伝統のしょうゆ木おけ、被災地輪島に寄贈へ 埼玉の業者「同志として力になりたい」

埼玉県川島町のしょうゆ業者「笛木醤油」が、能登半島地震で被災した石川県輪島市の同業者を支援しようと巨大な「木おけ」を製作した。伝統的なしょうゆ造りに欠かせないが、輪島市の「谷川醸造」では蔵が全壊し大半の木おけが使えない事態に。新たな蔵が完成する今夏にトラックで送り届ける予定で、笛木醤油の笛木吉五郎社長(45)は「しょうゆ造りを守ってきた同志として、力になりたい」と語る。(共同通信=滝島俊一)
寄贈を思い立ったきっかけは2024年元日の震災直後、付き合いがあったおけ職人の湯浅啓司さん(42)から谷川醸造の窮状を聞いたことだった。谷川醸造は1918年からしょうゆ造りを手がけてきたが、震災で保管していた木おけ12個のうち10個が破損し、使えなくなった。
笛木醤油も2019年の台風16号で取引先の業者が大きな打撃を受けた経験があり、「何か少しでも背中を押すことはできないか」と支援方法を模索。2025年8月から、直径と高さがそれぞれ約2メートルある20石(約3600リットル)の木おけの製作を開始。しょうゆの醸造に適した優しい香りを持つ奈良県産の杉と徳島県産の竹を選び、湯浅さんの弟子らの助けを借りて2025年11月に完成した。
「木おけ仕込みの魅力は、独自の味わいが出るところ」と笛木社長。社長によると、現代のしょうゆ造りはステンレスやプラスチック製のタンクを使うのが主流で、木おけで仕込まれるしょうゆは国内流通量全体の約1%とごくわずか。手間や時間はかかるが、おけに生息する酵母菌や微生物の働きで、味に独特の深みが出るという。
笛木醤油は2025年3月にも、被災で現地消費が困難だった石川県珠洲市産の大豆1.8トンを引き取った。できあがったしょうゆの売り上げの一部は能登復興のため寄付する予定だ。笛木社長は「これからも、できる限り支援を続けていきたい」と意気込んでいる。

