多くの私立中学ではスマホ持ち込みOKだ…となると子どものスマホ代も当然、固定費としてプラスされる

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「第一志望に合格した時は、親子で抱き合って泣きました。3年間の努力が実を結んで本当によかった。でも、学費以外にこんなに出費があるなんて……」。10歳から始めた中学受験。大手塾の費用と受験料、3年間で300万円を超える「課金」の末に掴み取った私立中学の切符だった。世帯年収は1,000万円。地方であれば「高収入」とみなされる数字だが、都内の私立中学というリングに上がった途端、状況は一変する。入学後に次々と届く「見えない出費」の数々。教育費の専門家である八木陽子さんに、私立中学進学後のシビアな現実と、高校からの立て直し策を解説してもらった。

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寄付金、指定グッズ、豪華なランチ……止まらないボディブロー

「私立中学に進学したら、学費が年100万円かかることまでは覚悟していました。でも、それ以外にかかる費用が予想以上でしたね」

多くの私立中学ではスマホ持ち込みOKだ…となると子どものスマホ代も当然、固定費としてプラスされる

 そう話すのは、都内在住の恵さん(45歳、仮名)。世帯年収は1,000万円、子どもは娘1人で、私立中学に進学しても問題はないと思っていた。しかし、合格後、そして入学後、出費が続き、そのあまりの多さに戸惑っている。

 まず、学費の振込用紙とともに手元に届いたのが「寄付のお願い」。義務や強制といった言葉はないが、「払わないと、自分の子どもに不利に働くのではないか」という不安がぬぐえず、入学金や授業料とは別に、20万円を振り込むことになった。

 入学前には制服やスクールバッグなどの指定品を購入する。

「制服は夏服、冬服だけでなく、靴下、上履き、体操着やジャージまで指定されています。絵具セットや裁縫セット、習字セットも、小学校時代に買ったものがあるのに新たに指定品を買うことに。タブレットは、補助金が出るようですがiPadを学校指定の店で買わされました。家電量販店やネットショップのほうがポイントつくのに……。ひとつひとつ、“これ、手持ちのものじゃだめですか”と聞きたかったのですが、皆さん当然のように注文されていましたね。お友だち同士の目もあるので、うちもすべて買いそろえましたが、合計20万円くらいかかりました」

 入学後も出費は止まらない。

「吹奏楽部に入部したところ、自分の楽器を購入するよう言われました。楽器購入は当然だとは思うのですが、“音が全然違うので、それなりのものを購入してほしい。ここの楽器店に相談して”と。どうやら数十万円はしそうです。そして、コンクールや定期演奏会のためのユニフォーム代や合宿代にも数万円かかるといわれました」

 子ども同士の「付き合い」だってバカにならない。

「小学校時代は地元の公園や区立プールで遊んでいたのが、中学では、お友だちが住んでいるエリアが広範囲になって、遊びも都心のレジャースポットや商業施設が中心に。交通費もかかるし、ランチ代やお茶代も一気に跳ね上がりました。友だち同士の誕生日プレゼントもデパコス(百貨店で売られるブランド化粧品)やミニ香水といったものが当たり前で驚きました。例え、ひとつひとつは小さな額でも、それらがボディブローのように家計の体力を削るんです……」

 さらに保護者同士の付き合いもある。クラスの保護者懇親会や、PTAのちょっとした会合も都心のおしゃれレストランで開催され、会費は5,000円だった。伝統校だけあって、保護者の装いも小学校時代とは異なる。公立小学校時代のように、カジュアルスタイルで……とはいかないのだ。

「この先、宿泊行事、修学旅行などにもお金がかかります。本人は希望制の海外語学研修にも参加したがっています。それらを払いきれるのか、不安です」

専門家からのアドバイス:私立中学の「拒否できない出費」に注意

「私立校に進学すると、学費以外の出費があまりに多く、皆さん驚かれます。寄付金のほか、学校指定グッズ、部活関連の費用……。宿泊行事も、行き先や宿泊施設が公立よりも豪華になり費用が高い傾向が。寄付金についてはいろいろな考え方がありますが、これらはおおむね節約が難しい費用といえるでしょう」(八木陽子さん、以下同)

 学校や部から指定された出費以外にも、「成績不振で家庭教師をつけなくてはならなくなった」「難関大志向が強く、中学から予備校通い」となった場合は年間数十万円が上乗せされることになる。

 また、子ども同士、保護者同士の付き合いにかかる費用も、公立小学校時代から大きくはね上がる。

 見栄をはって周囲に合わせるにしろ、「うちはうち」と子どもに我慢させるにしろ、限度はある。できれば学校見学の段階で、生徒やその保護者の雰囲気をみて、「わが家」の金銭感覚とマッチしているかチェックしておきたいところだ。とくに大学附属校や小学校からの内部進学がある学校は、富裕層が多い傾向にあるので注意しよう。

教育費の助成金は年収制限がなくなる傾向に。各種制度を徹底活用して

「年収1,000万円という数字は、実は最も注意が必要なゾーン。余裕があるという錯覚から支出が膨らみがちですが、手取りで見れば決してリッチとは言えません。恵さんもなんらかの対策を打たないと、大学進学のための費用が貯められなくなる可能性が」

 教育費破綻を防ぐため、家計全体の支出や子どもに関係する費用を見直すことが必要だが、あわせて活用したいのが、公的な助成金だ。

「現在、教育費の支援制度は大きく変化しています。私立高校の授業料負担を軽減する、国の就学支援金制度が大幅に拡大され、令和8年からは所得制限がなくなる予定です。東京都の制度も合わせると年間約50万円が軽減される予定です。また、自治体によって変わりますが、私立中学についても、都内在住かつ都内の私立中に通う場合は、年12万円の助成が用意されています。こうした制度をしっかり利用することが最大の防衛策になります」

 なお、こうした公的な助成金制度は、基本的に「申請主義」だ。国や自治体が自動的に振り込んでくれるわけではない。

「制度は毎年変わります。ネット上の口コミに惑わされず、学校からの案内、自治体や国のサイトで一次情報を常にウォッチし、アンテナを張っておくこと。そして期日までにしっかり手続きしましょう」

※紹介する事例は、プライバシー保護等のため、アレンジを加えている。

八木陽子(やぎ・ようこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®。キャリアカウンセラー。株式会社イー・カンパニー代表。2001年に独立。全国の小・中・高等学校での金銭教育や、教育費に悩む保護者へのコンサルティングを数多く手がける。著書に『10歳から知っておきたいお金の心得〜大切なのは、稼ぎ方・使い方・考え方』など多数。

取材・文/吉田きんぎょ

デイリー新潮編集部