横浜市が路上喫煙全面禁止へ向けて動き出している。しかし、密閉性の高い喫煙所を1カ所設置するには家1軒分ほどの費用がかかる。こうした、喫煙環境の整備に関する費用は、どこまで税金から拠出し、喫煙者・非喫煙者でどう分担するのがよいのか。

【映像】路上喫煙で注意された男性が取った行動(実際の様子)

 ニュース番組『わたしとニュース』では、喫煙所の設置をはじめとする対策費の負担や、吸う人の権利・吸いたくない人の権利について、弁護士の三輪記子氏とともに深掘りした。

■喫煙所1カ所に3000万円以上…非喫煙者から不満の声も

 去年1月、路上喫煙全面禁止となった大阪市。喫煙所の設置やその維持費、パトロールの委託など、今年度の対策費の予算は20億円を超えた。

「そこにお金をかける必要はないのでは」(大阪市民の声)

 また、来年1月頃から全面禁止を目指す横浜市では、密閉性の高い喫煙所を設置する場合、1箇所あたり3000万円以上の費用がかかると試算していて、悩みの種となっている。

 喫煙所設置に伴う原資は税金であるため、非喫煙者からは「喫煙所などを設置するお金があるなら、他のことに使ってください」といった不満の声も上がっている。

 こうした声について、たばこ政策に詳しい近畿大学経済学部の村中洋介准教授は「たばこを吸わない人たちからすると、極論言うと『もう禁煙しろよ』みたいな話ですけど、ただそれを言い出すと多分『じゃあお酒は』『体に悪いもの全部、脂肪も糖分も規制かけましょう』みたいな話になってしまうので、それはやっぱり不自由な社会になるから、国がルール上OKだよって言っているものは、基本的にはみんな自由は共有しましょうと」と語る。

 喫煙者、非喫煙者の共存のポイントは「分煙」だ。では誰がどう負担するべきなのか。喫煙者からは「せめてたばこ税で喫煙所をもっと量産してもらえません?」「地方たばこ税をたばこを吸う人に還流すべき」といった声も上がっている。

 たばこの金額の半分以上を占めるたばこ税の一部は、地方自治体にも地方たばこ税という形で入るため、自治体にとって貴重な財源となっている。年間で、大阪市は約300億円、横浜市は約230億円だ。しかし、市の担当者は次のように説明する。

「もちろんたばこ税という税収もあるんですけど、たばこ税は『目的税』ではないので、たばこ税収がそのまま喫煙所に建設に充てられるものはないので、まずは予算、市の予算をしっかりと確保していくことが必要」(横浜市 街の美化推進課 津島邦宏課長)

 たばこ税は一般財源に組み込まれることから、使い道は特定されていない。そのため、すでに自治体に必要なさまざまな事業全般に活用されている。

 村中氏は「たばこ吸っている人からすると、『俺らの払った税金や』という気持ちはあるはずだが、たばこ吸わない人間からするとやっぱり『だって目的税じゃないんだから』という。結局そこですよね。今まで別のところに使っていたお金をあえてたばこ(対策)に使うのかと言われると、それってちょっと違うよね。たばこ税収で(たばこ対策のために)使っていいのはせいぜい2、3割までかな。あとの7、8割は我々のために使ってくれると思えば、税金払ってくれてありがとうという気持ちになるのでは」と指摘した。

■三輪氏「たばこ対策はみんなのための費用」

 喫煙所の設置や巡回指導などの対策費用は基本的に地方自治体の税金から出ている。受動喫煙が防止されることで非喫煙者にもメリットはあるが、納得感を得るためにはどうすればよいのか。

 三輪氏は非喫煙者の心情に触れて「やはりたばこの特殊性なのだろう。迷惑な吸い方をする人もいる。その人たちのためにみんなの税金を使うのかみたいな感覚になってしまう心情も理解はできる」と語った。

 一方で、分煙のために税金を使うことには肯定的な見方を示す。

「分煙はたばこを吸う人のためでもあるし、吸わない人のためでもある。みんなのための費用を使うという発想のもと、税金を投入して喫煙所を増やす考え方は十分あり得ると思う。」

「『誰かが得をしているからそこに税金を使うのはどうか』という発想をしていくと、例えば、『子育て支援は税金がたくさん使われているけれども、子供がいない人には何のメリットもないじゃないか』など、社会の分断がどんどん生まれていってしまう気がする。そうではなく、特定の人のためのものかどうかについても今一度考えていくべき事案だと思う」

 一方、喫煙者と非喫煙者では、望んでいる喫煙対策が違うという結果が、大阪市のアンケート調査で示された。喫煙者は「喫煙所をもっと増やすべき」、非喫煙者は「過料や巡回指導を増やすべき」と考えている傾向が読み取れる。

 分煙を進めるにしても、どこにどのくらい資源を配分していくか、双方納得がいくポイントはあるのだろうか。

「どこがいいラインなのかはまだ見えにくいが、少しずつ喫煙所を増やすことは必要。非喫煙者の納得感というところで“過料”は結構ポイントだなと思った。やはり過料が低すぎると守らない人もいるのではないかという気持ちになるのだなと。参考になるアンケートだと思う」

(『わたしとニュース』より)