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私立の文系大学へと進学し、新社会人となるA子さん(22歳)。幼いころから父親に「ウチにはお金の余裕なんてない」と聞かされて育ち、大学進学時には奨学金を借りていました。毎月2万円、総額480万円にもおよぶ借金を背負って社会に出る覚悟を決めていたA子さん。しかし卒業目前のある日、実家で父親から「まさかの告白」を受けます。長年「お金がない」と語っていた父親が娘に明かした、思いがけない真実とは。

「ウチにはお金の余裕なんてない」と聞かされ育った学生時代

「ウチにはお金の余裕なんてないから、無駄遣いはできないぞ。それが父の口癖でした。私はその言葉を聞いて育ちました」

関西地方で新社会人として働き始めたA子さん(22歳)は、自身の学生時代を振り返ります。

A子さんは高校卒業後、近畿圏にある私立大学の文系学部に入学しました。4年間でかかった学費や一人暮らしの生活費の総額は約1,200万円。実家からの仕送りとアルバイトで生活をやり繰りしていました。

大学進学の際、父親から「万が一のときのために、奨学金を申請しなさい」といわれ、貸与型の奨学金を借りていました。

「親に負担をかけさせてまで大学に行かせてもらう以上、自分で奨学金を返すのは当然だと思っていました」

卒業後から始まる、毎月2万円の返済。A子さんは、自分は480万円の借金を背負って社会に出るのだという覚悟を固めていました。

大学を卒業する直前、父親が明かした「まさかの真実」

しかし、大学の卒業を目前に控えたある日、実家に帰省したA子さんに、父親は思いがけない事実を告げました。

「借りていた奨学金だけど、こっちで全額一括で返済するから。社会人になってから気にしなくていいぞ」

「えっ、どういうこと!?」と驚くA子さんに、父親はこれまでの種明かしをしてくれました。

実は、A子さんが生まれた直後から将来の教育費負担を見据え、誕生とほぼ同時期に学資保険に加入。日々の生活費を切り詰めながら、大学卒業までの費用を想定して、1,200万円もの教育資金をコツコツと貯めていたのです。

「社会人になってから、毎月2万円も返済していくハンデを背負わせたくなかった。学費のことは気にせず、安心して社会に出てくれ」

父の言葉に、A子さんは思わず涙をこぼしました。金銭感覚を養うためにあえて「貧乏だ」と厳しく育てながらも、裏では子供の将来の負担を取り除くためにお金を準備し、奨学金の返済を見事に回避してくれた両親。

A子さんは、自分がどれほどの愛情と計画的な準備によって守られていたのかを、社会人になる直前に知ることになったのです。

「両親には感謝しかありません。ちゃんと親孝行できるよう、立派な大人になります」

親の教育費負担の現実

子供を大学へ通わせるための経済的負担は、親にとって大きな壁となっています。文部科学省の「子供の学習費調査」を見ると、幼稚園から高校卒業まですべて公立に通った場合でも約614万円の学習費がかかります。

さらに、大学へ進学するとなれば負担は跳ね上がります。労働者福祉中央協議会が実施した「高等教育費や奨学金負担に関するアンケート調査」によれば、現実的に負担可能と考える年間の大学授業料の中央値は44.1万円となっています。これは現在の国立大学の標準授業料を下回る金額であり、半数以上の家庭が現在の国立大学の学費ですら負担に感じていることがわかります。

このような厳しい現実のなかで、やむを得ず奨学金を利用する家庭は少なくありません。しかし、奨学金は卒業後に本人が返済していく「借金」であり、新社会人としてのスタートを切る若者にとって大きな負担となります。同調査の自由回答でも「何百万もの借金を返さなくてはならない若者が可哀想」「新社会人には厳しい」といった声が寄せられています。

A子さんのご両親のように、親が全額をカバーして負債を回避できるケースは理想的ですが、それが可能な家庭ばかりではありません。その一方で近年では、企業が従業員に代わって奨学金を返還する日本学生支援機構(JASSO)の「奨学金返還支援(代理返還)制度」を利用する企業が3,266社(令和6年度末時点)にのぼるなど、社会全体で若者の負担をサポートする前向きな動きも着実に広がっています。

親としてできる範囲の計画的な準備を進めるとともに、こうした新しい支援制度などを賢く視野に入れることが、奨学金という壁を乗り越え、子どもたちの明るい未来を守るための第一歩となるはずです。

[参考資料]

文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」

労働者福祉中央協議会「高等教育費や奨学金負担に関するアンケート調査(2024年6月調査)」

 日本学生支援機構「奨学金事業に関するデータ集(令和8年1月)」