「全員が私のことを嫌い」恐怖のなか演じた『極悪女王』で唐田えりかが白石和彌監督からもらった言葉
2年半の休業期間中、「1日も芝居をしない日はなかった」という唐田えりかさん。演じたい気持ちはあれど、自分が人前に立っていいのか、カメラの前に立てるのかという恐怖心を常に抱いていたといいます。そんななかで受けたNetflix『極悪女王』のオーディション。女子プロレスラーのダンプ松本の半生を描いた大ヒット作のオーディションで、白石和彌監督がかけてくれた言葉が、唐田さんの背中を押しました。
女優・唐田えりかさんの連載『面影』第11回。写真家の濱田英明さんに撮り下ろしていただいた小樽の景色とともにお楽しみください。
「誰が私を見たいのか?」
お芝居の仕事をしばらくしていなかった約2年半、私は毎日所属している事務所に通っていた。
その時間の中で、毎日社長と決まった時間に話し、毎日本を読みレポートにし、毎日映画を見て、毎日芝居をし、自分で撮影して社長に提出していた。
仕事はしていなかったが、一日も芝居をしなかった日はなかった。
それでも、再び、カメラの前、人前に立ち、自分は演じることができるのだろうかという恐怖が常にあった。
またお仕事をもらえるのかという怖さも当然だが、すっかり自信が無くなってしまった自分が、人前に立ち沢山の視線を浴びることに耐えられるか分からなかった。
誰が私を見たいのか?必要としてくれるのか?
全員が私のことを嫌いだろう。
そもそもこの世界に存在していいのか。
その恐怖に対して真っ直ぐ立てるだろうか。
そんな中で受けたオーディションが『極悪女王』だった。
その『極悪女王』の監督、白石和彌さんのことを今回は語らせていただきたい。
オーディション会場で震えが止まらなかった
白石さんの作品は、この世界に入る前から観ていた。人間の本質を真っ向から描いてるエネルギーをどの作品からも感じていた。
だからこそ、私はオーディションを受けに行った。
その中で戦いたい。戦うしかなかった。
今の私は、自分に自信がない。だけど、この演じたいというエネルギーの高さだけは誰よりも自信があった。
会場に入り、久しぶりに見る人数のオーディションの規模に早速怖さが滲んだ。
顔を隠すかのように、斜め下を見つめていた。
名前を呼ばれ、部屋に入ると、白石さんを中心に沢山の人がずらっと並んで座っていた。
本当に久しぶりに沢山の人の視線を浴びている。それだけで震えが止まらなかった。
気を抜いたら、いつでも涙が溢れてしまいそうだった。
「今の唐田えりかってこんな感じなんだ」そんな考えても仕方がない他者の視線が自分に刺さってきた。
だけど、私はここまでの時間から逃げなかったはずで、覚悟してここに来たんだ。と自分を奮い立たせた。
期待と決意
そして、芝居を見てもらう時間がきた。
全身の震えをおさえるように、思いっきり息を吸い全身に気合いを送った。
白石さんの「よーい、スタート」から「カット」まで記憶がない。
必死だった。芝居をすることに。そんな緊張から解放されたとき、白石さんが「素晴らしい」と目をしっかり見て伝えてくれた。
私はあの瞬間、泣き出してしまいそうだった。
お世辞でもいい。でもお世辞ではなかったあの声と目に、私はどれだけ救われただろうか。
しばらくして、主人公のダンプ松本の一番のライバルの長与千種役の合格を社長とマネージャーさんから大きなサプライズと共に知らされた。
白石さんが強く私を推してくださったことも、同時に知った。
私はこの役を、この人たちのことを背負って演るんだとそこで決意した。絶対に失望させない。自分の全てをぶつけると。
自分と本当に向き合った人は強い
過酷なトレーニングの日々を重ね、撮影が間近に迫り、まだそんなに話したことがない白石さんと話したくて「撮影がもうすぐなので何か言葉をください!」と率直に言ってみた。
すると白石さんは「なんだよもー」と優しく笑いながらも、「唐田さんは長与千種に必要な要素を持ってる。自分と本当に向き合った人は強い。だから唐田さんが演じれば、それでいい。思いっきりやりな」と言ってくれた。
私はこの言葉をメモに残し、撮影期間中何度もこの言葉を見返し支えてもらった。
白石さんのようなかっこいい人間に
白石さんは、撮影期間中も「素晴らしかった」と何度も言葉にしてくれた。
演じながら、白石さんが楽しんでくれたらいいなといつからか思うようになった。
白石さんに会うまで、その骨太な映画の印象から、厳しく怖い人なのではないかと勝手に思っていたが、撮影を共にするうちに、ただ本当に映画が大好きな少年のような印象に変わった。
白石さんの今までの人生のことを私は深く知らない。
けどその眼差しや深い優しさは、今までの人生が滲んだものなのだと、時たま思う。
私もそんなかっこいい人間になりたい。
後編 唐田えりかが『極悪女王』で見つけた諦めない理由では、『極悪女王』最終話、唐田さん演じる長与千種が髪を刈り取られる「髪切りデスマッチ」で、実際に坊主にしたあとの唐田さんに白石監督がかけた言葉が明かされます。
【スタッフ】
撮影/濱田英明 スタイリング/道端亜未 ヘアメイク/尾曲いずみ
【衣装クレジット】
カーディガン \31,900・トップス \25,300/THE SHINZONE
スカート \23,980/MEYAME×Shinzone
フィンガーグローブ ¥9,900/cash & barba
その他/スタイリスト私物
【問い合わせ先】
Shinzone OMOTESANDO FLAG SHIP STORE 電話番号:070-1389-5295
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