インフルエンザの約10倍?「麻疹」の驚異的な感染力と知っておきたい空気感染の仕組み

麻疹の最大の特徴は極めて強い空気感染力にあります。本章では飛沫核による感染の仕組みや、ウイルスが空気中に長時間残る理由を分かりやすく解説します。また、飛沫感染や接触感染との違いを理解することで、より適切な予防意識を身につけることができます。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

麻疹の空気感染とそのメカニズム

麻疹ウイルスは、感染力が非常に強く、空気感染によって広がることが大きな特徴です。このメカニズムを理解することで、効果的な予防策を講じることができます。

空気感染が起こる仕組み

空気感染とは、ウイルスが微小な飛沫核として空気中に浮遊し、それを吸い込むことで感染する経路です。麻疹ウイルスは、感染者が咳やくしゃみをすることで、唾液や鼻水に含まれるウイルスが空気中に放出されます。これらの飛沫は水分が蒸発すると飛沫核となり、長時間空気中を漂い続けます。

飛沫核は非常に小さく軽いため、重力によって落下することなく、数メートル以上離れた場所にも到達します。換気が不十分な室内では、感染者が去った後も数時間にわたってウイルスが残存することがあります。このため、同じ空間にいなくても、時間差で感染が成立する可能性があるのです。麻疹ウイルスの基本再生産数は12から18とされ、インフルエンザ(1~2人)に比べ桁違いに強い12~18人という感染力があります。

飛沫感染や接触感染との違い

飛沫感染は、感染者の咳やくしゃみによって飛び散る比較的大きな飛沫を、近距離で浴びることによって起こります。飛沫は通常1メートルから2メートル程度で落下するため、感染範囲は限定的です。一方、接触感染は、ウイルスが付着した手や物を介して、口や鼻、目などの粘膜にウイルスが到達することで成立します。

麻疹は主に空気感染で広がるため、飛沫感染や接触感染を防ぐ対策だけでは不十分です。通常のサージカルマスクは飛沫を防ぐ効果はありますが、微小な飛沫核の吸入を完全に防ぐことは難しいとされています。このため、麻疹の予防には、ワクチンによる免疫獲得が最も確実な方法といえます。医療機関では、麻疹患者さんを隔離し、陰圧室での管理や、医療従事者のN95マスク着用などの厳重な感染対策が実施されます。

まとめ

麻疹は感染力が非常に強く、予防接種を受けていない方が感染すると重症化するリスクもあります。初期症状を見逃さず、早期に医療機関に相談することが大切です。また、予防接種によって免疫を獲得することが、自分自身を守るだけでなく、周囲の方々への感染拡大を防ぐことにもつながります。免疫の有無が不明な場合は、抗体検査や予防接種について、かかりつけ医や専門医に相談されることをおすすめします。日頃から健康管理に気を配り、適切な予防策を実践することで、麻疹から身を守ることができるでしょう。

参考文献

国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「麻しん」

厚生労働省「麻しん」