ジャンボ尾崎の門下生が大活躍中「新世代の女子ゴルファー」続々台頭の意外すぎる背景

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ジャンボ尾崎が遺した「アドバイス」

国内女子ゴルフツアーが3月の「ダイキンオーキッドレディス」を皮切りに幕を開けた。近年の女子ゴルフは世代交代が急速に進み、有望な若手が次々台頭している。

その中心にいるのが、昨季の年間女王・佐久間朱莉(23歳)と、期待の超新星・菅楓華(20歳)であることは間違いない。

プロ5年目の'25年シーズンで年間4勝を挙げ、メルセデス・ランキング(年間ポイントランキング)1位に輝いた佐久間は、まさにツアーを牽引する存在だ。

今季の開幕戦を優勝で飾ると、続く第2戦「台湾ホンハイレディース」、第3戦「Vポイント×SMBCレディス」でも連続2位と、破竹の勢いを見せている。

彼女の強さを語る上で欠かせないのが、師匠である「ジャンボ尾崎」こと尾崎将司の存在だろう。国内男子ツアー最多94勝を誇るレジェンドは、昨年12月、78歳で他界した。

佐久間は中学3年生の頃から「ジャンボアカデミー」の門下生として最期まで教えを受けてきたが、尾崎から最初に授かった言葉は「とにかく振り切れ」だったという。

佐久間は師匠から与えられた重たいミニクラブを、素振りで思い切り振り続けた。その結果、中学生当時は220ヤードほどだった飛距離が、今では平均250ヤードまで伸びている。

一方で、佐久間は単に技術が優れているだけではない。勝負に対して誰にも負けない貪欲な姿勢がある。

なかなか国内ツアーで勝てなかった時期に、ジャンボ尾崎から「俺も優勝の数より2位のほうが多いんだ」と励まされたという。1月の年間女王祝勝パーティにおいて、佐久間はこう語っている。

「あれだけ勝っている方がそう言っているのなら『私はまだまだだな』と。勝つための気持ちを奮い立たせてもらえました。去年の結果があるのは、ジャンボさんの言葉があったからです」

勝負どころで躊躇しない決断力、そしてその決断を裏付けるショットの精度。これらが安定した上位争いへとつながり、2年連続の年間女王獲得へと突き進んでいる。

今季、その佐久間を超える勢いで活躍しているのが、プロ3年目を迎えた菅だ。昨季にキャリア初のツアー優勝を飾ると、何度も上位に食い込み新人賞を受賞。今季の開幕戦で6位に入り、第2戦「台湾ホンハイレディース」ではツアー通算2勝目を挙げている。

「攻めるゴルフ」が増えた理由

開幕戦後、報道陣に菅はこう語っている。

「開幕戦で優勝争いができたことで、去年のいい感覚が戻ってきています。これまでの経験が活かされていると感じますし、シーズン前に揺らいでいた自信も取り戻せました」

この「自信」がさらなる好結果を呼んでいる。3戦目を2位、4戦目を3位、5戦目を4位で終え、年間ポイントランキングで首位につけた(4月9日時点)。開幕から5試合連続のトップ10入りは'22年の西郷真央以来の快挙で、今季ツアーでは唯一。「春先が得意」と語る通り、心身ともに充実している。

彼女のプレーの最大の特徴は「迷いのなさ」にある。アドレスに入るまでが早く、一度決断すればリズムを崩さない。「強心臓の勝負師」と言っても差し支えないだろう。

筆者には「早く終わりたいから早く打つ、というのもありますけど(笑)。それが自分のリズムなんです」と気恥ずかしそうに話していたが、コース上ではほとんど感情を表に出さない。ポーカーフェイスを貫きながら内面には無邪気さが同居する―そんなギャップも彼女の大きな魅力だ。

昨季はツアー終盤になると「ピンを狙える場面でも安全な方向を選んでしまうことが増えていた」と振り返る菅は、結果を意識するあまり本来持つ攻撃性を失いかけていた。それが今季は「攻めたショット」を実践している。この菅と、女王・佐久間とのデッドヒートが、今季の女子ゴルフをいっそう面白くしている。

佐久間と菅の「共通点」

この2人には共通点がある。OBになったりスコアを叩いたりすることを恐れず、ピンやグリーンを積極的に狙う「攻めるゴルフ」をしている点だ。なぜ今、こうした選手が台頭しているのだろうか。その背景には、ツアーそのものの「構造的な変化」が存在する。

日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)は'13年以降、日本の選手たちが世界で勝つことを明確な目標に掲げてきた。中核となる施策が、「コースセッティングの多様化」だ。

小林浩美会長は、その意図についてこう語っていた。

「簡単すぎてもダメ、難しすぎてもダメだと思います。米ツアーのように、20アンダーが出る週もあれば、イーブンパーで優勝が決まる週もある。その幅こそが選手の対応力を鍛えるのです」

ツアー第一線から離れ、現在はセッティングに携わるプロゴルファーの馬場ゆかりも、「国内外の様々なタイプのコースに対応できるよう、芝の状態や季節に応じたセッティングを行っています」と筆者に説明していた。

かつての国内ツアーは、勝つための一定の「型」が見えやすい環境だったが、現在は週ごとに求められるプレーの質が劇的に変わる。

実際、短いパー4でイーグルを狙わせるようなホールでも、セッティングによってはパーで御の字になる場合もある。選手はその都度、プレースタイルを微調整しながら戦うことを求められるのだ。

つまり、単に「巧い選手」が勝つのではなく、「その週の条件に自らを最適化できる選手」が勝つ構造へと変化した。こうして、迷いなく攻め切る佐久間や攻撃性を取り戻した菅が上位に定着したのだ。

【後編を読む】「ダイヤモンド世代」女子ゴルフの世界を急速に変える超新星たちの名前

取材・文/金明碰(スポーツライター)

キム・ミョンウ/'77年生まれ、在日コリアン3世のライター。サッカーや女子プロゴルフなどスポーツに関する取材・執筆を行っている

「週刊現代」2026年4月27日号より

【つづきを読む】「ダイヤモンド世代」女子ゴルフの世界を急速に変える超新星たちの名前