交際にあたって「私なんかでいいの?」と妻は小首を傾げた。悠樹さんは、その謙虚さにグッときたという

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【前後編の前編/後編を読む】浮気がバレて妻が出て行った…息子たちの世話はどうする? 「それなら私が」 “不倫デリバリー” が招いた41歳夫の修羅場

 妻は妻、恋人は恋人。どちらも大事だしどちらも愛している。本音を言えば、大事なのは妻、情熱を注いで愛しているのは恋人。「浮気夫」の中には、そうした気持ちを持っている人も少なくない。

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 そもそも「結婚したら1人の人としか関係をもってはいけないというのが無理なんだ」と開き直るタイプもいるが、「いけないこととわかっていながらやむを得ず」と頭を低くする男性のほうが多い。妻にバレればすぐに別れる人が大半だが、ときにはなんとか妻の目をかすめて恋人との関係を続けようとするケースもある。

交際にあたって「私なんかでいいの?」と妻は小首を傾げた。悠樹さんは、その謙虚さにグッときたという

「僕の場合、彼女への信頼感が強かったので、妻にバレても彼女との関係が壊れなかったんですよね」

 宮園悠樹さん(41歳・仮名=以下同)はまじめな表情でそう言った。あわてて「いや、もちろん結婚していて恋人がいることをいいと思っているわけではないんです。でもそれは彼女と僕の問題であって……」と言葉を濁した。

 関係が壊れなかったことと、関係を続けることとは違うような気もするが、結局は「家庭を壊すことなく、彼女ともつきあっていきたかった」のだろう。

「それを言ったらおしまいよ、ということですが」

 悠樹さんは苦笑する。いけないとわかっていながら、人はコトをしでかすことがある。ましてや恋愛にまつわる感情は自分でも複雑で持て余してしまうもの。そんなとき、独身の彼女が「私は結婚したいとは思っていない。あなたと一緒にいたいだけ」と囁いてくれたら、「今は離婚できないけど、きみだけを愛してる」と言いたくなる男性の気持ちもわからないではない。

「妻を欺くつもりなんかないし、妻は妻で僕にとっては大事な存在だと思っていましたよ。今も思ってる。まったく違う存在価値だから比べようがないんです」

一目惚れした「純粋でか弱い」妻

 悠樹さんが3歳年下の真未さんと結婚したのは30歳のときだ。29歳のときに職場に派遣会社からやってきた彼女に一目惚れした。派手目の美人だというので写真を見せてもらったが、確かに一目を引くタイプ。ところが性格は「素直で純粋、人の言うことをすぐ信じてしまうから、放っておけなかった」という。

「同僚女性たちは、『最初は猫かぶってるのかと思ったけど、そうではない。本当に浮世離れしてる』『疑うことを知らない』と言っていましたね。言われた仕事はそつなく、丁寧に迅速にやりとげるけど、自分から新たな提案をするタイプではなかった。でも職場にはそういう職務に忠実な人間は必要。話してみると天然ボケなところもあって、かわいいなと思いました」

 それまで悠樹さんは、活発で自分の意見をどんどん言う女性が好きだった。だがつきあっていくうちに疲れてしまう。その繰り返しで結婚には至らなかった。真未さんと家庭をもったらうまくいくのではないか。つきあってほしいと言うと、「私なんかでいいの?」と小首を傾げた。若かった悠樹さんは、その謙虚さにグッときたという。逆に言えば、男の弱点を先天的に理解している女性だったのかもしれない。もちろん、悠樹さんは今も「妻は純粋でか弱い」と思い込んでいる。

結婚するまで肉体関係ナシ

 双方の親も祝福してくれ、ふたりは家庭をもった。結婚するまで肉体関係はなかった。真未さんを傷つけたくなかったからだと悠樹さんは言う。

「誘いましたよ、もちろん。だけど彼女は結婚するまではしたくないと唇を噛みしめた。ごめんね、けじめって大事だと思うのと言われて、そうだよねと言うしかなくて」

 だから結婚を急いだ。つきあって半年でプロポーズし、その3ヶ月後にはたまたまキャンセルであいた式場で急いで結婚式を挙げた。キャンセルされた会場だったのは真未さんには秘密である。

「真未は家事を優先させたいという理由で、パートの仕事を始めました。僕の勤める会社は、結婚して10年ほどは借り上げ住宅に格安で住むことができるんです。その間に家を買うお金を貯めろよということだと思うけど。『家を買うなら、頭金くらいは出す』と両方の親が言ってくれましたが、家庭をもった限りは自立したいから断りました。ふたりでいちからきちんと家庭を築いていきたかったんです」

 そんな悠樹さんを「あなたは立派な人だわ」と真未さんは褒めてくれた。妻に褒められるのは気持ちのいいことだと彼は知った。一蓮托生とか二人三脚とか、そういう言葉は人を元気にするものだと当時は励まされたという。

「1年後には長男、その2年後には次男が生まれました。僕の父親は職人だったんですが、家では毎日、晩酌をしていて酔うと楽しい人だった。あぐらをかいて、その足の中にすっぽり僕を入れて、ずっと頭を撫でながらお酒を飲んで……。僕は兄と妹のいる3人きょうだいの真ん中ですが、きょうだいはみんな父親にかわいがられた記憶がある。よけいなことはあまり言わなかったけど、成績が悪くても怒られたことがない。存在まるごと愛されていると自然に感じていました。それは母も同じです。口うるさくて世話好きで、めんどうなこともあったけど僕らのことを最優先してくれているのはわかっていた。形は違っても、子どもを愛する気持ちは同じ。真未もかわいがられて育ったから、僕らも同じように子どもを大事に育てていこうと話したのを覚えています」

エリート新入社員に抱いた「好意」

 きちんと家庭を築いていくはずだったのに、30代半ばになり、彼は新入社員の麻香さんに好意をもった。それはあくまでも「好意」であって「恋」ではないと彼は断言した。

「彼女は新入社員とはいえ、院卒で留学経験があり、すでに27歳でした。僕が指導社員になったんですが、すごかったですね。彼女の吸収力と熱心さが。今まで会ったどんな新入社員より優秀だった。僕の上司より仕事ができると思いました。もちろん、僕なんかには手の届かないような発想力と、それを着実に成し遂げていく行動力、粘りがあった。デジタル世代なのにどこかアナログなところもあって、不思議な魅力に満ちていました」

 聞けば父親の仕事の関係で、小学校から中学にかけてはヨーロッパ、その後はアジア各地にも住んだことがあるという。大学は日本だったが、途中で留学、さらに海外の大学を出てから日本の大学院へと進学した。

「もちろん彼女は幹部候補、しかも研究職なんですが、とりあえずは会社の概要を知ってもらおうと僕のいる営業部に来たんです。ずっと一緒に行動していく中で、彼女はそれだけの経歴を持ちながらも『私はエリートタイプじゃないんです。地べたを這うようにして自分で何でもやってみるのが好きで』とはにかんだ。大学時代はバックパッカーでもあったし、かつてはピアニストになろうとしたこともあったとか。僕から見るとエリートにしか思えないけど、いろいろなことを囓っては結局、物にならなかったというコンプレックスがあったみたいですね」

彼女がなぜか好きな「麻雀」

 そのコンプレックスが彼女を謙虚に、周りを重んじるような人間にしたのかもしれないと彼はいう。強気になるときと弱気になるときの差があり、それが彼女を人間臭く感じさせたとも。

「おもしろいのはなぜか彼女は麻雀が好きだと言うんですよ。家族麻雀で鍛えられたって。僕や上司と一緒にときどき卓を囲んだんですが、強気の麻雀でしたね。無鉄砲というわけではないけど、いちかばちかで勝負を賭けるところがあるから、なかなかおもしろかったです。日和らず、初心を貫きますと勝負を賭けて振り込んじゃうこともあった。性格が出るなあと思わず言ったら、みんな笑っていました。本人も」

 彼女との仕事は2年ほど続き、その後、彼女は本格的に研究所へと異動していった。

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 “婚前の誓い”を貫き、何不自由ない家庭生活を送る悠樹さんの心は、麻香さんの登場で乱れはじめる――。【記事後編】では、2人の関係が深まる過程と、麻香さんからのとんでもない提案がもたらした修羅場について紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部