「売り上げのため」原則禁煙から6年も、喫煙可能な店で続く“ご飯もの”提供 本来はNG 理解進まぬ現場 受動喫煙対策の現在地
タバコを吸わない人が、喫煙者の煙を吸ってしまう「受動喫煙」。その対策として、6年前、「飲食店では原則禁煙」とする法改正が行われ、国の調査では7割の飲食店などが全面禁煙になったとされている。一方、繁華街を取材すると、店内で喫煙が可能となっている店も多く、「原則禁煙」などのルールが周知・徹底されていない実態が浮かび上がった。
「白いのできます」分かりにくい表記の理由
「乾杯!」
東京都内にある飲食店。豊富な種類のお酒とともに人気なのが、店長自ら腕を振るう料理の数々。
メニューを見ると、こんな表記が・・・。
「巻く派と巻かない派がいるやつ」
名前からは想像もつかないこのメニュー、注文してみると、出てきたのは「パスタ」。
さらに、リゾットの商品名は「アレをアレと一緒にアレしたやつ」。豚キムチの下の説明には、「白いのできます」との文字が。「白いの」は、ライスのことだという。
なぜこんなにわかりにくいメニュー表記なのか。
店長:
もし行政のどうのこうのってなったときに、いや別に(ご飯ものの提供は)やってないですっていうため。グレーにしている。
店長がそう話す理由は、店頭に表示している「喫煙目的店」という標識にある。
2020年に施行された改正・健康増進法では、飲食店では「原則」全面禁煙となった。店内でタバコが吸えるのは、完全分煙ができる「喫煙室」を設置した場合のみ。
だが、店全体で喫煙できる例外として、「喫煙目的施設」というカテゴリーができた。本来、バーやスナックなどが対象となる。
いくつか条件があり、その一つが「食事」。おつまみなどの提供は認められているが、ご飯・麺類など「主食」の提供原則NG(ランチなどでは可能)となる。
そのため、この店では、自治体が指導に来た場合に備え、メニュー上で、「ご飯もの」とはっきりとわからないようにしているという。
喫煙目的施設では“ご飯もの”が提供できないルールについて店長は「飲んだら、締めも食いたい。主食をなくしてもいいが、お客さんに(食べたいと)言われるから」と話す。
この店では、来店者の7割ほどが喫煙者。
お客さんの意見を聞いてみると・・・
喫煙者の客:
きっちり棲み分けをできたらいいんじゃないですか、メリハリを持って。タバコを吸いたい人って、多分ゼロには絶対的にはできないと思うので。
分煙ができればいいという声がある一方・・・
禁煙をしているという客:
くさいですし、嫌いな人は嫌いじゃないですか。僕は喫煙者の肩身が狭くなっているのは、国として良い方向に行っていると思う。
様々な意見がある中で、店長は、「喫煙目的施設」で、いわゆる居酒屋営業を続ける理由について「売り上げのため。タバコを吸えるお店なのに、飯がうまいっていうイメージをうちは持ってもらっている」と説明する。
受動喫煙を防ぐため、飲食店は「原則禁煙」のルールがあることについて質問すると・・・
店主:
子どもはダメとか、未成年の立ち入り禁止はした方がいいと思う。それ以外は、もう大人に関しては自分で選ばせろって、国が決めなくても自分で決めるし。
客が選択できるよう、吸える店、吸えない店が明確に分かれていれば、問題ないと主張した。
「細かいことは分からない」曖昧な運用の実態
「喫煙目的施設」と表示しながら、いわゆる“居酒屋営業”をしている飲食店はどれくらいあるのか。取材班は、飲食店検索サイトで、東京・新橋エリアの「喫煙可能」と表示される50店をピックアップし、店頭に表示が義務付けられている、喫煙についての「標識」を確認した。
だが、記者が10店舗ほどまわっても、標識を張っているところがほとんどない。ネット上では分煙や全席喫煙可といった情報はあるが、標識は確認できない。
「喫煙目的」との表示がない店が多いため、たばこを吸わない人が入店することで受動喫煙のリスクが懸念として残る。
取材した50店舗中、回答があったのは48店舗。全席で喫煙可能と回答したのは34店舗だった。
これらは全て、バーやスナックなどの「喫煙目的施設」なのか。店を取材すると・・・
記者:
施設の種類としては、喫煙目的施設?
店員:
あんまり細かいことはよくわからない。
全席喫煙可能の34店中、「喫煙目的施設」と回答したのはわずか9店。
23店舗は「どの施設に当てはまるか判らない」と答え、法律の理解が進んでいない実態が浮き彫りになった。
では、「喫煙目的施設」と回答した9店舗では、ご飯ものは提供されていないのか。
「定食がメニューにあります」
「全席で喫煙できる施設ですが、ピザやパスタを提供しているということです」
本来提供できない、「主食」にあたる可能性がある、パスタを提供するなど、9店舗中、7店舗が、夜も主食を提供していた。
自治体判断しづらく 指導に課題
ある飲食店オーナーは取材に対し、「法律ができた2020年はコロナの時期とも被っていて、自治体も対応に追われた。そこから一度も指導に来たこともないし、グレーの状態でやっているお店が多い」と明かす。
喫煙目的施設の要件に違反した場合、50万円以下の過料となる可能性もあるが、法改正以降、過料が課されたことは全国で一件もない。
厚労省は取材に、「『喫煙目的施設』か、自治体が判断しづらく、指導が難しいとの意見もある。今後、「喫煙目的施設」のルールの周知と、標識の徹底に向け、対策を議論していく」とした。
