気候変動により、海面上昇や洪水の被害が激化することはよく知られています。新たに、突然大量の水があふれる鉄砲水とは逆に、突発的に異常な水不足が発生する「フラッシュ干ばつ」の問題も加速しつつあることが分かりました。

Accelerating flash droughts induced by the joint influence of soil moisture depletion and atmospheric aridity | Nature Communications

https://www.nature.com/articles/s41467-022-28752-4

‘Flash Droughts’ Coming on Faster, Global Study Shows - UT News

https://news.utexas.edu/2022/04/01/flash-droughts-coming-on-faster-global-study-shows/

'Flash Droughts' Are Striking Faster as The World Warms, Scientists Warn

https://www.sciencealert.com/flash-droughts-are-striking-faster-as-the-world-dries-up-scientists-warn

毎年のように最高気温の記録が塗り替えられるなど、急激な地球温暖化が進んでいることが数々の気象観測により明らかになっています。テキサス大学オースティン校の地球科学者であるZong-Liang Yang教授によると、地球温暖化は急激な干ばつが起きやすくなっていることの証拠だとのこと。そこでYang教授らの研究チームは、2000〜2020年の間に気象衛星が観測した水文気象データ、つまり世界各地の降水や河川の水位など水の循環に関するデータを分析する研究を行いました。

その結果、分析対象になった21年の間に発生した干ばつのうち、33.64〜46.18%が干ばつ状態になるまでたった5日間しかかからないフラッシュ干ばつだったことが判明。干ばつの発生頻度そのものは大きく変わらなかったものの、干ばつになるまでの期間は短くなっていることが確かめられました。



研究チームによると、一般的な洪水は気象条件の重なりにより5〜6カ月かけて比較的ゆっくりと進行するとのこと。一方、フラッシュ干ばつの70%は半月で発生し、さらに30%はたった5日間で地域を干上がらせてしまいます。その分干ばつは短期間ですが、農作物の生育に重要な時期に突然水不足が発生すると、壊滅的な影響が出ることもあります。

例えば、2012年にアメリカでフラッシュ干ばつが発生した際には、トウモロコシの収穫量が激減し価格が急騰したことなどにより、推定で357億ドル(約4兆4000億円)もの経済的損失が発生しました。

フラッシュ干ばつの影響について、研究チームは「フラッシュ干ばつは急速に発生し、予兆が少なく干ばつに備えるための猶予もないため、ゆっくりと発生する干ばつよりも農業や社会に与える影響が甚大になる可能性があります」と指摘しました。



地域別の分析では、フラッシュ干ばつは東南アジア、東アジア、アマゾン盆地、北アメリカの東部、南アメリカの南部など湿潤もしくは湿潤・半湿潤地域で最も発生しやすいことも分かりました。これらのフラッシュ干ばつが発生しやすい地域では、フラッシュ干ばつの頻度が21年間で22〜59%も高くなっていたとのこと。

これまでのことろ、たった5日間で地域の水が干上がってしまうような急速な干ばつが発生するメカニズムは、解明が進んでいないのが現状です。論文の筆頭著者である香港理工大学のYamin Qing氏らは、「フラッシュ干ばつが発生するプロセスや、フラッシュ干ばつの最も重要な特徴である急激な発生の根本的な原因を探る研究はほとんどありません」と述べて、今後は地球温暖化のモニタリングに加えてフラッシュ干ばつの監視と予測にも力を入れる必要があるとの見方を示しました。