酒では失敗しかない。でも、失敗の倍くらいの成功はある……。そう語るCANTAさんだが、周囲からは何度も酒をやめるよう説得された。

「お母さんと嫁にずっと『やめるように』と怒られていたんですよ。でも、最近は何も言ってこないので、もう諦めたのでしょうね。すると、今度は怖い先輩たちが『いい加減にしろ』と怒ってくれるようになりました。そこで、朝から飲むのをやめるため、『夕方5時までは飲まない』という約束をしました」

◆シラフだと字も書けない

しかし、依存症になった以上、急にアルコールを摂取しなくなると、頭痛、めまい、吐き気、震え、不安、不眠などの「離脱症状」が起こる。

「いわゆる『酒うつ』ですよね。朝の5時に目が覚めて、少しアルコールが抜けている状態で、もう一度寝ようと目をつぶっても不安が訪れてしまうんです。店の売り上げや嫌いな奴の顔など、普段は考えないようにしていたネガティブな事柄が一気に頭の中にあふれかえるんです。酒を飲んでいればそんなこと『どうでもいいや』と思うのですが、シラフの状態だとずっとそのことを考えてしまい、気持ちが落ち込みます」

仕事に熱中していればそんなことも忘れられるかもしれないが、体も言うことを利かない。

「手が震えるんです。もうペンも握ることができず、字も書けません。領収書にサインもできないし、マウスを持つ指も震えているから全部ダブルクリックになります。気を紛らわすために何か飲もうとしても、片手だとこぼしてしまうので、両手で握り締めて持つしかありません」

そのため、断酒するうえではベンゾジアゼピン系抗不安薬であるロラゼパムが必須である。どれだけ覚悟があっても、そのつらさは耐えられるものではない。

「何も食べていないのにずっと吐き気もするんです。食事もできないし、38〜39℃ぐらいの熱が出ていたと思います。ソワソワするし、すごくネガティブになるし、嫌なことばかり考えてしまう。余計なことばかり……。めちゃくちゃしんどいです」

人によるが、離脱症状は3日から1週間続くと言われている。どこが痛いわけではないが、まるで生きた心地がしない。この苦痛から逃れる唯一の手段が「飲酒」なのだ。

「夕方まで頑張ったのですが、どうにかなりそうで……。目の前にあるコンビニという『薬局』に駆け込んだんです。500mlのハイボールを2本、つまり1リットルを一気飲みしたところ、体中に酒が回って、4時間後にはちゃんと字が書けるようになりました。これが3カ月続いたので、『もう我慢しないで飲もう』という気持ちになったのです」

◆夢か現実か分からなくて漏らした

もちろん、こんなに体を痛めつけて生きていて、健康でいられるわけがない。

「去年は小便と大便をそれぞれ2回ずつ漏らしました。夢の中でトイレにいて小便していたのですが、パッと起きた時に夢か現実か分からなくて、気づいたら思いっきり漏らしていました」

体だけでなく、金銭的にも余裕はない。

「お店をやっているので計算は早いですが、普段自分が飲んでいる酒の代金なんて考えたくないですね。1日177円を20本で3540円。でも、食事をしないことを考慮すれば、そこまで青ざめるような金額ではない。ただ、これが1カ月、1年、3年と続くと、『払えるけど、何も残らんな』というやるせない気持ちになります」

1日に3540円も使っているということは、1カ月で10万円分はストロング系に費やしていることになる。ただ、CANTAさんは勤務中以外にも居酒屋や家でも飲んでいるため、それを計算に入れると、もう……。

この金でお店の設備を充実させたり、家族にプレゼント、あるいは貯金することもできただろう。しかし、CANTAさんにとって酒は必要経費なのだ。