年収750万円から借金1000万円に転落した男性の告白「借金を返済するために新たな借金を…」高収入者こそ陥りやすい「貧困」の恐怖
◆借金を1000→300万に圧縮、5年をかけて完済
再就職を果たしても督促と返済に苦しむ今井さんに、当時「個人再生をしたほうがいい」と助言をした人物がいる。元々の知人であり、大手消費者金融の元営業店店長・大塚雅彦さん(57歳)だ。
「個人再生とは、裁判所を通じて債務額を減額してもらい、その残りを数年がかりで返すというもの。『住宅資金特別条項』という特約があり、返済能力があるなど所定の条件を満たせば手元に住宅を残せます。ほかに『自己破産』という方法もありますが、この場合は債務が免除される代わりに住宅ごと処分されてしまう。会社員として定収入があるのなら、住宅資産(マンション)を手放さずに済む個人再生を選ぶべきとアドバイスしました」
佐賀県弁護士会消費者問題対策委員会で委員長を務めた弁護士の大和幸四郎氏によれば、今井さんのように一見高い収入を得ていても、人知れず借金返済に悩むケースは決して珍しくないのだという。
「月30万〜40万円近く収入があり、ギャンブル癖もない。それなのに負債が積み重なる要因は人によりさまざまですが、一つにはクルマや高額の結婚祝い、ご香典など『見栄を張った出費』があります。たとえばクルマを買えば、車検や駐車場代など別に固定費が発生しますが、追加出費が目に入っていないことも少なくありません」
PayPayをはじめとした電子決済手段の発達も、支払いの実感を鈍らせていると指摘する。
「キャッシュカードや電子決済だと、財布からおカネが出るのが目に見えないので、気の大きい支払いをしがちです。時代に逆行するようでも、カードや電子決済を使わず『現金主義』を貫くのもいいでしょう」
先の今井さんも、過去の失敗を経て今ではどんな買い物をするときも「キャッシュカードは絶対に使わない」と決めているという。
「たとえクルマのように額の高い買い物も、現金払いを勧めたい。でないとかつての僕のように、金銭感覚はあっという間に壊れていきます」と釘を差す。
貧乏とは、必ずしも収入が減った先にあるとは限らない。高収入ゆえに陥ってしまう「貧困」も、また現実に存在しているのだ。
大和幸四郎(やまと・こうしろう)
1996年旧司法試験合格、佐賀県弁護士会所属。佐賀大学客員教授。佐賀いのち電話評議員。得意分野は捜査弁護、遺産分割等の相続問題、借金問題、消滅時効。佐賀県弁護士会消費者問題対策委員会では委員長を務めた
<取材・文・撮影/松岡瑛理>
【松岡瑛理】
一橋大学大学院社会学研究科修了後、『サンデー毎日』『週刊朝日』などの記者を経て、24年6月より『SPA!』編集部で編集・ライター。 Xアカウント: @osomatu_san
