「太陽王の街」ヴェルサイユに、毎月第1日曜日に集う旧車たち
【画像】ヴェルサイユ宮殿近くのカテドラル・サン・ルイ前のパルヴィにクラシックカーが集まる(写真31点)
日曜の朝、窓の外を眺めると、雨こそ降っていないものの路面は濡れており、細かい霧雨が漂っている。雨の日は参加台数がぐっと減る。それがこの手のミーティングの常だ。それでも、ヴェルサイユへ行ってみよう。そう決めて、ヴェルサイユ宮殿にほど近いカテドラル・サン・ルイ前のパルヴィへと向かった。
雨の日のミーティングには独特の空気がある。晴れた日なら通り過ぎていくような人も、軒下や石段に腰を下ろしてじっくりと車を眺める。会話が生まれ、エピソードが飛び交い、オーナーと来場者のあいだの距離が縮まる。この日のパルヴィもそうだった。
フォードGT40レプリカのオーナーと話す機会を得た。1969年のル・マン24時間優勝車、ガルフカラーのゼッケン「6」をまとったその車を手に入れるまで、彼は20年間探し続けたという。「ずっと夢だった。ようやく3年前に出会えた」。この日の助手席には兄弟が座っていた。車好きの兄弟が、ル・マンの夢をヴェルサイユの石畳で共有していた。
もう一人、印象的なオーナーがいた。赤いアルピーヌのオーナーだ。幼い頃から父親が乗るこの車を見て育ち、いつか同じ車をと思い続けたが、父はなかなか手放さなかった。待ちきれずに自ら中古市場で探し出し、ほぼ新車同然の個体を手に入れた。ブレーキパッドの交換以外、ほとんど手を加えていないという。ところが最近、父が他界した。長年乗り続けた愛車を引き継ぐことを決めた彼は、自分の1台を手放すことにしたという。同じ車を2台持つ必要はない。だがその1台には、父と息子をつないだ時間が刻まれている。このアルピーヌに興味のある読者は、編集部までご連絡いただきたい。
ミーティングが終わる頃、それまで低く垂れ込めていた雲がいつの間にか薄れ、柔らかな日差しが差し込んできた。ちょうどそのとき、朝の礼拝を終えたカテドラル・サン・ルイの重い扉が開け放たれ、信者たちがパルヴィへと溢れ出してくる。頭上では鐘が鳴り始めた。その荘厳な響きに重なるように、旧車のオーナーたちが思い思いにエンジンをかけはじめる。空冷の乾いたビート、V8の野太い咆哮、小排気量の軽やかな吹け上がり。17世紀の石造建築が共鳴板となって、鐘の余韻とエグゾーストノートが混ざり合い、パルヴィに思いがけない合奏が生まれた。雲間からの光に、磨かれたボンネットが白く輝く。AVAVA、ヴェルサイユの第1日曜日はこうして幕を閉じた。
写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI
