中から愛犬に「お腹にいる命は大切なもの」と伝えていたepiさんの行動は、犬の習性や愛犬の性格をきちんと理解している飼い主だからこそ出来た対策と言える。

「当時赤ちゃんだった息子を見守ってくれた先代犬のハクが病気で他界してしまった後、息子が4歳になった時にコタローというオスの柴犬を迎えました。息子がしっかりし始めた時期だったこと、また、生まれた時から犬と暮らしてきたこともあり、その際は特別な対策は必要なく、基本的にフリーで過ごすことが出来ました」(epiさん)

「柴犬らしさ」を尊重できますか?

つねに人間の側で甘えたい愛玩犬や洋犬と異なり、番犬や猟犬として活躍したルーツを持つ柴犬は、繊細で気難しく、扱いが難しいと言われる。

だが、そもそもの問題は「人間側」にあるのではないか、とepiさんは言う。

「多くの柴犬が飼育放棄されている現状には私も胸を痛めています。個人的には、『柴犬が特別に難しい犬種』とは思っていません。それよりも人間側が、『犬種の特性を理解せずに迎えてしまうこと』が問題だと感じています。

柴犬は自立心が高く、自分の意思をはっきり示す犬種です。そのため、人間側の対応に一貫性がないと、不信感につながりやすい傾向があります。

また、吠える・唸る・噛むといった犬の行動の前には、必ずサインがあります。それを見逃した結果、問題行動に発展してしまうケースも少なくありません。柴犬は表情や仕草で豊かに感情を伝えてくれる犬種です。そのコミュニケーションを『怖い』と感じるか、『理解するためのチャンス』と捉えるかで関係性は大きく変わります。

⚫︎常に抱っこしたい

⚫︎どんな犬とも仲良くしてほしい

⚫︎吠えたり噛んだりするのはNG

このような価値観を持つ方には、柴犬は向かない場合もあるかもしれません。見た目の可愛らしさだけでなく、『柴犬らしさ』そのものを受け入れられるかどうかが大切なのではないでしょうか」(epiさん)

犬を「迎えない」という選択肢も愛情

柴犬に限らず、「まずは、自分がどんなドッグライフを望んでいるのかを整理し、それが本当にその犬種に合っているのか? 問題行動や思い通りにならない部分も含めて、向き合う覚悟があるかどうか?を考えていただきたいです」と、epiさん。

「それが難しいのであれば、『迎えない』という選択もまた、犬に対する愛情だと思います。犬は人を癒すための存在でも、子どものための道具でもありません。『幸せにしてほしい』ではなく、『幸せにしてあげたい』と思えるかどうかだと思っています。

また、医療費や生活費など現実的な負担についても、しっかりと考えておく必要があります。どれだけ準備をしていても想定外は起こります。準備し過ぎることはないと感じています」(epiさん)

犬のしつけや行動で悩んだ際は、かかりつけの獣医師や信頼出来るドッグトレーナーなどに相談するのも手段のひとつだ。

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ リュウ)