「誰のおかげでメシ食えると思ってる?」入社2年目の若手が朝礼で大演説! ウンザリして即辞表を書いた男性の回想
「誰のおかげでメシ食えると思ってるんですか」――。社長に気に入られ、入社2年目で異例のスピード出世を果たした若手社員が、朝礼で全従業員にそう言い放った。まるで漫画のような光景だ。
教育関係の仕事に就く菊池さん(仮名、50代男性)は約20年前、当時勤務していた進学塾でその場面に遭遇した。この一件をきっかけに、菊池さんは即座に辞表を書く決意を固めたという。編集部では、菊池さんに当時の状況を詳しく聞いた。(文:篠原みつき)
2年目の若手が社長の「代弁者」として豹変
当時、その進学塾は従業員100〜150人規模で、社長は「人の2倍、3倍働け」というモーレツな思想の持ち主だった。そんな中、入社2年目ほどの20代後半の男性社員が、社長に気に入られて上位ポストに大抜擢された。
「入社当初は非常に腰が低く、協調的な人物でした。ところが、責任あるポジションに就いた途端、露骨に態度が変わったんです。典型的な『権限を与えられて勘違いするタイプ』だったと思います」
その若手社員は、社長の思想を疑問なく体現していた。「長時間労働を美徳」として盆休み明けから正月までほぼ休みなしで働き、それを周囲にも当然のように強要した。同僚の中には、「自己犠牲を他人にも押し付けている」と冷ややかに見る者も少なくなかったという。
一方、菊池さんは入社5年目。同期が出世していく中で「窓際」のような立場に追いやられていた。
「問題行動の多い生徒を集めたクラスや、アルバイト講師が次々と逃げ出すクラスなど、いわゆる“誰もやりたがらない仕事”の後始末ばかりを任されていました」
「入社当初は『こんな講師になりたい』と思える実力者の先輩が何人もいました。しかし皆、転職や独立したりなど、会社に見切りをつけて次々と去って行きました。中には『会社の方針に従わない』『反旗を翻そうとしている』といった理由をでっち上げられ、追い出された人たちもいます」
気づけば、「学ぶべき先輩も、目標とすべき背中も、何一つ残っていない」、そんな状況になっていた。菊池さんは「この会社に未来はない」と確信していたという。
「よくあんなことが言えるな」
そんな閉塞感の中で迎えた、ある日の朝礼。前述の通り、上位ポジションに就いた若手社員が、全従業員を前に信じられない演説を始めた。
「みなさん、誰のおかげでメシが食えると思っているんですか」
その言葉を聞いた瞬間、菊池さんの心は冷え切った。実は、そのフレーズは菊池さんにとって、最も受け入れがたい暴言だったのだ。
「私は私生活でも、父親から同じ言葉を浴びせられて育ちました。感謝を強要し、相手を黙らせるための卑劣な言葉です。そこから逃れるために家を出たのに、職場で、しかも“成功者の演説”として再び聞かされるとは思ってもみませんでした」
演説に対する周囲の反応も冷ややかなものだった。満足気に演説を聞く社長の手前、演説終わりには全員が拍手していたものの、一歩離れれば呆れ声が漏れていた。
「後に喫煙室で『さすがにあれはない』『よくあんなことが言えるな』という声が上がっていました。でも、面と向かって言える空気ではありませんでしたね」
従業員がいなければ、会社は一日たりとも回らない。その前提を無視した傲慢な物言いに強い嫌悪感を覚えた菊池さんは、「ここに居続ける理由は一つもない」と確信。帰宅後すぐに辞表を書いた。
「人が定着しない組織」には必ず理由がある
菊池さんは、受け持っていたクラスの区切りをつけるため、年度末をもって退職した。
「もともと“便利な穴埋め要員”のような立場でしたから、引き止められることもありませんでした。私が辞めても、また誰かが貧乏くじ要員になるだけだ、と思っていました」
その後、その塾はどうなったか。菊池さんが人づてに聞いた話では、目に見えて合格実績が落ち、さらには労働基準監督署の監査が入ったという。
菊池さんは、自身の経験からこう警鐘を鳴らす。
「従業員の口コミや、求人が常に出続けていないかを見るだけで、その組織の健全さはある程度分かります。人が定着しない職場には、必ず理由がある。これは転職活動だけでなく、塾選びをする際にも言えることです。生徒や保護者の評判だけで判断しない方がいいですよ」
組織が腐敗する予兆は、リーダーの何気ない言葉や、誰を重用するかに如実に表れるようだ。
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