お金はあの世に持っていけないんだから…資産3億円「資産家の父」に甘えて好き放題の49歳次男。無職で“親のベンツを乗り回す生活”終了までのカウントダウン
多くの親にとって、わが子はいくつになってもかわいいもの。そんなわが子が「実家で暮らしたい」と望むのであれば、多少家計に負担がかかっても喜んで受け入れるという人もいるのではないでしょうか。しかし、子を甘やかしすぎた結果、親が晩年に“思いもよらない苦労”を背負ってしまうことも……。事例をもとにみていきましょう。
資産3億円の80代夫婦の悩みは無職の次男
タツオさん(仮名:80歳)は複数の賃貸不動産を所有している資産家です。昨今の地価高騰による恩恵もあり、資産総額は3億円を超えています。
そんなタツオさんは先月誕生日を迎え、80歳になりました。そろそろ相続について真剣に考えなければいけません。
タツオさんの現在の収入は年金と家賃収入の2本立て。基本生活費は夫婦二人の年金収入の範囲内で足りているため、控えめにいっても金銭的にはかなりの余裕があります。
家賃収入のほとんどは予備費に回っており、その一部の使い道は年2回の温泉旅行でした。日常生活では特に贅沢をすることはありませんが、この時だけは、高級旅館に宿泊してゆっくり温泉につかり、豪華な料理に舌鼓を打つことが大きな楽しみとのことです。
悠々自適な生活に見えますが、タツオさんには唯一の悩みの種がありました。それが、実家暮らしの次男・サトルさん(仮名:49歳)の存在です。
父親のベンツを乗り回す“放蕩息子”の次男
サトルさんは、大学卒業後に地元の企業に就職したものの約2年で退職。その後も転職を繰り返すも、現在は完全な無職です。また収入が不安定なため、自立できる見込みも立たず、ずっと実家暮らし。
しかし、サトルさんは自身の状況に危機感を抱くことなく、両親にお小遣いをせびり、父の愛車のベンツに乗って遊びに出かけます。
タツオさんがお金を渡すことに難色を示すと、サトルさんは「お金はあの世に持っていけないんだよ? いいじゃないか、生きているうちに使おうよ」と言い放つそう。
タツオさんはサトルさんのことを苦々しく思いながらも、経済的余裕があるがゆえ、また手のかかるかわいさもあり、これまでズルズルと言われるがまま、年間100万円近くのお小遣いを渡していたといいます。
しかし、80歳の誕生日を迎え、タツオさんもさすがにこのままではいけないと考え始めたそうです。自分の目が黒いうちにサトルさんをどうにかしなくてはいけません。
そう考えたのには、もう一つの理由がありました。
サトルさんへの対処を急ぐ「もうひとつの理由」
タツオさんには、もう一人息子がいます。サトルさんの兄です。
その長男はとても堅実なしっかり者。結婚のときも、家を建てたときも、タツオさんの援助の申し出は受けませんでした。そのため、タツオさんはこれまで、長男には一度も金銭的な援助をしたことはありません。
長男は「自分たちのやれる範囲でやるから大丈夫。父さんたちは自分たちのためにお金を使ったらいいよ」と、日頃から言ってくれるそうです。
よくできた長男と自立できない次男という構図。これまでは長男の言葉を真に受けて、次男の援助ばかりしてきましたが、快く思っているはずはないでしょう。
タツオさんは80歳という節目を迎え、長男の気持ちに応えるためにも今できることをしておきたいと、相続について真剣に考えることを決意したのでした。
相続の基本
相続について考えるうえで、まず押さえておきたいのは次の4つです。
1.遺産相続は相続人全員の合意があれば、任意の割合で分けることが可能。しかし、合意ができない場合には法定相続割合で相続することになる。
2.法定相続割合とは、仮にタツオさんが先に亡くなると、相続人は妻と長男、次男の3人。法定相続割合は妻1/2、兄弟はそれぞれ1/4ずつ。
3.任意の割合で相続させたいのであれば、遺言書の作成が一般的。ただし、偏った相続割合は遺留分を侵害する恐れがあるため注意。相続人が配偶者と子どもである場合の遺留分の割合は、妻が遺産総額の1/4、兄弟それぞれは1/8。遺産が3億円の場合、妻の遺留分は7,500万円、子はそれぞれ3,750万円ずつ。
4.特定の誰かに多く遺産を渡したい場合は、生命保険金の受取人に指定するという方法もあり(死亡保険金は受取人の固有の財産)。
上記を押さえたうえで、タツオさんの資産の8割は不動産であるため、法定相続割合できれいに分けることは困難であることを認識しておく必要があります。
これらのことから、円満な相続を遂行するためには、遺留分を考慮した遺言書の作成が現実的かつ効果的でしょう。
なお、親が子へ行う生活費の援助は、日常生活に必要な範囲であれば贈与税の対象となりませんが、社会通念上の範囲を超えるような金額や、高額かつ定期的な資金援助は特別受益(※)みなされるリスクがあります。
(※)特別受益とは……特定の相続人が受けた利益(まとまった額の資金援助、生前贈与)のこと。相続が発生した際、「特別受益」とみなされた額が、相続時の財産に持ち戻される(加算される)。
次男を奮起させる方法は
並行して、「サトルさんを自立させるための今後の対応」も重要です。
サトルさんのこれまでの行動はひとえに甘えからくるものと思われますが、親が毅然とした態度を取ってこなかったことも一因でしょう。これからできることはそう多くありませんが、親の本気度を示すことも大切です。
具体的には、たとえば「期限」を設けて支援の打ち切りを予告する必要があります。また、相続しただけでは安泰ではない旨の説明をして危機感を煽ることも効果的です。相続税の概算を算出し、その支払いのためには不動産の売却も必要になるかもしれないと、専門家にも協力を仰ぎながら伝えるとよいでしょう。
そしてなにより、親として「自立に向けた行動をとってほしいこと」をまっすぐ伝えることが大切です。そして本気度を伝えるためにも、「できなければ相続で遺留分しか渡さない。定職について自立できた暁には相応の配分を考える」などの条件を提示してもよいかもしれません。
なお、これらは書面に残すなどして可視化しておくと、その後の行動変容を促しやすくなります。
心配ごとは「問題の本質」をとらえて整理する
今回紹介したケースのほかにも、相続の問題で相談に来た人のなかには、話しているうちに「実はまったく別の問題が潜んでいた」ということがよくあります。タツオさんも「相続の相談」といいつつ、次男の「親への依存」問題が根底にありました。
心配ごとの本質を見極めると、物事の着地点が見えてくることがあります。複雑な事情がある場合には、第三者の客観的な意見を取り入れることを検討してみましょう。
山粼 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表
