高田純次が見せる“恐怖”と福本莉子の“誠実さ” 『ラムネモンキー』で衝撃を作り出す2人
●「芝居に妥協がない」噂は本当だった
反町隆史、大森南朋、津田健次郎のトリプル主演で、“こんなはずじゃなかった”大人たちの再会と再生を描いた「1988青春回収ヒューマンコメディ」のフジテレビ系ドラマ『ラムネモンキー』(毎週水曜22:00〜 ※TVer、FODで配信/FODで次話先行配信)の第10話が、18日に放送された。
いよいよ事件の真相に近づきつつあるが、それをひっくり返すような展開の魅力と、その衝撃を作り出す高田純次と福本莉子について語ってみたい。

(左から)高田純次、福本莉子 (C)フジテレビ
○【第10話あらすじ】UFO出現! マチルダが帰ってきた…!?
マチルダこと宮下未散(木竜麻生)の殺害を依頼した「トレンディさん」こと望月は、映画研究部のNo.12のビデオテープを探していたようだ。そのテープには「黒江の婆さん」の家で吉井雄太(反町)たちの追及により、大物政治家の加賀見六郎(高田)に依頼されたアホの八郎こと多胡秀明が、マチルダこと宮下未散(木竜麻生)を手にかけたことが判明する。マチルダは黒江恵子から加賀見が映っているビデオテープを託され、説得や脅しにも屈せずにそれを守り通し、加賀見の指示によって消されたのだ。
雄太、藤巻肇(大森)、菊原紀介(津田)、西野白馬(福本)は加賀見の屋敷に押しかける。雄太の兄・健人(松村雄基)が止めるのも聞かず居座る雄太たちを、加賀見は応接室へ通す。プリンを食べながら雄太たちの話を聞く加賀見。一同は黒江の婆さんとマチルダを殺したのではと問うが、加賀見はまったく動揺することなく己を正当化する。
健人は、自分たちはテープを渡すように再三マチルダを説得したが、期限の日にマチルダが持ってきたのは別の馬鹿げたテープだったと話す。加賀見は雄太ら一人ひとりのプライベートな事情について語りかけ、暗に脅しをかける。加賀見からのプリンを手に、黙り込む雄太たち…。
一同はそれぞれの生活に加賀見の影響が及んでいることを自覚し、これ以上戦えば周囲に迷惑がかかり、生活を失いかねないと戦慄する。白馬が働くカフェで、加賀見からもらったプリンを食べるか逡巡する一同。白馬はふと、健人が口にした「馬鹿げたテープ」とは何なのだろうとつぶやく。それを聞いた3人は、あることを思い出す。それは街にロケに来た「タケちゃんマン」のOP映像撮影があったこと。だがそれは、お蔵入りになり、テレビ局がその街のために編集したものを上映会で披露したという事実だった。
上映会の記憶の謎が解けた時、白馬のアカウントにマチルダの元夫だという人物からの連絡が入る。会いに行った4人は、実はマチルダには一人娘がいたこと。その娘が亡くなったこと。マチルダのオリジナルキャラ「とんちゃん」はその娘とその名が由来であること。そして「空想と現実どちらが本当か。時空が溶ければその価値は等価となる」と話された記憶が蘇る。そしてマチルダが元夫へ送った最後のハガキの言葉は、マチルダの文字で、こうしめくくられていた。「きれいに生きたい」──
中学時代、マチルダと別れた高台へ行く4人。雄太は、マチルダの「きれいに生きたい」の言葉を遺言のように感じ、執行猶予を捨て、加賀見を訴える逆転裁判の決断をする。その時だった! 空が荒れ、暗雲たれこめ、そこからUFOが出現したのだ。そして光の筋の中には、マチルダの姿が。それを見た白馬は「時空が溶けた…」と驚きの声を漏らす。

(左から)反町隆史、大森南朋、津田健次郎 (C)フジテレビ
○リアリティ重視から突然ファンタジーへ
いやあ。この回は、高田純次がとにかく怖かった。何か、特別な芝居をしたわけではない。ただ、政治家の加賀美として、雄太、肇、紀介のプライベート事情を次々と話していき、最後に白馬まで。この時、恐怖は最高潮に達した。アラフィフ3人は、もうそれほど先もない人生である。だが、白馬は違う。未来あふれる若者であり、しかも唯一の女性。おじさん3人も同じ気持ちだったに違いない。「白馬まで危険にさらされる──!」。白馬を守りたいと感じたのが、引き下がる決め手だったのではないだろうか。
「芸能界一のテキトー男」と称賛される高田だが、こと芝居については妥協がないという声は方々から聞いていた。そして、4人の背景を語る姿も、決して「脅している」という芝居は一切、見せなかった。何を考えているかわからない政治家として、何をするかわからない政治家として、ただただ普通に、そこに“いた”。
このリアルが怖かったのだ。ヤクザ役ではない。チンピラ役ではない。見るからに怖い芝居は、時にコメディとなってしまう。その中で高田は、あえて何の意図も感じさせない普通のおじさんのような芝居を見せた。
もともとコメディ要素が強い本作において、このリアルは分岐点となった。そこに“いる”だけの佇まいや表情で、"正体や素顔を見せずに“、話すべきことだけを話して即立ち去るその芝居は、まさに権力者による脅しそのもののように見えた。そして、これがリアルだったからこそ、その後の3人の大人の事情やプライベートの描写もよりリアルさを増した。
同時に別の疑惑も浮かんだ。本当に、マチルダ暗殺を指示したのは、この男なのだろうか。実はいい人なんじゃないだろうか──?
かように立体的に人物が見えるよう脚本を書いた古沢良太氏も素晴らしいが、これを体現した高田もすごい。無理に権力者のオーラを出すこともなく、美味しそうにプリンを頬張る。役者ならここで、その不気味さを芝居で見せようとしたがるものだが、高田にそれはなかった。「芝居に妥協がない」の数々の噂は本当だったわけだ。

(C)フジテレビ
さらにここから生まれたリアルのおかげで、ラストのあり得ない状況が際立った。本来、古沢氏のマンガが原作なだけあり、本作はマンガ的な空気が強かったが、高田の芝居から後のエピソードでは、リアリティが強めに描かれた。反町も『相棒』時のようなシリアスな芝居を見せ、その本領を発揮していたように思う。そこに来て、UFOの出現! リアルから突如、ファンタジーへ。
まったく展開が読めない。白馬ですら、おじさん3人に影響されて、妄想癖がついてしまったのか…? 古沢氏の手のひらの上で踊るだけ踊らされた第10話と言ってもいいだろう。
●福本莉子のフレッシュ感が浮かない理由

(C)フジテレビ
この物語には、もう一人、なくてはならない存在がいる。それは、白馬を演じる福本莉子だ。
コミュニケーション能力の不足を克服するために「ガンダーラ珈琲」で働いていたが、雄太ら3人に協力し、マチルダの捜索に加わることになる。そんな福本が画面にいるだけで、そのシーンが突如、フレッシュ感を得る。
フレッシュ感が必要なだけならば、福本でなくともいい。だが福本がすごいのが、あのベテラン俳優3人に混ざり、まったく見劣りしないことなのだ。福本は、決して“天才”タイプの女優ではない。2022年の「タウンワーク」のインタビューでは、「リアルさを徹底的に追求し、役作りでは資料や観察、検証を重視する」と語っており、感覚で演じるタイプではなく、現実の人間を分析し、再現するタイプの演技観を持っていることを話している。
また2023年の『VOCE』では、「『できない』とは言わない覚悟」を語っており、かなりストイックで、職業・女優としての責任を最優先する“プロ型”。それでいて、2022年のマイナビニュースでは、「好きなことへの没頭が人生や仕事につながる。楽しさが原動力」とも語っており、好きという感情を大切にする柔らかさも併せ持っている。
徹底した観察力を持っているからこそ、反町らベテラン3人の芝居に呼吸を合わせられるのであり、「好き」や「柔らかさ」があるからこそ、フレッシュ感が画面に反映される。ベテランの芝居にフレッシュ感があっても浮かない。バランスを取って画面に存在するということができる。「才能」よりも「積み重ね」と「誠実さ」に重きを置いた女優なのだ。
ちなみに彼女は「東宝シンデレラ」グランプリ出身だが、このスタートも良かった。「東宝シンデレラ」出身女優で、すぐにデビューする女優は少ない。おそらく、その名に恥じぬようみっちりと稽古を受けてからでなければ芝居をさせてもらえず、それが単なる新人女優との相違だと筆者は思っている(福本もグランプリから芝居の仕事まで2年を要している)。
ベテラン3人でも画は成り立つ。だが、そこに福本がいることで、画面が華やぐ。そのフレッシュ感は、本作のタイトルから例えれば、いわゆる「ラムネ」のような爽やかな存在だ。
いわば、白馬=福本は、4人目の「ラムネモンキー」。そんな彼女が見たUFOは、現実か幻か──。第11話でそれは明らかになるだろう。どんな設定でこんな展開となったのか。だが、どんな展開であっても、福本ならフレッシュ感満載に魅せてくれるだろうという安心感があるのが、とてもうれしい。





(C)フジテレビ
衣輪晋一 きぬわ しんいち メディア研究家。インドネシアでボランティア後に帰国。雑誌「TVガイド」「メンズナックル」など、「マイナビニュース」「ORICON NEWS」「週刊女性PRIME」など、カンテレ公式HP、メルマガ「JEN」、書籍「見てしまった人の怖い話」「さすがといわせる東京選抜グルメ2014」「アジアのいかしたTシャツ」(ネタ提供)、制作会社でのドラマ企画アドバイザーなど幅広く活動中。 この著者の記事一覧はこちら
反町隆史、大森南朋、津田健次郎のトリプル主演で、“こんなはずじゃなかった”大人たちの再会と再生を描いた「1988青春回収ヒューマンコメディ」のフジテレビ系ドラマ『ラムネモンキー』(毎週水曜22:00〜 ※TVer、FODで配信/FODで次話先行配信)の第10話が、18日に放送された。
いよいよ事件の真相に近づきつつあるが、それをひっくり返すような展開の魅力と、その衝撃を作り出す高田純次と福本莉子について語ってみたい。

○【第10話あらすじ】UFO出現! マチルダが帰ってきた…!?
マチルダこと宮下未散(木竜麻生)の殺害を依頼した「トレンディさん」こと望月は、映画研究部のNo.12のビデオテープを探していたようだ。そのテープには「黒江の婆さん」の家で吉井雄太(反町)たちの追及により、大物政治家の加賀見六郎(高田)に依頼されたアホの八郎こと多胡秀明が、マチルダこと宮下未散(木竜麻生)を手にかけたことが判明する。マチルダは黒江恵子から加賀見が映っているビデオテープを託され、説得や脅しにも屈せずにそれを守り通し、加賀見の指示によって消されたのだ。
雄太、藤巻肇(大森)、菊原紀介(津田)、西野白馬(福本)は加賀見の屋敷に押しかける。雄太の兄・健人(松村雄基)が止めるのも聞かず居座る雄太たちを、加賀見は応接室へ通す。プリンを食べながら雄太たちの話を聞く加賀見。一同は黒江の婆さんとマチルダを殺したのではと問うが、加賀見はまったく動揺することなく己を正当化する。
健人は、自分たちはテープを渡すように再三マチルダを説得したが、期限の日にマチルダが持ってきたのは別の馬鹿げたテープだったと話す。加賀見は雄太ら一人ひとりのプライベートな事情について語りかけ、暗に脅しをかける。加賀見からのプリンを手に、黙り込む雄太たち…。
一同はそれぞれの生活に加賀見の影響が及んでいることを自覚し、これ以上戦えば周囲に迷惑がかかり、生活を失いかねないと戦慄する。白馬が働くカフェで、加賀見からもらったプリンを食べるか逡巡する一同。白馬はふと、健人が口にした「馬鹿げたテープ」とは何なのだろうとつぶやく。それを聞いた3人は、あることを思い出す。それは街にロケに来た「タケちゃんマン」のOP映像撮影があったこと。だがそれは、お蔵入りになり、テレビ局がその街のために編集したものを上映会で披露したという事実だった。
上映会の記憶の謎が解けた時、白馬のアカウントにマチルダの元夫だという人物からの連絡が入る。会いに行った4人は、実はマチルダには一人娘がいたこと。その娘が亡くなったこと。マチルダのオリジナルキャラ「とんちゃん」はその娘とその名が由来であること。そして「空想と現実どちらが本当か。時空が溶ければその価値は等価となる」と話された記憶が蘇る。そしてマチルダが元夫へ送った最後のハガキの言葉は、マチルダの文字で、こうしめくくられていた。「きれいに生きたい」──
中学時代、マチルダと別れた高台へ行く4人。雄太は、マチルダの「きれいに生きたい」の言葉を遺言のように感じ、執行猶予を捨て、加賀見を訴える逆転裁判の決断をする。その時だった! 空が荒れ、暗雲たれこめ、そこからUFOが出現したのだ。そして光の筋の中には、マチルダの姿が。それを見た白馬は「時空が溶けた…」と驚きの声を漏らす。

○リアリティ重視から突然ファンタジーへ
いやあ。この回は、高田純次がとにかく怖かった。何か、特別な芝居をしたわけではない。ただ、政治家の加賀美として、雄太、肇、紀介のプライベート事情を次々と話していき、最後に白馬まで。この時、恐怖は最高潮に達した。アラフィフ3人は、もうそれほど先もない人生である。だが、白馬は違う。未来あふれる若者であり、しかも唯一の女性。おじさん3人も同じ気持ちだったに違いない。「白馬まで危険にさらされる──!」。白馬を守りたいと感じたのが、引き下がる決め手だったのではないだろうか。
「芸能界一のテキトー男」と称賛される高田だが、こと芝居については妥協がないという声は方々から聞いていた。そして、4人の背景を語る姿も、決して「脅している」という芝居は一切、見せなかった。何を考えているかわからない政治家として、何をするかわからない政治家として、ただただ普通に、そこに“いた”。
このリアルが怖かったのだ。ヤクザ役ではない。チンピラ役ではない。見るからに怖い芝居は、時にコメディとなってしまう。その中で高田は、あえて何の意図も感じさせない普通のおじさんのような芝居を見せた。
もともとコメディ要素が強い本作において、このリアルは分岐点となった。そこに“いる”だけの佇まいや表情で、"正体や素顔を見せずに“、話すべきことだけを話して即立ち去るその芝居は、まさに権力者による脅しそのもののように見えた。そして、これがリアルだったからこそ、その後の3人の大人の事情やプライベートの描写もよりリアルさを増した。
同時に別の疑惑も浮かんだ。本当に、マチルダ暗殺を指示したのは、この男なのだろうか。実はいい人なんじゃないだろうか──?
かように立体的に人物が見えるよう脚本を書いた古沢良太氏も素晴らしいが、これを体現した高田もすごい。無理に権力者のオーラを出すこともなく、美味しそうにプリンを頬張る。役者ならここで、その不気味さを芝居で見せようとしたがるものだが、高田にそれはなかった。「芝居に妥協がない」の数々の噂は本当だったわけだ。

さらにここから生まれたリアルのおかげで、ラストのあり得ない状況が際立った。本来、古沢氏のマンガが原作なだけあり、本作はマンガ的な空気が強かったが、高田の芝居から後のエピソードでは、リアリティが強めに描かれた。反町も『相棒』時のようなシリアスな芝居を見せ、その本領を発揮していたように思う。そこに来て、UFOの出現! リアルから突如、ファンタジーへ。
まったく展開が読めない。白馬ですら、おじさん3人に影響されて、妄想癖がついてしまったのか…? 古沢氏の手のひらの上で踊るだけ踊らされた第10話と言ってもいいだろう。
●福本莉子のフレッシュ感が浮かない理由

この物語には、もう一人、なくてはならない存在がいる。それは、白馬を演じる福本莉子だ。
コミュニケーション能力の不足を克服するために「ガンダーラ珈琲」で働いていたが、雄太ら3人に協力し、マチルダの捜索に加わることになる。そんな福本が画面にいるだけで、そのシーンが突如、フレッシュ感を得る。
フレッシュ感が必要なだけならば、福本でなくともいい。だが福本がすごいのが、あのベテラン俳優3人に混ざり、まったく見劣りしないことなのだ。福本は、決して“天才”タイプの女優ではない。2022年の「タウンワーク」のインタビューでは、「リアルさを徹底的に追求し、役作りでは資料や観察、検証を重視する」と語っており、感覚で演じるタイプではなく、現実の人間を分析し、再現するタイプの演技観を持っていることを話している。
また2023年の『VOCE』では、「『できない』とは言わない覚悟」を語っており、かなりストイックで、職業・女優としての責任を最優先する“プロ型”。それでいて、2022年のマイナビニュースでは、「好きなことへの没頭が人生や仕事につながる。楽しさが原動力」とも語っており、好きという感情を大切にする柔らかさも併せ持っている。
徹底した観察力を持っているからこそ、反町らベテラン3人の芝居に呼吸を合わせられるのであり、「好き」や「柔らかさ」があるからこそ、フレッシュ感が画面に反映される。ベテランの芝居にフレッシュ感があっても浮かない。バランスを取って画面に存在するということができる。「才能」よりも「積み重ね」と「誠実さ」に重きを置いた女優なのだ。
ちなみに彼女は「東宝シンデレラ」グランプリ出身だが、このスタートも良かった。「東宝シンデレラ」出身女優で、すぐにデビューする女優は少ない。おそらく、その名に恥じぬようみっちりと稽古を受けてからでなければ芝居をさせてもらえず、それが単なる新人女優との相違だと筆者は思っている(福本もグランプリから芝居の仕事まで2年を要している)。
ベテラン3人でも画は成り立つ。だが、そこに福本がいることで、画面が華やぐ。そのフレッシュ感は、本作のタイトルから例えれば、いわゆる「ラムネ」のような爽やかな存在だ。
いわば、白馬=福本は、4人目の「ラムネモンキー」。そんな彼女が見たUFOは、現実か幻か──。第11話でそれは明らかになるだろう。どんな設定でこんな展開となったのか。だが、どんな展開であっても、福本ならフレッシュ感満載に魅せてくれるだろうという安心感があるのが、とてもうれしい。





(C)フジテレビ
衣輪晋一 きぬわ しんいち メディア研究家。インドネシアでボランティア後に帰国。雑誌「TVガイド」「メンズナックル」など、「マイナビニュース」「ORICON NEWS」「週刊女性PRIME」など、カンテレ公式HP、メルマガ「JEN」、書籍「見てしまった人の怖い話」「さすがといわせる東京選抜グルメ2014」「アジアのいかしたTシャツ」(ネタ提供)、制作会社でのドラマ企画アドバイザーなど幅広く活動中。 この著者の記事一覧はこちら
