(※写真はイメージです/PIXTA)

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資産3,000万円と十分な年金があり、本来は働く必要のない孫溺さん(仮名・67歳)。孫娘の教育費を支援したいという申し出を、老後を心配する娘に一度は断られますが、自ら働いて得た「給料」という形にすることで、快く受け取れる新しい家族の関係性を築きました。自らの労働で大切な人を支える喜びを見出した、前向きなシニアのライフスタイルの事例を紹介します。

「孫娘の塾代を払ってあげたい」資産があっても働きに出る

「孫のためなら喜んで働けますし、それが今の私の生きがいなんです。自分が稼いだお金だからこそ、娘にも孫にも胸を張って渡せます」

都内で花屋のアルバイトをしている孫溺尽代さん(仮名・67歳)は、充実した表情で語りました。

都内在住の孫溺さんは、事務職として定年まで勤めあげ、約3,000万円の蓄えがあります。都内の自宅はローンを完済しており、夫婦合わせた年金は月22万円。普通に暮らす分には、本来働く必要はありません。

それでも孫溺さんが時給1,500円の仕事に出るようになったのは、中学2年生の孫娘が「難関校を目指して、塾を掛け持ちしたい」と相談してきたことがきっかけでした。

「娘夫婦も共働きで頑張っていますが、最近の物価高もありますし、住宅ローンの返済も大変そう。そこに塾代となると、相当な負担だろうなと思ったんです」

孫溺さんは当初、手元の貯蓄から援助することを申し出ました。しかし、娘からは意外な言葉が返ってきました。

「お母さん、気持ちは嬉しいけど受け取れないよ。これ、お母さんたちの老後のお金でしょ。自分たちでなんとかするからいいよ」

娘の気遣いを汲みつつも、孫溺さんは孫に最善の教育環境を与えたいという願いを捨てきれませんでした。そこで思いついたのが、自分が新たに働いて、その給料を孫の教育費に充てるという道でした。

親子の納得感が生まれた「アルバイト代」という形

「老後の貯金を崩すのは、娘が嫌がってね。でも、私が今月稼いだお給料なら受け取ってくれるんです」

「給料」という形で渡すようになってから、娘さんの反応は変わったといいます。娘にとって、親の貯蓄は将来の備えであり、手をつけるのは心苦しいもの。一方、新しく稼いだお金なら、貯蓄を減らさずに済みます。この形が、親子のしこりを消しました。

「話のネタができたのもありがたい。以前はテレビの話ばかりだったけれど、今は職場の出来事を娘に話しています」

孫の塾代を稼ぐという目的に加え、仕事で得た日常の話題が、家族との会話を弾ませているようです。

「孫の講習代を払えたときは、本当に嬉しかった。今は模試の結果を報告してもらうのが一番の楽しみなんです」

孫溺さんにとって現在のアルバイトは、自分の安心を守りつつ、大切な家族の力になるための「納得感のある選択」となっています。

データから読み取る、65歳以上が自ら「アルバイト」を希望する理由

孫溺さんのような選択は、現在のシニア層における前向きな就労の行動原理と結びついています。

株式会社マイナビの「ミドルシニア/シニア層のアルバイト調査(2025年)」によると、65歳以上のアルバイト就業者のうち、現在の雇用形態を望んだ働き方と回答した割合は67.0%に達しました。

実に3人に2人以上が、自らの意思でアルバイトという働き方を選び、希望通りに就業している実態が明らかになっています。一方で、生活のために致し方なく従事している、いわゆる「望まぬアルバイト」の割合は、わずか18.1%にとどまっています。

加藤さんの事例が示すように、一定の資産を持ちながらもあえて現場に立ち、自分や家族のために納得感のある収入を得るというスタイルは、決して「無理やり働かされている」姿ではありません。前向きな就労を選択するシニアが増えている背景には、加藤さんのように自由なお金を確保することで、家族への気兼ねないサポートや自己充足感を得ようとする心理が働いているのかもしれません。

生活のセーフティネットとなる資産があるからこそ、自らの希望に沿った形で社会とつながり続ける。そんな自立したシニアのライフスタイルが、統計データからも裏付けられています。

[参考資料]

株式会社マイナビ「ミドルシニア/シニア層のアルバイト調査(2025年)」