クルマらしい形のクルマ フィアット1500L プジョー404 1960年代の凸型ボディ 後編
当時の魅力が色濃く感じられる1500L
プジョー404とフィアット1500Lという2台のサルーンを並べると、見た目から当時の魅力を色濃く感じるのは後者だろう。404の方が堅牢性では上なはずだが、より表面的な仕上げが美しく、しっかりしていて、四輪ディスクブレーキなど内容でも勝っている。
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1500Lのドアを閉めると404より硬い音がし、車内のフロアにはカーペットが敷かれている。ベンチタイプのシートは、上質なクロスで仕立てられている。

フィアット1500L ベルリーナ(1963〜1968年/欧州仕様)
フロントグリルの造形は繊細。クロームメッキがふんだんに用いられたボディトリムも含めて、6気筒エンジンを搭載した、同じボディをまとう上級の兄弟モデルと目立った遜色はない。
フィアットは、メーターパネルへ警告灯をいち早く導入した自動車メーカー。ドライバーの正面には、3面のアナログメーターのほかに、10点の警告灯が整列する。横に長いリボンタイプのスピードメーターが、生まれた時代を映している。
一方、プジョーは404の頃に円形のメーターへ回帰した。見比べると、少し殺風景にも感じられる。シートは実用性重視のビニール張りで、ルーフには標準でルーフラックのマウントポイントが備わる。
右膝の横には無骨な見た目のハンドブレーキ・レバーが伸びる。ステアリングホイールの角度は、どうも筆者にはしっくりこない。コラムレバーは、現代のようにヘッドライトとウインカーのスイッチを兼ねている。
優しい乗り心地がいかにもプジョーらしい
404も1500Lも、5シーターのファミリーサルーンとして車内は広い。ウェストラインが低く、ピラーが細く、どの方向にも視界は良好。スクエアな形状でボディサイズを掴みやすい。
1500Lにはコラム・マニュアルが組まれ、軽快に次のギアを選べる。乗り比べるとわずかに活発で、1速から4速までのギア比が良く考えられており、粘り強く運転しやすい。比較的大きなボディに小さなエンジンを載せていることを、実感させにくい。

プジョー404(1960〜1975年/欧州仕様)
たくましいわけではないものの、エンジンは活発に回り、現代の交通でもストレスは感じにくい。タコメーターがなく、回転数がわからないけれど。
404のエンジンも、滑らかで静かに回る。同じく滑らかに仕事をする3速オートマティックのおかげで、穏やかな性格が強調される。とはいえ、決して遅いわけではない。
こちらも躊躇せずに吹け上がり、1500Lより100kg以上軽い車重に独立懸架式のフロント・サスペンションが融合し、安定してひたひたと走る。ロードノイズが小さいため、実際以上に快適にも感じる。
優しい乗り心地は、いかにもプジョーらしい。平滑な路面以外では、少々落ち着きに欠ける1500Lからの明確な強みといえる。
2台ともボディはエッジが立ち、ギア比は低めで、風切り音やエンジンノイズは大きめ。全体的な洗練性では、404の方が勝る。1500Lは操縦性で及ばず、保守的な設計が印象の足を引っ張っている。
クルマらしい形をしたクルマ
1500Lの土台は1950年代の設計で、モノコック構造の技術は黎明期にあり、必要以上に車重はかさんだ。低速域ではステアリングホイールが重く、曖昧さもある。
コーナーではラインを大きく乱すような不整がない限り、ボディを傾けながら気持ちよく旋回できる。しかし少し気張ると、アンダーステアが顔を出す。

プジョー404(1960〜1975年/欧州仕様)
フィアットは、技術的に工夫を凝らしたコンパクトカーを得意としていた。実用性や簡素さを評価するファミリー層へ向けた大きな1500Lは、決して悪いモデルではないものの、強みを活かしきれずに作られたように思う。
一方、404のステアリングは軽快で正確。タクシーとして活躍した理由も理解できる。快適性と信頼性を重視するユーザーのために開発された、完成度の高い4ドアサルーンだといっていい。
プジョーは、癖の強いシトロエンDSに対するアンチテーゼ的に、秀でた洗練性を従来的なパッケージングで実現できることを404で証明した。1975年までに280万台が販売された結果が、高い完成度を物語っている。
1970年代から1980年代にかけて、クルマの絵を子供に描かせたら、大抵は凸型のボディに丸が2つと決まっていた。たとえその存在を知らなくても、プジョー404のシルエットを自然に紙へなぞっていた。あるいは、1500Lを。
筆者は、過去に404を所有していたことがあるが、まさにクルマらしい形をしたクルマだった。その事実が、この2台のサルーンへ抱く不思議な共感を要約しているのかもしれない。
協力:ヨーロピアン・クラシックカー社
プジョー404とフィアット1500L 2台のスペックプジョー404(1960〜1975年/欧州仕様)
英国価格:1200ポンド(新車時)/1万5000ポンド(約241万円)以下(現在)
販売台数:約280万台
全長:4420mm
全幅:1657mm
全高:1454mm
最高速度:136km/h
0-97km/h加速:19.9秒
燃費:9.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1043kg
パワートレイン:直列4気筒1618cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:77ps/5500rpm
最大トルク:13.2kg-m/2500rpm
ギアボックス:4速マニュアル/3速オートマティック
フィアット1500L ベルリーナ(1963〜1968年/欧州仕様)
英国価格:1000ポンド(新車時)/1万2000ポンド(約193万円)以下(現在)
販売台数:約20万台
全長:4489mm
全幅:1619mm
全高:1467mm
最高速度:144km/h
0-97km/h加速:17.0秒
燃費:8.9km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1150kg
パワートレイン:直列4気筒1481cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:72ps/5400rpm
最大トルク:12.2kg-m/3200rpm
ギアボックス:4速マニュアル

フィアット1500L ベルリーナ(1963〜1968年/欧州仕様)
