『OCHI!-オチ-』©2024 KURKAMART LLC AND IPR.VC FUND II KY. ALL RIGHTS RESERVED.

写真拡大

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、犬か猫だと猫派の宮川が『OCHI!-オチ-』をプッシュします。

参考:A24初の本格ファンタジー映画『OCHI!-オチ-』4月3日公開決定 幻想的な本予告も

 “A24初の本格ファンタジー”という触れ込みで注目されている『OCHI!-オチ-』は、ルーマニア全土の1/3を占めるカルパチア山脈ふもとの村を舞台に、孤独な少女ユーリ(ヘレナ・ツェンゲル)と大きな瞳と耳を持つ“オチ”というふしぎな生き物の交流を描いた物語だ。

 オチは村の人々から恐れられている存在で、ユーリの父マキシム(ウィレム・デフォー)は狩猟隊を率い、オチ狩りに執着している。ユーリはそんな父の姿勢に疑問を抱いており、またユーリが幼い頃に母が家族の元を去っていることが、彼女の心に深い影を落としている。そんな孤独を抱えるユーリがオチと出会い、言葉の壁を超えて心を通わせていく。

 設定だけを聞けば、スティーヴン・スピルバーグ的なジュブナイル作品を連想するかもしれない。しかし、本作が提示するのは、単なる“友情物語”には収まらない、極めて独創的で、時に残酷なまでに美しい“世界の真理”だ。

 特筆すべきは、ユーリを演じたヘレナ・ツェンゲルの圧倒的な演技力である。主演作『システム・クラッシャー』で見せた、制御不能なエネルギーを爆発させる少女のイメージが強い彼女だが、本作ではその野生味はそのままに、繊細な内面表現をより深化させている。言葉の通じないオチを見つめる彼女の瞳には、未知への恐怖と、それ以上に強い「理解したい」という切実な願いが宿っている。

 また、『哀れなるものたち』のウィレム・デフォーをはじめ、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のフィン・ヴォルフハルト、『奇跡の海』のエミリー・ワトソンら、脇を固めるキャスト陣も素晴らしい。特に、マキシムを演じたデフォーの存在感は、本作を単なるファンタジーから、神話的な広がりを持つ寓話へと押し上げている。

 そして本作最大の魅力は、なんと言ってもオチの造形にあるだろう。CG全盛の時代にあえてパペットや実物大の造形物を多用し、手触り感のある質感を追求して生み出されたオチが、とにかくかわいい! ぬいぐるみやフィギュアが欲しくなるほどである。

 2時間以上の映画が当たり前となった昨今、95分というコンパクトな上映時間も好感が持てる。“映画疲れ”を感じている人にもぜひオチに癒されてほしい。

(文=宮川翔)